Hizuki
2016-11-28 18:59:27
1696文字
Public FF14
 

暇潰し

【FF14】エス光。3.3メインクエ前提、病室での話。


邪竜が討たれ、竜詩戦争は終結した。
影の支配から解放された蒼の竜騎士は、神殿騎士団の病院で療養している。
私はといえば離れていた時間を埋めるように、彼の元に顔を出していた。
ここにいるということを分かっていても、ちゃんと確かめたいと、自然と足が彼の元に向かっていた。

病室のドアを軽くノックしても返事はない。
現状この部屋に入れる人間は私を含め一部の人間に限られている。
だからこそ返事がないのだと言ってもいい。

「入るよ」

一応声をかけ、静かにドアを開けて中に入った。
視界に飛び込んできたのは太陽の光が差し込む中、ベッド横のサイドテーブルに肘を突き、物憂げな表情のエスティニアンの姿。
暖かな光が彼の雪のような髪を輝かせていて、とても綺麗で思わず見とれてしまう。
このまま風景を切り取って絵にしたい、そんな風に思ってしまったのは惚れた弱みというやつなのだろうか。

来てたのか」

その声で現実に引き戻される。
エスティニアンはこちらをちらりと見ると、また手元に視線を戻した。

「えっ、あ、うん。おはよう、エスティニアン」

ドアが開きっ放しなことに気付き、慌てて閉める。
折角部屋がほどよく暖かいのに、それが冷えてしまう。
私に気付いたのは入ってきた冷気で部屋の温度が下がったせいか。
ベッドに寄り、側に置かれた椅子に腰を下ろす。
ふと彼の手元に目をやると、何やら彼らしくないものが目に入った。
もしかして物憂げな様子の原因はこれか。

「エスティニアンが本読んでるなんて意外
「俺だって本くらい読むさ」
「その割には楽しそうってわけでもないのね」
「自分で選んだものじゃなければそうなる」

開いているページにしおりを挟み、ぱたんと本を閉じるとそれを私に差し出した。
白の表紙に描かれているのはイシュガルドの紋章、そして騎士の証たる剣と盾。
題名は『騎士の心得』と。

「アイメリクの奴が置いていった。戦争終結を踏まえたうえで、改めて騎士の在り方を考えて欲しい、と」
「それはまた

思わず苦笑いがこぼれた。
蒼の竜騎士の名は返上しても、イシュガルドの竜騎士であることに代わりはない。
テーブルの隅に積んである数冊の本もきっとアイメリク卿が持ってきたものなのだろう。
背表紙に書かれている題名を見る限り、何となく中身を見ずともエスティニアンの性格に合わなさそうだというのは察しが付いた。

「読まないっていう選択肢は?」
何もないよりはマシだ」

溜め息混じりではあるけれど、嫌という訳ではないようだ。
友人からの厚意を無下にできる人じゃないというのも知っている。
あまり自分自身が病院という場所になじみがないせいで抜け落ちていたけれど、彼が時間を持て余しているのは自然なこと。
それこそ、興味のない本にも目を通すほどに。

「なぁ」

私も今度何か持ってこよう。
そう決めたところでエスティニアンが口を開いた。

「確かお前も色々持っていたな」
「あ、うん」

一緒に旅をしていた頃に本を持ち歩いていたことを覚えていたのか、確認するように問いかけられる。
あの時は特に気にしている様子もなかったけれど、見ていたのだなと一時当時を思い返した。

「じゃあ一つ頼みがある。俺の暇潰しになりそうなものがあったら持ってきてくれ」

エスティニアンが好きそうなもの、か。
一体何がいいだろうかと、昔彼が話してくれたことを手がかりに自分の記憶の中を漁る。

「今回に関してはお前に選んでもらった方がよさそうだ」
今回だけ?」

背もたれに身体を預け、エスティニアンが大きく息を吐いた。
からかうように聞いてみせれば、困ったように肩をすくめる。

頼りにしてるぞ、相棒」

背を預けた戦場で言われた言葉。
元々動くつもりではあったけれど、そう言われてはやる気も出るってもの。

「はいはい、じゃあ行ってくるね」

椅子から立ち上がり、ひらひらと手を振って部屋から出る。
向かう先は自室の書庫。
他でもない相棒の期待に応えるため、本の背表紙に指を滑らせた。