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Hizuki
2017-11-23 18:28:27
3268文字
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FF14
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瞳ニ宿リシ黒キ竜
【FF14】エス光。3.3終了後から4.0までのどこか、ヒカセンの目の色の話。捏造設定ありのニーズニャン世界線、過去作で書いた男ヒカセンです。
「あなた、その目どうしたの?」
「え、目?」
定期的に顔を出している石の家。
みんなの近況を聞き、暁の受付嬢からお茶を振る舞ってもらうのは毎度のこと。
一服して表に出ようとしたオレにそう問いかけたのはヤ・シュトラだった。
ヤ・シュトラは服のポケットから小さな折り畳み式の鏡を取り出し、オレにそれを手渡した。
目に何かがあるということは充血しているとかそういった類いのことだろう。
「別に何ともないけど
…
」
鏡に映る自分はいつも通り。
目にゴミでも入ったのかとまぶたを引っ張ってみるも何もない。
痛くもないのだからそんなことはない。
予想していたようなことはなく至って普通。
「そうじゃなくて、瞳の色よ」
「瞳の色
…
?」
ヤ・シュトラが指摘したのはそうではないようで、言われたことに首を傾げる。
「両方とも同じ色だったでしょう?」
改めて鏡を覗き込む。
右目にかかる前髪を避けて両目を同時に見て初めて言葉の意味に気づいた。
「
…
あ!本当だ、赤くなってる
…
」
ごくわずかに、右目の瞳の色が赤みを帯びている。
違いは本当にささやかなもので、パッと見ではまず見分けがつかないくらいの色。
「何か思い当たることは?」
「いや、特に何もないと思う
…
」
ここしばらくの自分の行動を思い出してみても目の色が変わるような覚えはない。
多少魔物退治やら宝探しやらには行ったものの、よくあることすぎて今回のことには結び付かない。
そもそもどうしたら目の色なんて変わるのだろう。
「例えば、『何か特殊なエーテルを浴びた』、とか」
「うーん
…
」
腕を組み目を閉じて唸る。
最近は蛮神が召喚されたという話も聞かないから討伐には行っていないし、より一層謎は深まるばかりだった。
「何かあってからでは遅いわ。一度医者に診てもらっておく方がいいわね」
それはオレの力としての意味も含むのだろう。
とはいえ、何かあってから困るのは自分だ。
「ありがとヤ・シュトラ。近いうちにそうする」
賢人の助言をありがたく受け取って石の家を後にした。
用事を片付け、空いた時間ができればドラヴァニア雲海に飛ぶ。
向かうはかつて邪竜の居城となっていたドラゴンズエアリー。
今そこにいるのは竜になったオレの大切な人。
この場所を離れられなくなったその人に会いに行くために。
空を飛んで高度を上げていくと、いつもの最上層の広間に姿を見つけた。
そして、少し手前の長方形の広間に降りる。
所々崩れた石造りの階段を上がって、ここの主に声をかけた。
「エス兄、来たー」
オレに気づくとゆっくりと身体を起こす。
特に何かをするわけではない。
必要なものを届けて、最近あったことを話して、ただそれだけ。
それが今のオレ達の全て。
槍を置き、エス兄の前に腰を下ろした。
「そうだ、エス兄」
「どうした」
「オレの目が赤くなってるの、知ってた?」
話が一区切りついたところで、先日ヤ・シュトラが気づいた目のことについて尋ねてみる。
毎日のようにというわけではないけれど顔を合わせる頻度は高い。
どんな答えが返ってくるのか気になった。
「ああ、知ってたぞ」
「え、いつから?」
考える素振りもなく、ほぼ即答。
驚いてこちらも間を空けずに聞き返す。
「少し前からだな」
「そっか。でも何で赤くなったのか理由が分からないんだよな」
「原因は俺だろうよ」
そして、思いもよらない言葉が飛び出した。
「エス兄が原因って
…
?」
「おそらくこの身体にまだ残っているニーズヘッグのエーテルが原因だ」
「ニーズヘッグのエーテル
…
」
もしかしてヤ・シュトラは気付いていたのか?
だから『特殊なエーテルを浴びていないか』と
…
?
「何だかんだでここに来てるだろ」
「そりゃここに来ればエス兄に会えるんだから来るっしょ」
ここに来る理由はひとつしかない。
エス兄がここにいるから。
「
…
俺の中から少しずつ奴のエーテルは消えていきつつある。それがお前の目に定着していっているのだろう」
「そういうことだったのか」
ニーズヘッグの眼は赤い。
この人を救うために槍を向けた時、戦いの最中に可視化したエーテルも赤かった。
それがそのままオレの目に、というのなら色にも納得がいく。
「目の色が変わったことで害があるようなら、何か対応を考えねばならんが
…
」
きっと対応なんていくらでも方法がある。
その中でも最も嫌なものが心を過る。
「
…
それってさ、ここに来るなってこと?」
声が震える。
口にすることさえ恐ろしい。
「極論を言ってしまえばそういうことにな
…
」
「絶対やだね」
エス兄の言葉を遮り、立ち上がって背を向けた。
自分でも驚くくらいの低い声が広間に響く。
そんな言葉直接聞きたくなかった。
「
…
何も今すぐとは言わん。だが、今後どんな影響があるとも知れん」
「
…
平気平気!」
深呼吸をしてさっきの自分の声を振り払うように、いつもより軽い声で。
エス兄がオレのことを案じてくれているというのは分かっている。
オレだって立場が逆ならきっとそう言う。
「ていうか嬉しい。エス兄が一緒にいてくれるみたいで」
雲廊で邪竜を討った時、この人をやっと助けられると思った。
またこの人に背中を預けて戦えると思った。
…
けれど、『ヒト』の姿に戻るには時が経ちすぎていた。
「エス兄はニーズヘッグとエーテルが混じってこの身体になった」
そうするしかなかった。
今は復讐の対象だった竜にその魂を宿して生きている。
どんな形であれ、生きていてほしいと願ったのは他でもないオレ自身。
「ってことはオレの目を変えたエーテルにエス兄のエーテルも混じってるかもしれないってことだろ?」
「お前な
…
」
「だから、何があってもこの目を手放すつもりはない」
振り返って笑ってみせれば、エス兄が呆れたように息を吐く。
「それで戦えなくなってもか」
「片目があれば戦える」
戦闘が主の冒険者にとって、戦えないということは仕事ができないことと同義。
とはいえ隻眼の冒険者なんて探せばどこかにいるし、きっと訓練すればどうとでもなる。
「それにエス兄が一緒なら何だってできるって」
例え近くにいなくとも、自分の右目と共にあるというのなら、それはどんな援護にも勝る。
「むしろ強くなってたりして?」
「そんな簡単に強くなれたら誰も苦労せんだろう」
茶化したオレにエス兄が今日2度目の溜め息を吐く。
赤い両眼は伏せられている。
見られていないのをいいことに、側に駆け寄って目元に顔を寄せる。
「戦えなくなってもいい。片目が見えなくなってもいい」
目を閉じても肌に触れる感触が確かに側にいるのだと伝えている。
姿は違っても感じるエーテルはこの場で一緒に邪竜と対峙した時のままで。
「
…
でもエスティニアンに会えなくなるのだけは絶対に嫌だ」
もうあんな思いはしたくない。
「
…
ありがとうよ」
気遣うように向こうからも顔を寄せられる。
この人はこんなにも温かい。
「さ、さーて、用事あるし帰るとすっかな!」
目を開けると赤い眼がこちらを見ていた。
やっぱりらしくないことはするもんじゃない。
慌てて身体を離し、ぎこちない動きでエス兄に背を向ける。
槍を拾って歩き出したところで、後ろからオレの名前を呼ぶ声が聞こえて足を止めた。
「いつでも来い」
同じ声を以前聞いたことがある。
―
―
イシュガルドの街中で。
「言われなくても来るっての!」
手を振ってから、来た道を戻っていく。
表はとうに日が沈んでいて、空には星も見える。
簡単に夕食を済ませて宿に戻ると、洗面台の鏡の前に立った。
髪と同じ色の左目と黒い竜が染めた紅の右目。
石の家で見た時よりも色が濃くなったように見える。
右目に手をかざせばそこに彼がいる気がした。
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