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Hizuki
2016-10-31 22:38:02
1934文字
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FF14
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ひとりごとの詩
【FF14】オル光というよりはオル→光。イシュガルドに入る前日の話。詩人ヒカセンです。
風の音の中に自分の歌声が聞こえる。
澄んだクルザスの空気に声が溶けていくような気がした。
2つの中にもうひとつ音が混じる。
私の方に近付いてくる温かな気配。
「まだ起きていたのか?」
歌が終わるのを見計らって、ささやかな拍手と共に気遣うようにかけられた声はここのキャンプの主、オルシュファンのものだった。
そろそろ休みます、と言って自室に戻ったのが2時間程前のこと。
「何だか眠れなくて」
ベッドに入って目を閉じてみたけれど、目が冴えてしまって眠れなかった。
それなら少し散歩でもしようと表に出てきたのがキャンプの見張り台だった。
視線を元の方向に戻す。
その先にあるのは皇都イシュガルドの入口、大審門。
とうとうその門の向こうに足を踏み入れる時が来た。
「明日、か」
女王暗殺騒動のウルダハから逃れてきて、オルシュファンを訪ねたのはつい最近の話。
ドラゴンヘッドの応接室を『雪の家』として使わせてくれた彼の厚意で、心身共にしっかりと休ませることができた。
そして、1週間程経ちキャンプでの生活にも慣れてきた頃、その知らせは私達にもたらされた。
イシュガルド入国の許可が下りた、と。
皇都は外部からの人間の受け入れに厳しい国だと聞いていた。
それがこんなにも早く入国の許可が下りたということは、オルシュファンがいかに迅速に本家へ掛け合ってくれたのかという証に他ならない。
「心配か?」
「期待半分、不安半分って感じ」
私の隣に肩を並べたオルシュファンが問う。
「でも楽しみの方が強いかな。あの門の向こう、イシュガルドはどんなところなんだろう、って」
まさかイシュガルドに入れることになるとは思わなかった。
今まで歩いてきた三国とは違う、新しい場所。
そこには間違いなく私の知らないものがたくさんある。
「冒険者の血、というやつか」
「きっとそう」
答えにオルシュファンが笑みを漏らした。
彼の笑顔に心が落ち着いていくのが分かる。
「オルシュファンと話したら落ち着いた」
ふぅ、と大きく深呼吸をすると冷えた空気が肺を満たした。
「何から何まで本当にありがとう」
オルシュファンに向かって頭を下げる。
一度ちゃんと感謝を伝えておきたかった。
出発前に言おうと思っていたこと。
彼がいなければ、今頃生きていなかったかもしれない。
「何を今更。私がそうしたいからしたまでのことだ。気にしなくてイイ」
迎えてくれた時と変わらない笑顔。
この先何があってもオルシュファンのことを思い出せばきっと乗り越えていける。
「今度こそ寝るね」
「ああ、おやすみ」
門に背中を向け、歩き出そうとした時だった。
温かい大きな手が私の手首を掴まえていた。
誰の手なのか、などと問うまでもない。
「
…
オルシュファン?」
「
…
独り言だ。聞き流してくれて構わない」
足を止めて、彼の『独り言』に耳を傾ける。
この状態で聞き流せるわけなんてない。
彼らしくない雰囲気にこそ不安を覚えた。
「私はお前のことが好きだ
…
友としてではなく、愛しい者として」
ほんのついさっきとは違う、真剣な声音。
驚きと同時に心臓が大きな音を立てた。
「本当はもう少し様子を見て、ちゃんと話をしようと思っていた」
振り返ろうとするも、それはオルシュファンの腕に阻まれる。
手から離された腕がするりと私の肩を抱き締めた。
「返事はいつでもいい。いつか、お前の言葉を聞かせてくれないか」
息が耳に掛かる。
突然のことにただこくりと頷くことしかできなかった。
解放されるのと同時に一目散に部屋へ駆け込み、ベッドに潜り込んだ。
翌朝のオルシュファンは私のよく知るいつもの彼で、昨日のことなど何もなかったかのようだった。
夢だったのかと自分の頬をつねってみても確かに痛みがあって、あれは本当だったのだと実感するだけ。
しかし皇都に入ってからというもの、目まぐるしく起こる出来事が自分の気持ちを整理する時間を許してはくれなかった。
ただ思いつきでこぼれる歌の色が変わってきているのは事実だった。
空のような青。
雪原に輝く銀。
彼の姿を見ると自然と心が跳ねた。
それが答えなのだろう。
けれどこの想いをどう口にしていいか分からないから、竪琴に心を任せる。
詩は私のもう一つの言葉。
指が絃を弾く。
─その声は癒しの旋律となり
その姿は雪原を照らす陽光となる
想い慕えど言の葉にならず
されど我が心、彼の者と共に─
「聞いたことのない歌だな」
「
…
これが私の答え。私の言葉、です」
だから、言葉は詩に乗せよう。
イシュガルドを見下ろす丘の上で、貴方だけに捧げる詩を。
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