Hizuki
2019-04-22 22:03:37
2253文字
Public FF14
 

先輩と、私と

【FF14】エス光。ヒカセンが見た夢の話。学園パロ要素あり。先輩といる特別な時間。


校舎の最上階、階段を上がった先にある普段は鍵が掛かっているドア。
そこの錠前が外れているということは、その先にあの人がいるという証。

「先輩!ニャン先輩!」

慌てて階段を駆け上がり、ドアを開けた先に広がるのは一面の青空。
吹き抜ける風は心地良く、柵の向こうの運動場からは部活動に勤しむ生徒達の声が聞こえる。
探し人の名前を呼んでみるも返事はない。
けれど、鍵が開いていたからここにいることは間違いない。
キィと軋んだ音を立てるドアを閉めて辺りを見回せば、貯水タンクの側から伸びている足が見えた。

「ニャン先輩やっぱりここにいた!って寝てるし

そちらに回り込めばタンクにもたれて目を閉じている先輩の姿。
隣にしゃがみ込んで先輩の様子を眺める。
静かな寝息を立てて眠っている姿は何度も見たことがある。
肩まで伸びた雪色の髪が優しく吹く春の風に揺れている。
暗めの蒼い瞳は閉ざされていてその色を見ることはできない。
ああ、綺麗だなぁ。
なんて、先輩の姿に見惚れていた矢先だった。

いつまでそうやって俺の顔を見ているつもりだ?」
「ひぇっ!?」

呆れ気味の声と向けられた瞳。
思わず飛び退こうとするも、腕をしっかりと掴まれていて叶わなかった。
慌てふためく私の様子を見ながら、先輩は口の端を吊り上げる。

「お前はここで何をしているんだ?」
「あっ!えっと、会議に先輩がいないから探しに!」

先輩の問いかけにはっと我に返る。
そうだった、私先輩を探しに来たんだった。
生徒会と各種委員会からなる定例会議、その場に先輩の姿がなかった。

「その件ならアイメリクから既に聞いている。反対する理由はないと伝えてあるが?」
「えっ?」
「大方俺がいないのに気付いてそのまま出てきたんだろうが、今度はお前がいなくて進まないんじゃないのか?」
「それなら行く前に止めてくださいよアイメリク会長ぉー!」

事情を知っていてなお何も言ってくれなかった生徒会長に向けてこの場で叫ぶ。
とてもじゃないけれど本人を前に言うことなんてできるはずがない。

「ああ、そうだ」
「何ですか!」

こうしちゃいられないと立ち上がって背を向けた瞬間に呼び止められる。
すぐに戻らなくてはいけないタイミングだというのに、その声はゆっくりで。

「戻ってくる時に何か飲み物買ってきてくれ」
「わぁっ!?」

そう言って先輩は硬貨を1枚投げて寄越した。
ふわりと投げられたそれは手のひらに当たって跳ね、あたふたしながらもどうにか私の手の中に納まった。

「ちょっと何勝手に!」
「来ないのか?」

笑みを含んだ声色が『来るんだろう?』と問いかける。
見透かされているようで声にならない唸り声のようなものが口から漏れた。
会議の日は私にとって特別で。
一人、また一人と会議室を後にしていき、私と先輩だけになってからゆっくりと動き出す。
向かう先はこの屋上で、特に何をするでもなく閉門時間までぼんやりとして。
ただ同じ時間を同じ場所で共有しているだけ。
それだけのことだけど、先輩の隣にいるのが心地よかった。

っ!分かりましたよもうっ!」

受け取った硬貨を制服のスカートのポケットに突っ込んだ。
大急ぎで来た道を走って会議室に戻れば、先輩の予想通り私待ちになっていて。
みんなの前で頭を下げ、議題の決を取って会議は終わった。
教室で自分の荷物を持つと、食堂の自販機コーナーに向かう。
そういえば何を買ってくるのか聞いていないことを思い出した。
いや聞かなかった私も悪いけれど、言わなかった先輩にだって非はある。
どうせ連絡を入れたところですぐ返ってくるとも思えず、自販機のラインナップとにらめっこを始める。
ええと、先輩が飲みそうなものって何だ。
どう考えても甘いものはない。
ジュース系も多分違う。
となると水かコーヒーか紅茶か。
紅茶は会長の方だし、きっと水かコーヒー。
ああでも以前会った時にコーヒーを持っているのを見たような気がする。
うん、じゃあこれだとお金を入れてブラックの缶コーヒーのボタンを押す。
そうして私は出てきた缶を手に屋上へと戻った



何なのこの夢」

ゆっくり身体を起こして頭を押さえた。
隣で静かに眠っている彼を見ながら呟く。
ついさっきまで見ていた光景を思い出すと訳が分からなくなる。
あれは何だ。
学校?
アンダリム神学院ともかけ離れた学校に私達がいた。
私の先輩がエスティニアンで、しかも『ニャン先輩』なんて呼んでいて。
とはいえ夢なのだから現実ではない。
いや確かに竜騎士としてエスティニアンは先輩に当たるのだけれど。
ふぅと小さく息を吐く。

いつまでそうやって俺の顔を見ているつもりだ?」
「ひぇっ!?」

ゆっくりと開かれた瞳が私を捉える。
夢の中と寸分違わぬ言葉を告げたエスティニアンに、思わず自分も同じ悲鳴で返してしまった。
そんなことはエスティニアンに分かるはずもない。

「まだ起きるような時間じゃないだろう」

蒼い瞳がまた閉じられる。
片腕が私の身体を抱き込むようにしてベッドに沈められた。

「わっ」

カーテンの向こう側はまだ薄暗い。
しっかりとエスティニアンは私の身体を抱え込んでいて、身動きが取れなくなる。
もし彼を『先輩』と呼んだなら、どんな反応をするのだろう。
そんなことを考えながら、彼の温もりに身を預け眠りに落ちていった。