Hizuki
2019-03-06 20:57:31
1460文字
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どんな空もお前とならば

【グラブル】ジクグラ。『同じ空を見上げて』の続きというか後日談のようなもの。例え、終末の空だとしても。



いや、どんな空でも、どんな景色でもいいんだ。
隣にグランがいてくれるのならば。
例えそれが、『世界の終わり』なのだとしても。





「ジークフリートさん、来るよ!」

グランの声と同時、こちらに向かってくる気配を感じて剣を振り下ろした。
自分の手に伝わる確かな感触。
地に伏せる無数の魔物の骸。
同じように迎え討ったグランが軽く周囲を見回し、剣を収めて駆け寄ってくる。
どうやらこの辺りにいた魔物は全て狩り尽くしたらしい。

ふ」
「どうしたの?」
「いや何、世界は美しいものだと思ってな」

剣に付いた血を払い、空を見上げる。
空だけではなく、今の世界は黒と赤に覆われていた。
この世を呪った魔術師が残した魔法陣から溢れ出した黒き魔物。
まるで終末の時が訪れたかのような紅い空。
世界に満ちている混乱に相応しくない感情が、何故だかふわりと浮かんでくる。

「それ、僕も思ってた」

視線を隣に戻せば、グランが先程の俺と同じように視線を空に向けた。

「こんな状況なのにさ、何でだか分からないけどきれいな景色だなって」
グランもか」

うん、と頷くと、こちらに顔を向けて笑みを浮かべる。

「それって隣にジークフリートさんがいるからだよね」

突然飛び出した自分の名に目を丸くする。

「まだ世界には知らない景色がいっぱいある。僕はそれをジークフリートさんと見たいんだ」

俺と見たい、と望みを口にした。
なるほど、そういうことか。
何を見るのか、誰と見るのか。
例え世界の終わりであるような景色だとしても、隣で同じ景色を見ているのが彼であるのならば。
グランの言葉に納得すると、思わず口元が緩んだ。

「だから、こんなところで立ち止まっていられない」
ああ、そうだな」

紅い空を見据えた栗色の瞳に決意の光が宿る。
周囲を見回せば、真新しい爪痕が外壁に残る古びた建物。
恐らくここが大元であろうと当たりを付けて中に踏み込む。
ほとんど家具のない部屋の中に元凶の魔法陣を見つけた。
赤黒く変色した魔法陣は魔術師の血で描かれたものなのだろう。
中央に埋め込まれた黒のクリスタルに剣を突き立てれば、遮るものは何もなくあっさりと砕け散った。
これでもうここから魔物が沸くことはないはずだ。

「グラン、今度時間がある時に一度フェードラッヘに寄ってはもらえないだろうか」

建物の外に出ても、空の色は変わらない。
俺の問いかけに振り返ったグランが首を傾げる。
零れた望みはグランの言葉を受けてのもの。

「フェードラッヘに?」
「ああ。見慣れている景色もお前と見るのなら違って見えそうでな」

慣れ親しんだ地をグランと見たいとそう思った。
騎士団長として見ていた景色も、国を追われる身となって見ていた景色も、グランと見るのならばまた変わって見えるはずだ。

「デートのお誘いってこと?」
「そういう、ことになるな」
「いいよ。喜んで!」

確認されて一瞬考えた。
本来ならば時と場所を選ぶべきだろう。
だが、気にする様子もなく年相応の少年らしい笑顔で返され、戦いの最中にあることを一時忘れそうになる。

「さ、行こう、ジークフリートさん」

それもすぐに場数を踏んだ戦士の顔に戻る。
剣を背負い、グランの顔を見て頷いた。
駆け出していく彼の背を追う。
他の場所でも仲間達が同じように魔物達と対峙している。
まずはこの混乱を早く収めて、元の青い空を取り戻さなくては。
同じ景色をグランと共に見るために。