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Hizuki
2018-08-02 19:27:28
2307文字
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我焦がれ
【グラブル】パーグラ。パーシヴァルの炎に触れたいグランの話。炎帝の炎に包まれるということは。
「
…
突然何を言い出すんだお前は」
魔物がうらやましいなぁ。
ベッドの上で一息つき、そう小さく呟くと隣に座る赤色から呆れを含んだ声が聞こえた。
まさか聞こえていたとは思わず、慌てて背を向ける。
「いや、あの、えっと
…
ほら、パーシヴァルの炎ってすごく綺麗だから」
言葉の意図を言え、と向けられる視線が語っていた。
枕に半分ほど顔を押し付けて、しどろもどろになりながら言葉を繋ぐ。
「触ったらどんな感じなのかなぁって
…
」
純粋な興味だった。
彼が誘うは、まるで内側に秘めた情熱のような紅い炎。
指先でなぞれば、たちまち剣は炎を宿す。
「炎だぞ?熱いに決まっているだろう」
「それはそうなんだろうけど」
パーシヴァルの言う通り、当然熱いというのは分かっている。
いつだったかもう覚えてはいないけれど、あの炎に包まれるというのはどんな気分なのだろうか、とふと思った。
彼の炎に抱かれて、魔物達は永遠の眠りに就く。
それは一瞬の出来事で、きっと苦しむこともない。
ただ燃やし尽くされて灰だけが残る。
もしかしたら灰すらも残らないのかもしれない。
「
…
それでも俺の炎を味わってみたいと?」
「ええと
…
まぁそんなところです
…
」
まさか言わされることになるとは思わず、ぼふんとそのまま枕に顔を埋めた。
例えばそう、もしも僕の命が尽きたとして、自分の身体を焼くのがあの炎だったなら。
きっと迷うことなく、行くべき場所へ僕を導いてくれるのだろう。
いや、でもそれだと自分では感触が分からないから却下だな。
もし、僕が星晶獣に乗っ取られて悪逆非道の限りを尽くして、存在を全空から消さなければならなくなったとして。
何とか自分の意識が残っている間に、僕を止めてくれるのがあの炎だったなら。
『紅蓮に燃ゆる炎狼の刃よ、焼き尽くせ!ローエン・ヴォルフ!!』
剣を抜き、指を滑らせる様は焦熱への儀式のようで。
抗えない自分の身の最期に祈りを捧げるは神ではない。
炎帝だ。
「
…
パーシヴァルの炎に包まれるっていうのは、パーシヴァルに抱き締められるのと同じことだと思うんだ」
―
即ち、炎帝の抱擁。
愛する人の腕に抱かれて、終わりの時を迎えるのは悪くない。
むしろそれは幸せなことだろう。
「だから、ちょっと魔物がうらやましいなぁ、なんて」
はぁ、とパーシヴァルが溜め息を一つ。
「
…
俺がお前を手にかけるとでも思うのか?」
「どう考えても絶対ないね」
そんなことはあり得ないと分かり切っている。
大体僕の仮定にしたって、話が吹っ飛びすぎていて現実味がなさすぎる。
少し顔の向きを変えて、くすくす笑って問いかけに即答すれば、もう一度小さく息を吐いた。
「お前の言葉をそのまま借りるなら、逆もまた然りだろう」
背中から声が聞こえ、視界に影が落ちる。
同時にこめかみに柔らかいものが触れて。
「パーシヴァル
…
?」
影はすぐに離れていき、それを追いかけるように身体の向きを変えてパーシヴァルを見た。
穏やかな笑みを浮かべて、ここに来い、というように自らの太腿の上を示す。
疑問符を浮かべながらその通りにすると、普段は見上げることになるパーシヴァルと真っ直ぐ目が合った。
一体何を、と口を開くよりも早く、伸ばされた腕の中に収められる。
そのまま抱き締められれば、自然と2人の間にあった空間は一瞬で埋まった。
重なる肌、背中に回された彼の腕。
触れ合う部分からじわりじわりと熱が広がっていく。
「グラン、お前を何度抱いたと思っている?」
そう耳元に吹き込まれ、顔が熱を持つ。
言葉通り一度や二度ではない。
軽いものから深いものまで数え始めたらきりがない。
逆もまた然り、と言った。
つまり、パーシヴァルに抱き締められるということは、彼の炎に包まれているということ。
「
…
僕一体何回消し炭にされたんだろう」
…
あぁ、熱い。
けれど手放したくはない。
同じようにパーシヴァルの背に腕を回せば、感じる熱はより近く強くなる。
「ふ
…
まだ燃やし尽くしてはやらんぞ。望んだのはお前だ」
外からも中からも広がっていく炎は留まるところを知らない。
消す方法はない。
彼と共にある限り、僕自身も望まない。
「覚悟は、できてる」
永遠に燃え続ける炎と共にあるという覚悟。
言葉の証に僕から頬に唇を寄せれば、パーシヴァルから伝わる熱が強まった気がした。
ゆっくりと指が背中を這う。
そこから熱と何か別のゾクリとするものが広がる。
「
…
それともう一つ」
パーシヴァルが腕から力を抜いたかと思うと、少し身体を離して額を合わせる。
髪と同じ赤い瞳には僕の姿だけが映っている。
「お前以外を抱く腕を俺は持たん」
つまり炎帝の抱擁を受けられるのは僕一人だけだということ。
唯一許された特権。
「
…
それは光栄だなぁ」
魔物に与えられている炎はやはり炎帝の刃なのだと。
それを聞いてもなお、どこか魔物をうらやましいと思ってしまうのは、刃さえも彼の炎には違いないから。
いつか本気で手合わせをするようなことがあれば、触れることも叶うだろうか。
「また妙なことを考えてはいまいな?」
「
…
パーシヴァルのことしか考えてないよ?」
呆れられかねない感情を心の奥底にしまい込む。
今はただパーシヴァルの炎に触れていたい。
「そうか」
パーシヴァルが僕の肩を軽く押した。
重力に従って後ろ向きにベッドに倒れ込む。
視界は一瞬で赤に覆われる。
目を閉じれば二度目の始まりの合図に口付けを一つ。
そしてまた、炎に包まれていく。
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