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Hizuki
2017-10-30 20:12:46
2398文字
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FF14
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未来に残すもの
【FF14】エス光。子供向けに竜詩戦争の絵本が出版されることになった話。イシュガルドに生まれた者として。4.1メインクエ後の時間軸ですが、本編の話は微塵も出ていません。
何人もの情報筋を辿り、ようやく彼を捕まえた。
待ち合わせの場所に指定したのはクガネの潮風亭。
店の多忙な時間を外して上階の人気の少ない席を取り、彼が姿を見せるのを待った。
「急にどうした?」
「エスティニアン、久し振り」
穏やかな声が聞こえて顔を向けると、雪色の髪が目に入った。
前に顔を合わせた時から少し時間が開いているとはいえ、大して変わった様子は見えない。
私の向かいに腰を下ろしたのを見て、挨拶もそこそこに用件を切り出す。
「ちょっと見てほしいものがあってね」
隣の椅子に置いていた箱をエスティニアンに手渡した。
開けられた箱の中に入っているのは竜と人が向かい合う姿が表紙に描かれた本。
裏表紙にはファルコンネストに設置されたレリーフと竜と人が寄り添う姿がある。
―
とおいむかし、まだイシュガルドというくにができるまえのこと、ひととドラゴンはなかよくくらしていました
「
…
絵本か?」
表紙を開き、もう1ページめくれば、見開きで描かれた絵と分かりやすい文章。
一般のものより大きめのこの本は彼の指摘通りの絵本。
「そう、竜詩戦争のね。これはそのサンプル」
「ほう」
「子供向けに出すんだって。未来の子供達にもこういうことがあったって知ってもらうためにって」
一般向けには複数の歴史家が筆を取っている。
子供達にも理解してもらうには絵本がいいだろうと発行を決めたとのことだった。
竜と人が手を取り合っていた頃から人の裏切り、そして竜詩戦争の終結まで。
分かりにくいところは簡略化されているけれど、ちゃんと一通りの話が押さえられている。
「なるほど」
エスティニアンがパラパラと本をめくっていく。
絵本にしては少しぶ厚いけれど、大人が読むには文章が多いわけではない。
「
…
ちゃんとお前になっているんだな」
ページをめくる音が止んだ。
そういってエスティニアンが私に見せてきたのは話の終盤、ニーズヘッグと一人の人間が睨みあっているところだった。
邪竜に向かって武器を向ける者の姿は、彼の言う通り私をモデルにしたもの。
「私は断ったんだけど、作家の人がどうしても私の姿で描きたいって
…
」
最初は作家一人だけ、次第に交渉の場に人が増え、最終的にアイメリク卿まで姿を現した。
現行の国のトップにまで直々に言われては、さすがに首を縦に振るしかない。
もちろんモデルにと言ってもらえたことに悪い気はしない。
事実を基にしているとはいえ、そこは別に架空の人物でもよかったのではないかと思う。
「いいんじゃないか」
あっさりとエスティニアンに肯定され、何とも照れくさくなる。
「その戦いに自分が関わって、こんな形で残っていくなんて思わなかった」
「あまりこういう言い方をしたくはないが、イシュガルドにとってお前は終戦をもたらした英雄だ」
英雄と呼ばれることは相変わらず苦手なまま。
そんな私を気にしてくれているのか、言葉を挟んでそう言う。
エスティニアンは静かに本を閉じ、元通りにしまうと箱は私の手元に戻ってきた。
「
…
ただの冒険者だったはずなのになぁ」
私はただの冒険者で、行く先で少し手助けをしてきただけ。
イシュガルドの件はただエスティニアンを助けたかっただけ。
「いつかドラゴン族との戦いが終わって静かに暮らせるなんざ、本の中の話だと思っていた」
「あ、意外な言葉が出てきた」
「俺だって昔は弟と一緒に母親から話を聞いたものさ」
誰にだって子供の頃があり、両親や周りの大人から昔話を聞いて育つ。
昔のエスティニアンはどんな子供だったのだろう。
あまり昔のことを聞かせてはくれないから気にもなる。
「これから話を聞く子供達にとっては、戦争があったということの方がおとぎ話になっていく」
エスティニアンの言葉に耳を傾け、こくりと頷く。
竜との関係が近付いていくことはあっても、戦争はもう二度と起こらないはず。
「だがイシュガルドに生まれたのならば知っておかなければならないことだ。過去に何があって、今のイシュガルドがあるのかを」
過去があって、今がある。
「そして、お前のことも」
改めて自分が為したことの大きさを思い知る。
一国の脅威を払い、そこの人達に自分の存在が知られているということ。
「とはいえ年月が経てば多少なりとも脚色されたり捻じ曲げられたりするものだろうがな」
「それならもう今から変えといてくれればいいのに」
話は脚色されるもの、というのはとある人物のおかげでよく知っている。
一体どうなってしまうのかと思わずこめかみを押さえる。
遠い先のことを少しばかり考えていると、頭に何かが置かれた。
「ありがとうよ、イシュガルドを救ってくれて」
「
…
どういたしまして」
置かれたのは大きなエスティニアンの手。
くしゃりと髪型を崩され、抗議を込めて目の前の竜騎士にちらりと視線を向けた。
私が見ていることに気付くと、ふっと顔を逸らされる。
「それじゃ俺は行くぞ」
「ちょっと待って!これだけ持っていって」
立ち上がったエスティニアンを呼び止め、テーブルの上にリンクパールを置く。
そう頻繁に連絡することはないだろうけど、あって不便になるものではない。
それに、また今回みたいに用事がある時に捕まえる手間も省ける。
「持っているだけになるかもしれんぞ」
「それでもいいよ」
想いを通じ合わせているとはいえ、密に連絡を取り合っている間柄でもない。
けれどひとつくらいは確かな繋がりを持っていたいと思うのは、イシュガルドでの過去があるから。
「分かった」
今、エスティニアンの耳にリンクパールが揺れる。
「またな」
「うん、またね」
手元には新たな繋がりと未来に残す絵本。
どうか、どちらも途絶えませんように。
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