Hizuki
2019-05-20 22:37:32
1683文字
Public FF14
 

記憶だけに残して

【FF14】ルン光。アラミゴ解放後の話。記憶に残す歴史。



アラミゴ王宮の空中庭園。
一般市民にも開放されるようになったそこをルンさんと一緒に歩いていた。
時折吹き抜ける風がふわりと落ちたピンク色の花弁を巻き上げる。

ここが決着の場だったのか」
「はい」

ゼノスと神龍を討ち、帝国の支配に終止符を打った。
そして、ここから新たなアラミゴの歴史が紡がれ始めた。
決して少ないとは言えない犠牲の先にようやく訪れた始まり。
紫色の旗が夕空にはためき、人々が喜びに湧き国歌を歌っていた景色は、私にとって忘れられない光景のひとつ。

「これでオレがずっと悪あがきを続けてきたことも報われる」

ぴたりと足を止め、感慨深そうにルンさんが目を細める。
ほっとしたように吐き出された息には安堵の色が見て取れた。

「今回の一連の戦いは長く語り継がれていくんだろうな」
「解放軍にも各国の面々にも、話を聞いて回っている人がいるそうですよ」
「そうか、歴史家達が動き出しているのか」
「みたいです」

何度も詳しい話を聞かせてほしいと各地の拠点で尋ねている人の姿を見かけた。
大したことはしていないと謙虚に答える人。
お酒の場で感情を込めて熱く語り出す人。
その人を諌めながら冷静に真実を話す人。
どれも現実で、歴史の節目に立ち会った人達の言葉として記録されていくのだろう。

まぁでも私のことは残しませんから」

同じ色に染まりつつある空を見上げながら呟いた。
自国を愛する人々が、同士と手を取って国を取り戻した、ということが歴史に残ればいい。
どこにも私自身の記録は残らなくていい。
私はただの冒険者なのだから。
そのうち残った大きな記録が自分の枷になってしまいそうな気がして。

「歴史書に残らなくても、オレの記憶には残ってる。本当にありがとうな」

けれど、大切な人の記憶に残ってくれるのならば、それだけで十分だと思える。
形あるものに残すことだけが全てではない。

「じゃあルンさんは私の生き証人ですね」
「ははっ、壮大だな。だが、それはオレだけじゃないはずだぜ」

私の旅に関わってきた全ての人。
そして私のことを覚えてくれている全ての人。
最終的には何かしらの形で、このハイデリンという惑星の歴史に残る。

ありがとうございます、ルンさん」

ぐるりと庭園を一周。
アラミゴ解放までの出来事をかいつまんで話して、元来た扉から宮殿内を経由して街に戻る途中。

「無事故郷も解放されたことですし、反抗期、止めます?」

何となく以前聞いたルンさんの言葉を思い出した。
自らのことを『未だに反抗期を続けてるオッサン』だと言ったことを。

「そうだなと言いたいところだが、まだまだ世界には助けを求める声が溢れている」

そう言って肩を竦めてみせた。
弱き者のために剣を振るい、滅びに抗う力となる。
それもまた同じ時にルンさんから聞いた言葉だった。

「ですよね」
本当に戦わなくても済む日が来るのなら、止めてもいいのかもな」

少し遠い空を見ながらルンさんが溢す。

「それまではまだもうしばらく反抗期も続けるさ」
「なるほどそれは私が知ってるルンさんの歴史として記録しておかないと!」
「あー

メモを取る振りをしながらルンさんを見上げる。
浮かべられたやや困ったような表情は、数拍間を置いてから崩れた。

まぁいいか。お前だけの記憶に残しておいてくれ」
「はーい。『赤魔導士シ・ルン・ティアの反抗期はまだまだ続くのであった』っと」

さらさらと自分の右手の指を左の手のひらに滑らせる。
そんな私の様子を見て、やれやれとでも言いたそうに笑った。

ブーツの足音を鳴らしながら、ふと浮かんだ新たな疑問。
反抗期を終えたら、この人は一体どうするのだろう。
いや、きっと何かに抗い続けているような気がする。
私が冒険を続けるのと同じように。
そうして記録に残らない人生という歴史はまた紡がれていく。
落ち着く日が来たのなら、その時は二人で歩んできた道の話をしたいなと、彼の故郷の空の下で思った。