Hizuki
2017-08-04 18:45:33
1692文字
Public FF14
 

残された幻影を纏って

【FF14】エス光。武具投影と嫉妬の話。ヒカセンは竜+ナイト。遺すものと残される者。4.0クリア後の方がイイかと思います。


相棒が持つ盾の上で光が弾けた。
一瞬のうちに装飾が変わり、四大貴族フォルタン家の一角獣の紋章が現れる。

「何をしてるんだ?」
「武具投影よ」

聞き慣れないその言葉を繰り返す。
冒険者界隈で広まっているというそれは、装備品の外見を変えるためのものだという。
見た目にもこだわりたいという冒険者は多いようで、マーケットでは投影用の触媒が頻繁に取引されているらしい。

「私にとってこの盾は特別だから」

相棒とフォルタン家の騎士に何があったのかというのはアイメリク経由で耳にしている。
友が持っていたものと同じ盾。
新しい盾を手に入れる度にこうしているのだという。
剣術の心得をも持つ相棒は一体何をその盾で護るのか。

「なら、俺にもしものことがあったら、お前はこいつも使ってくれるのか」

自分の背にある赤黒い槍に手を伸ばす。
邪竜の魔力で元の姿はとうに失われてしまっている槍に。

バカなこと言わないで」

静かに、けれど、確かに強い相棒の声が俺の言葉を否定する。

「あんな思いは一度で十分よ
今のは俺が悪かった」

顔を逸らした相棒が目元を拭った。
自分にこんな感情があったことに自身が驚いている。
嫉妬、だ。
今目の前にいるのは俺なのに、他の奴のことを考えている相棒に。
詳細を知っていてなお、繊細な部分に踏み込んだ。
腰に下げているその剣を突きつけられてもおかしくはなかった。

「私より先にいなくなるなんて許さない」
「肝に銘じておく」

こうして生きてまた顔を会わせているとは言え、何も言わずに相棒の元を去った前科もある。
それもあって釘を刺されているに違いない。

「大体エスティニアンの槍なんてどれだけ長いと思ってるの?流石に無理」

息をひとつ吐き、落ち着きを取り戻した相棒が茶化してみせる。
実際俺の使っている槍は相棒が扱っているそれより長い。
こいつが使おうとするならば、打ち直しが必要になる。
ニーズヘッグの魔力を帯びたこの槍を打ち直せるような鍛冶師なぞまずいない。

「だから観賞用として部屋に飾るわ。他の人に触らせる気なんてないもの」

誰にも渡すつもりはない、とはっきり言われている。
相棒にならば安心して預けられる。

「私の側にいてくれる限り、槍が部屋に来ることはないから」
「そうか。ならば命も槍も、お前に預けることにしよう」

エレゼン族は他種族に比べて長命だと言われている。
余程のことでもなければ恐らく先にいなくなるということにはならないだろう。
それを言い換えるならば、残されるのは俺の方だということ。

逆だったら、どうするの」

確かめるように言葉を紡ぐ。
互いにいつ命を落とすか分からない身。
寿命のことを知ってか知らずか、そう問いかけられる。

「戦うさ、お前の槍も持ってな」
「え?」

相棒のそれは俺のものより短く、幾分か軽い。
身長に合わせて作られているのだから当然のこと。

「俺も誰かに預けるつもりなぞないからな」

ここといって戻る場所もなく、同じ場所に留まるつもりがない以上、どうするにしても自分の手元に置いておくことになる。
手元にないと心配とは言わないが、相棒のものだからこそ側に置いておきたいと思うのだろう。
親しい者から贈られたものを戦場での拠り所にしていた騎士団の兵の気持ちも今なら少なからず理解できる。

「まぁお互いすぐにどうこうなるわけではないだろう。帝国側も静かなようだ」
「そうね」

アラミゴ奪還の一件で対応に追われているのか、最近は表立った動きを見ていない。
どこかで大きな問題が起きたと言う話も聞かない。

「さ、それじゃ行きますか」

盾を背負い、相棒が拳を手のひらに打ち付けた。
眼前に広がるのはアジムステップの大平原。
現地の手練でも太刀打ちできない巨大な鳥類が現れたという。
再会の市でその討伐を買って出た相棒に偶然出くわし、協力を申し出た。

「ああ」

2人で奴を見かけたと言う場所を目指して歩き出す。
俺の目の前を歩く相棒の背には一角獣の姿があった。