Hizuki
2016-12-25 22:54:32
2391文字
Public FF14
 

存在を求めて

【FF14】オル光。星神の従者というかサンタの話。


「そろそろ星芒祭の季節か」
「あぁ、そういえばそうだな」

部屋の壁に掛けられている暦を見ながら彼女が口を開いた。
本国イシュガルド発祥の星芒祭も三国に広まり、冒険者ギルドの有志で毎度催しがあるということを耳にしている。

今年はサンタさんに会えるかなぁ」
「さんたさん?」

ぼそりと呟いたその言葉に馴染みはなく、聞こえた通りに繰り返した。

「私の故郷でもこの時期には催しがあるんだ」

カップの置かれたテーブルの前の椅子に腰掛けて彼女は言葉を続ける。

「サンタさんは1年間いい子にしてた子のところにプレゼントを届けてくれるの」
「ほう」
「でね、小さい頃からずっと会ってみたいって思ってるんだけど、一度も会えたことがないんだよね」

天井を仰ぎながら言う彼女はどこか寂しそうに見える。
彼女をそんな風にさせる存在とは。

「どんな姿をしているのだ?」
「白いポンポンのついた赤い帽子を被って、赤いコートを着てるおじいちゃん。それで家の煙突から入ってくるの」

テーブルに置かれていた自分の手帳を開くと、スラスラと紙にペンを走らせていく。
そしてページを慎重に千切り、その紙を私に差し出した。
彼女が口にした通りの口髭を蓄えた小太りの男性の姿がかわいらしく描かれている。
屋根に上り、大きな白い袋を背負って、煙突に足をかけている姿。
星芒祭で言うところの聖人の従者、ということだろうか。

「まぁ、そろそろ諦めなきゃなって思ってるんだけどさ。もう子供じゃないし」

ふぅと小さく息を吐き、自嘲気味に笑ってみせた。
どう声をかけたものか迷い、何か話を切り替えようと話題を探す。

今年も冒険者ギルドの手伝いに行くのか?」
「うん、多分ね」

以前彼女が冒険者ギルドの手伝いに出ていたことを思い出して話を振ると、いつもの顔に戻った。

「そうか。もし都合がつくようならこの日に顔を出してはもらえないだろうか」

卓上の暦を手に取って机から離れ、それを彼女に渡し、ある日にちに書かれた赤い丸印を示した。
不思議そうに彼女は首を傾げてみせる。

「何かあるの?」
「星芒祭という訳ではないが、ちょっとした部下達の慰労会をするのでな。お前が顔を出してくれると皆も喜ぶ」
「そっか。覚えとくよ」

約束と言えないことは分かっている。
だから『都合がつけば』と。

「さて、それじゃそろそろ行こうかな」

少し残っていたカップの中身を飲み干すと、ゆっくり立ち上がった。

「またいつでも顔を見せてくれ」
「ありがとう。また来るね」

静かにドアを閉め、足音が遠ざかっていく。
手元には彼女が残した手帳の1ページ。
さて、どうしたものか。





「はぁー楽しかったぁー!」
「フフ、それは何よりだ」

満足、といった表情で彼女は声を上げた。
彼女が姿を見せたのはちょうど交代の頃。
交代した部下達が『聖人の従者が来ている』と、何やら手のひらほどの大きさの包みを持って食堂に入ってきた。
ギルドの手伝いを終えてそのままきたのだろう、部下の言葉通り、まるで星神の従者のような格好をした彼女が食堂の入口にいたのだった。

「わざわざ差し入れまですまないな」
「気にしないで。大したものじゃないから」

包みの中身は甘い焼き菓子。
前線で甘味はそうそう行き渡るものではない。
笑いながら軽く言うが、全員分となればかなりの手間になるだろう。

「私の方こそ誘ってくれてありがとう」
「もう時間も遅い。今日はここに泊まっていくとイイ」
「そうだなぁじゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

アルコールが入っていることもあるのだろう、返事は早かった。
いつでも彼女が使えるようにと空けてある部屋へ案内し、暖炉に火を入れる。

「また明日」
「うん、おやすみ」

彼女の部屋を後にして向かったのは食堂と調理場。
今日の片付けを手伝ってから私室に戻ると、壁に掛けておいた外套に袖を通した。
アイメリク卿に依頼して神殿騎士団が星芒祭の催しで使う緋色の外套の余りを借りてきたもの。
そして飾りのついた赤い帽子に、綺麗に包装された小さな箱。

よし」

帽子を被り、箱を手にして部屋を出る。
向かうのは彼女のいる部屋。
小さくノックしても当然眠っているのだろう、返事はない。
少しドアを開けて中の様子を窺ってみるも部屋の明かりが付いている様子もない。
ただ暖炉の火が揺らめいているだけ。
音を立てないように静かに部屋の中に入ると、彼女の寝息が聞こえてきた。
流石に煙突からというのはここでは無理がある。
ベッド横のキャビネットの上にそっと箱を置いた。

「きっと本物に会える日が来る」

偽物サンタからの贈り物。
冒険者として各地を巡る彼女には無事を祈る首飾りを。
杞憂でも、想いだけは共に在れるようにと。
そしてそっと額に口付けを落として、部屋を後にした。





翌日、出発する彼女を見送るために表に出たのは昼前のこと。

「以前したサンタさんの話、覚えてる?」
「覚えているが、どうかしたか?」

意を決したように彼女が口を開く。

私ね、昨日会ったような気がするの」
ほう」

その声は真剣そのもの。
誰にも聞かれないようにするためなのか、きょろきょろと辺りを見回してから爪先立ちで私の耳元に顔を寄せた。
それに合わせて、彼女が話しやすいように身をかがめる。

おじいちゃんじゃなくて、多分あれは銀髪のエレゼンだった」

そっと耳打ちされた。
その言葉に思わず目を丸くする。

「ありがとね、私のサンタさん!」

結局は気付かれていたということか。

するりと首元を覆っていた布を外して見せる。
ひらひらと手を振って去っていった彼女の首元には銀色の首飾りが輝いていた。