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Hizuki
2016-12-11 22:34:11
2462文字
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FF14
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風呼びて
【FF14】オル光。風鈴の話。3.3メインクエ、サブクエ『追憶行』の内容を含みます。
やっぱり自分の家は落ち着く。
数日振りに戻った部屋で大きく深呼吸をするとしみじみと感じる。
グリダニア旧市街から船で揺られた先にある冒険者用住宅地、ラベンダーベッド。
その一角のリリーヒルズに自分の部屋がある。
冒険者の定住を狙いとして開放された土地は、グリダニアだけでなくウルダハとリムサ・ロミンサにもそれぞれある。
開放される少し前から噂が飛び交い、私も小耳に挟んではいた。
基本的に各国の宿や野営の生活を送っている分、帰る家ができようものなら精神的にいいのだろうな
…
とは思っていた。
とはいえそんな頻繁に戻るわけでもないだろうから、大きな家までは要らない。
それなら、と言って冒険者仲間が教えてくれたのがこのアパルトメントという集合住宅だった。
入って間もない部屋にそう凝ったものがあるわけもなく、ベッドやクローゼット、テーブルに椅子といった必要最低限のものしか置かれていない。
それらは私が家を持ったということを聞いた冒険者仲間が作ってくれたもの。
近いうちにちゃんとお礼をしなくては。
締め切っていた部屋の換気のために窓を開けると、さわやかな風が入ってきた。
風は澄んだ音を奏でる。
いつぞやかの紅蓮祭で売られていた風鈴だ。
当時はまだ家を持っていなかったものの、店先に吊るされていたその音が気に入って、家を持ついつかの日のために買っておいたもの。
チリンチリンと絶え間なく音を響かせる。
荷物の整理をして一通り空気を入れ替えた頃には、オレンジ色の光が外から深く差し込んでいた。
軽く食事を取り、久し振りの自宅のお風呂で疲れを癒す。
ベッドに身を投げると程なくして睡魔に襲われ、誘われるまま目を閉じた。
――
……
。
何かが音を立てている。
――
……
。
自分しかいないはずの部屋で。
――
……
。
眠りの海から徐々に引き上げられていく。
――
チリン。
澄んだ音が耳に届いた。
それが、風鈴の音だと気付くのに時間はかからなかった。
もちろんベッドに入る前に家の戸締りは確認した。
外が荒れている様子はない。
なのに聞こえるということの意味。
――
チリン。
まるで私に呼びかけるように鳴る音。
目を開けて身体を起こすと、部屋に満ちている空気が違っていた。
暖炉の暖かさとは異なる温かい空気。
先の邪竜との戦いで感じたものと同じもの。
「オルシュファン
…
?」
問いかけるように名を呼べば、私の声に応えるように再び鳴った。
やはり彼なのだ。
命を落とした人間のエーテルは大気中に霧散する。
風となって、生前縁のあった者の元を訪ねる事もあるという。
―
私が風鈴に惹かれたもう一つの理由はそこにあった。
もしかしたら、私のところに来てくれるかもしれない。
これならあの人が来ても分かる、と。
ベッドから出て、音が聞こえる場所に向かう。
窓の側に彼はいた。
姿は見えないけれど、確かにそこにいると分かる。
「久し振り
…
、っていうのは変かな?」
竜詩戦争の終結を決定付けた戦いから、そんなに時間は経っていない。
あの時は言葉を交わす余裕はなく、気付いた時にはもう見えなくなっていた。
「元気そうで何よりだ」
聞こえた声は共に過ごした日々と変わらないまま。
それだけで胸がいっぱいになる。
「ありがとう」
彼に伝えたいことはたくさんある。
どれだけ伝えても足りないくらいに。
「もう
…
大丈夫だよ」
何故彼がここに来たのか何となく分かる。
きっと最後の挨拶に来たのだろう。
ここを出れば、彼はエーテル界に還る。
心配をかけたままではいられない。
「
…
それを聞いて安心した」
雪の家で、ドラゴンヘッドで、イシュガルドで彼と重ねた時間は消えない。
「
…
私はお前と共に在る」
エーテルは世界を巡る。
生命が途切れた時にエーテル界へ戻り、また新たな生命が生まれればこちらに流れてくる。
それは私と共にあるも同じ。
「また会おう」
「
…
うん、またね」
一際強く目の前が閃光を放ち、気配がゆっくりと消えていく。
温かい空気は消えないまま。
もう一度風鈴が音を立てたのを最後に、気配は感じられなくなった。
翌日、私はイシュガルドに向かった。
イシュガルドで歩いた道をもう一度辿る旅に出るために。
フォルタン伯爵の屋敷をスタート地点に訪れた場所、出会った人達。
一緒に旅をした仲間。
数日かけてひと回りしてイシュガルドに戻ると、皇都は傾きつつある太陽の光に照らされていた。
燃えるような夕焼けが教皇庁の外壁を染めていた。
―
夕焼けが、苦手だった。
『イシュガルドの夕焼け』が。
「もう、大丈夫」
誰に聞こえるでもない小さな声で呟く。
壁と地が紅く染まった瞬間が過って動けなくなる、夕方のイシュガルドを避けていた頃を思い出した。
あの時に比べれば胸の痛みはもうほとんどない。
まだ苦手なことに変わりはない。
少なくとも、普通に動ける程度には。
あと一ヶ所行きたいところがあるけれど、この時間から行くのは躊躇われた。
そう長くない時間の後、空には月が昇る。
九つの雲で宿を取り、旅の汗を流した。
確かあの日もここで宿を取ったな、とおぼろげな記憶を辿る。
状況が状況なだけに、フォルタン伯爵の屋敷に戻ることができなかった。
どんな顔をして伯爵やフォルタン家の人達にお会いすればいいのか分からなかった。
翌朝皇都の大審門を出ると、エーテライトの見える左手に向かう。
ドラゴンヘッドの面々に挨拶をして、今度は北へ。
最後の場所に選んだのは、彼が生きた証のある場所。
青空が広がり、皇都が一望できる丘。
碑の前には花が供えられ、一角獣の描かれた盾が立てかけられている。
この場所に彼は眠っていない。
それでも膝をついて祈りを捧げるのは習慣のようなもの。
立ち上がり、拳をぎゅっと握った。
彼がよくしていたように。
瞬間、風が吹き抜ける。
背中を彼に押されたような気がした。
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