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Hizuki
2019-02-21 12:44:04
1591文字
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受け取るものはただひとつ
【グラブル】ジクグラ。現パロ、バレンタインの話。『欲しいものはただひとつ』と繋がっています。もちろん用意はしていたけれど。
『突然すまないが、チョコレートは好きか?』
そう言って電話がかかってきたのは去年の今日。
突然すぎた質問によく分からないまま肯定の言葉を口にすると、向こうからほっとしたような声が聞こえた。
『よかった。今近くにいるのだが、届けに行っても構わないだろうか?』
大丈夫、と返事をすれば、すぐに向かう、と。
電話が切れてから程なくして、部屋のインターホンが鳴らされた。
この早さは近くどころか、本当にマンションの玄関先にいたんじゃないかと思わされるほど。
驚きながらドアを開ければ、大きな紙袋をいくつも提げたジークフリートさんがそこにいた。
中には大小様々な包みが入っていて、まるで季節外れのサンタクロースのよう。
『会社や取引先でもらったのはいいんだが、消費し切れそうになくてな』
あまりの量に呆然としていると、少し困ったように笑った。
日付を思い出して、そういうことかと納得した。
この寒い中玄関で話しているわけにはいかないと、部屋に上がってもらって紙袋の中身を広げた。
それはそれはお高そうな、僕には縁のないようなものばかり。
ジークフリートさんにと贈られたものだろうに、当の本人だけではなく僕の胃の中に収まってしまい、贈り主に対して申し訳なくなった。
間違いなく山のようにあるチョコレートを短時間で食べ切れるわけもなく、しばらくの間、冷蔵庫の中にそれらが鎮座していたのをはっきりと覚えていた。
…
そんな有様だったから今年は警戒していたのだけれど。
「
…
どうかしたのか、グラン?」
2月14日。
仕事から帰ってきたジークフリートさんは至って身軽な格好だった。
翌日の仕事の関係で自分の家に帰るよりも僕の部屋から出た方が都合がいいから一晩泊めてくれないか、と頼まれたのは今週の頭。
ソファの上に置かれているのはいつもの仕事用の鞄と一泊用の荷物と着替えが入っていると思われる鞄だけ。
「いや、今年は荷物いっぱいじゃないんだなって思って
…
」
「ああ、チョコレートか」
去年はすごかったな、と思い出したようにジークフリートさんが笑う。
「今年は他の者からはもらわないことにしたんだ」
ジークフリートさんの言葉を声に出さずに繰り返す。
他の人からはもらわないことにした。
それはつまり、誰かからもらうあてがあるということ。
ただ僕の方を見つめてにこにことしている。
期待を込められた視線を向けられ、堪らず顔を逸らした。
ああ、分かってます分かってます。
そういうことですよね。
「
…
僕が用意してないとか考えなかったの」
試す、なんて大それたことではないけれど、ひとつだけ問いかけてみる。
即答かと思いきやなかなか帰ってこない返事に、ちらりと視線をそちらに向けた。
「用意してくれていると信じていたからな」
何の迷いもなく言い切った目の前の恋人の言葉に顔が熱くなる。
てっきり去年と同じように多数の中のひとつになるのだと思っていたのに。
僕とジークフリートさんの関係は去年とは違う。
互いに想いを重ねて、隣にいるようになって。
初めてのバレンタインに何もしないわけがない。
「
…
晩ご飯、食べ終わったらねっ」
「それは楽しみだ」
自棄気味に僕がそう告げると上機嫌でジャケットをハンガーにかける。
せっかくジークフリートさんが来てくれるのだからと、晩ご飯は普段よりも少しだけ豪華に。
コンロの火を消して料理をテーブルに並べ始めれば、自然とそれを手伝ってくれた。
実際どこまで用意していいのか分からなくて、スーパーで売っていた手作りトリュフのキットを買ってきて。
去年甘すぎるものは避けていたような気がするから、いつも自分が食べるものよりもビターなものにして。
ジークフリートさんへのチョコレートは冷蔵庫の中。
どうかあなたの口に合いますように。
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