Hizuki
2018-12-03 22:47:14
2005文字
Public FF14
 

同じ気持ちであるのならば

【FF14】ルン光。ヒカセンに告白されるルンの話。赤70クエまでの内容を断片的に含みます。自分の中にあるこの気持ちは。



ウルダハで出会い、新しく赤魔法の道に足を踏み入れたのは、アラミゴを解放に導いた冒険者だった。
その彼女は旅の途中で一時的に赤魔法の手ほどきをした少女が「その人の力になりたい」と何度も口にしていた人物でもあった。
おかげで自身の過去との因縁に決着を付けることができ、もう一人の弟子の生まれに纏わる問題さえも解決に導いてくれた。
彼女に教えられることはもうない。
そしてオレはまた新たな旅に出ることを決めた。

「ルンさんっ!」

さっき別れたばかりの弟子の声が背中から聞こえて足を止める。
近付いてくる足音に振り返れば、こちらに向かって走ってくる姿が見えた。

「どうした?」

目の前で立ち止まり、深呼吸をして息を整える。
しばらくして地面に向けていた顔を上げると、オレの顔を真っ直ぐに見つめた。

行かないで」

一言、彼女の口から出たのは、オレを引き止める言葉だった。

「赤魔導士は抗う力だって言いましたよね。それなら私はルンさんが旅に出ることに抗います」
「おいおい

続けられた言葉に思わず苦笑する。
確かに抗う力だとは伝えた。
まさかそれを自分が向けられることになるとは。

「だって赤魔導士として教わりたいことがたくさんあるんだもん」

元々多少なりとも魔法の心得を持っていた彼女は覚えが早かった。
それこそこの短期間に自身が持ち得るほとんどのことを伝えられるほどに。
加えて妹弟子との鍛錬で指導者としてでもやっていけるほどに。

「オレができることはもう一通りお前に伝えたつもりだぞ」

魔法以外の戦い方にも長けている彼女が赤魔法をもって戦うのなら、きっとオレ以上の力を持ち得る。
大きな可能性を持っている以上、オレが持っていない部分に期待をしたくなるというもの。
それでも彼女は首を横に振る。


それに私、まだルンさんから返事もらってない」


返事、と言われ、思い当たるものを思い出して目元を手で覆った。
そうか、本当に求められているのはそっちの答えか。
リリスの騒動で撒けるかとも思ったが、そうはさせてくれないらしい。
少し自分の手を目元から浮かせると、ぎゅっと握り締められた彼女の手が見えた。

そうだったな」

最初は初めてアリアと会った時だったか。
オレを見て怯えるアリアに『怖いおじさんだよ』と言い放った。
それは彼女なりに場を和ませようとしてのことだったのだろう。
『ルンさん、そういう反応もしてくれるんですね。好きですよ、そういうの』

じゃあこうしよう」

二度目はランバードを討った時。
ソウルスティールを受けて戦えなくなったオレの代わりにランバードと対峙して。
あの時の戦いぶりも、泣きそうな顔をしてかけてくれた治癒魔法も忘れられそうにない。
『好きな人を傷つけられて平然としていられるわけないじゃないですか!』

「お前が何と言おうとオレは一度旅に出る」

三度目は低地ドラヴァニアの禁書庫から戻った後。
お目当ての本も無事に見つかり、少しずつもう一人の弟子の問題解決の糸口が見えてきて。
イディルシャイアの夜風に当たりながら、向けられた想いはあまりにも真っ直ぐで。
ルンさんが好きです』
その場で答えを急かされることはなく、ただいつか、とだけ。
『いつか、答え聞かせてください』

「もう一度会った時、その時までお前の気持ちが変わらないのなら、応えよう」
分かりました」

すぅ、と大きく息を吸い込んだ。

「ルンさん、私はあなたのことが好きです」

追いかけてきたときのような切羽詰まった様子は姿を消した。
ふわりと開いた笑顔は、待つ覚悟を決めた顔へ変わる。

「何を言ったって私の気持ち、変わりませんよ?」
「ははっ、そうか。じゃあ、次に会えるのを楽しみにしてるぞ」

帽子を取り、数歩彼女の方に歩み寄った。
不思議そうに首を傾げた彼女の額にかかる前髪を払って。
露わになった肌に少しだけ唇を寄せる。
これくらいなら許されるだろうかと様子を窺えば、装束と同じ色に顔を染めていて。

「またな」

口をぱくぱくとさせ、両手で額を押さえる彼女を残して、今度こそ歩き出す。
もう振り返らない。
助けを求める声のある場所を目指して。
背中から抗議の声が聞こえる。
次がいつになるのか、それは誰にも分からない。
けれど、その時はきっと来る。

ったく、こんなおっさんのどこがいいんだか」

ふと立ち止まり空を仰いだ。
ぽろりと零れ落ちた自嘲を聞く者は誰もいない。
互いの立ち位置もそうだが、それ以上に彼女との年齢差に頭を抱えた。
それでも彼女はオレが好きだと言った。
素直に向けられた想いは眩しくて温かい。
こんな気持ちになったのはいつ振りだろう。
自身の中に新しく芽生えているこの感情の名を、オレはもうとっくに知っている。