Hizuki
2019-11-04 20:08:59
1783文字
Public FF14
 

もう一人の私とあなた

【FF14】公光。部屋の片付けをする水晶公と手伝いに来たヒカセンがとある人形を見つける話。少しだけ、羨ましかった。



「さて、これくらいか

初めは彼女を第一世界に喚ぶ方法を、そして世界に闇が戻ってからは暁の賢人達を無事に原初世界に帰す方法を探してあらゆる情報を集めた。
その結果、部屋の隅に積み上げた本の山が先日崩れ、これは流石にまずいと整理することを決めたのだった。
守衛にはしばらく誰も星見の間には入れないように、と伝えてある。
まず本を全て部屋から出して、内容によって分別して。
とりあえず見えなければ大丈夫だと、とある物を隠すのにかけていた魔法も一時的に解いて。
あると分かっていてもやはりちゃんと現物に触れられることにふっと口許が緩んだ。





「水晶公ー?」

おおよそ半分の本が元通りの場所に戻った頃。
誰も入れないようにと伝えておいた中、聞こえてきた声。
それは間違いなく彼女の声だった。
ひょっこりと顔を見せた彼女に一瞬顔が引きつったのが分かった。

「な、何故あなたがここに
「ライナさんから聞いたんです。水晶公が部屋の片付けしてるって。だから何か手伝えないかなって」

いつもの人懐っこい笑顔が向けられる。
誰も、というのはもちろん彼女も含むわけだが、おそらく守衛の彼が気を利かせてくれたのだろう。

「わたしにも手伝わせてくれませんか?」
ありがとう。助かるよ

気持ちは嬉しいのだが、今だけはそれは少しばかりなくてよかった気遣いだと思ってしまう。
まだ残っている積まれた本の上。
魔法は解かれたまま。

あれ、何ですかこれ?」

どうか気付かないで欲しいという願いはあっさりと砕け散った。
彼女はそれに近付いていく。

「そ、それは!」
「人形?」

手を伸ばしても届かない距離。
それを手にした彼女が口にした通りのもの。
思わず自分の顔を片手で覆う。

「もしかしてこれ、わたし?」

ああ、気付かれてしまった。
一番気付かれてはいけない人に。

すまないその通りだ

言い訳の余地もなく、その場に膝をついて小さく謝罪の言葉を述べた。
聞こえた戸惑った声。

「えっと、あの、どうして
あなたは私のミニオンを、持っているだろう」

原初世界でシルクスの峡間の探索費用調達のために作られたのは暁の賢人の、グ・ラハ・ティアの魔法人形。
それを悪戯めいた表情で彼女が私に見せてくれたことを忘れはしない。
彼女とクリスタルタワーの調査で駆け回っていた頃。
あの時に戻りたくなってしまう姿。

少しだけ、羨ましいと思ってしまったんだ」

彼女の側にいる過去の自分の姿をした魔法人形が羨ましくなってしまって、こっそりとミーン工芸館の職人達の手を借りた。
誰一人嫌な顔をせず引き受けてくれたおかげで、無事に完成して今こうして私の側にある。
部屋の奥にある普段ならば絶対見つかるはずがない。
そしてもし誰かがいたとしても、魔法で隠しているから見つかるはずはない。
人払いをしていたことで大丈夫だと思って解いたところで、彼女が来た。
まさか本人に見つかることになるとは思いもしなかった。

何か恥ずかしいですね

彼女を盗み見れば、人形と見つめ合い、顔を薄く染めていた。
私の視線に気付いたらしい彼女がこちらを見る。
一瞬肩を震わせて、顔の色をもう少し濃くして。

「あの時の私の気持ち、少しは分かってもらえただろうか
はい」

人形はそっと元あった場所に戻された。

「でも、嬉しいです。こっちを離れても水晶公の側にいられるみたいで。ちょっとこの人形が羨ましいです」

そんな言葉が彼女から返ってくるとは思わず、笑い出してしまった。
先に私にやってみせたのは彼女だというのに。
私につられてか彼女からも笑い声が聞こえた。

「わたしがいない間、水晶公をお願いね」

そう言って人形を撫でる。
穏やかな顔、声。

「さ、片付け終わらせちゃいましょうか」
そうだな」

立ち上がってまだ残っている本を手に取る。
彼女の手伝いのおかげもあって、本の山はあっという間に崩されていく。
ふと手を止め、本を番号順に並べ替えている彼女を見る。
あのミニオンも彼女と同じように受け取るのなら、今の私と姿は違っても、ここにいない間の彼女の側にいられるということになるのだろうか。
なんて、考えたりして。