Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
Hizuki
2016-09-26 23:32:13
1975文字
Public
FF14
Clear cache
彼女が歩む道の先に
【FF14】オル光。月にまつわるおとぎ話とお月見の話。
「あれ、オルシュファン?」
問いかけるように私の名を呼ぶ声。
誰かと問う必要はない。
声のした方を振り返れば、思っていた通りの人物が暖かそうなコートを着て立っていた。
「どうしたんですか、こんな時間に」
「書類が一区切りついたので気分転換にな」
こんな時間、というのは彼女にも当てはまる。
もうしばらくすれば日付が変わるだろうという時間。
お前こそ、と問おうとする前に彼女が口を開いた。
「それなら一緒に月を見に行きませんか?」
まさか彼女の方から誘われるとは。
断る理由など当然なかった。
そんな長時間になる訳ではないだろうが念のため机に書置きを残し、防寒用の外套を手に取ると急いで表に戻った。
「今日は一年のうちで一番綺麗に月が見える日なんですって」
「そうなのか」
キャンプ北東の門から出て二人で歩く。
私より歩幅の小さい彼女に合わせると、景色もゆっくり流れていった。
「何故クルザスに?」
「街から離れてるから、ですね」
曰く、『街中でも見えるだろうけど、どうせなら自分が知っている中で一番綺麗な場所で見たい』と。
皇都とクルザスからの景色しか馴染みのない自分に違いはよく分からないが、彼女が言うのだからきっとそうなのだろう。
「晴れてなかったらどうしようかなって考えてたんですけど、大丈夫だったのでほっとしてます」
とても楽しみにしていたのが分かるほどに、顔から嬉しさが滲み出ている。
「そういえば、東の国には月にまつわるおとぎ話があるそうです」
「ほう」
歩きながら思い出したように彼女が言った。
時折彼女はこうして様々な話を聞かせてくれる。
冒険者の目で見てきたもの、訪れた場所、珍しい生き物、それ以外にも私の知らないたくさんのことを。
「昔々おじいさんが山へ木を採りに行った日のこと、林の中で光る木を見つけました」
幼子に聞かせるようにゆっくりと語り出す。
木の中にいた子供を連れて帰り、老夫婦はその子供を育てることにした。
子供はすくすくと育ち、見目麗しい娘に成長した。
美しい娘と評判になり、話を聞きつけた都の貴族達が娘に結婚を申し込んだ。
娘は頑なに断っていたが、彼らの熱に負け一つずつ問題を出した。
私が望むものを持ってきたなら、と。
それはどれも手に入れるどころか、存在するかすら疑わしい困難なものばかり。
ある者は偽物を持ち込んで見破られ、またある者は命を落としかけて娘を諦めるまであった。
とうとう娘の噂は都の頭首にまで知れ渡る。
頭首からの求婚も断ったものの、手紙のやり取りをするようになった。
ある時娘は月を見上げては涙をこぼすようになり、問うた老夫に娘は理由を告げる。
私は月の都の人間で、次の満月の日に帰らなければならず、月から迎えが来るのだ、と。
「頭首は多くの兵を老夫婦の家に向かわせ、娘を守ろうとします」
少し道から外れ、左手の木々の間を抜けていく。
魔物達も寝静まっているのか、数は疎らで襲い掛かってくる様子はない。
「けれど月の都の者を目の前にした途端、誰一人として戦えなくなってしまったのです」
降り積もった雪が空からの光で輝いている。
きらきらと星屑が散りばめられているようだ。
「そして娘は老夫婦と頭首に手紙を残し、月に帰っていきましたとさ」
天候がよければイシュガルドの大審門と皇都を一望できる丘の上に辿り着く。
おしまい、と物語を締め括った。
銀色の光が振り返った彼女の背中から神々しく照らしている。
「
…
綺麗ですね」
私に背を向け、月を見上げた。
普段よりも大きく見える姿は満月。
返事をするよりも早く、するりと腕が彼女に伸びる。
「
…
どうしたんですか?」
自分よりも小さな身体に、その肩に顔を寄せた。
戸惑った声が抱き締めた腕の中から聞こえる。
「
…
お前が連れていかれそうな気がしたのだ」
「誰かに連れていかれるなんてお断りです」
穏やかに、しかしきっぱりとそう言い切った彼女の言葉にほっとしている自分がいる。
「わたしの道はわたしが決めます」
これはただのおとぎ話。
それでも今の風景を見れば重なって見えてしまう。
月から迎えが来て、彼女が私の手の届かないところへ行ってしまうのではないか、と。
「
…
オルシュファンなら話は別ですけど」
付け足すように彼女が言葉を紡ぐ。
そうか、逆に私が彼女を連れていってしまえばその心配もない。
「
…
綺麗だな」
「はい、とても」
顔を上げれば、先程と変わらない満月が浮かんでいた。
向けられている視線に気付き左を見れば、優しく微笑んでみせる彼女の顔が目に入る。
まだ手は届く。
けれどいつしか自分の手からすり抜けていく時が来るかもしれない。
その時、私は彼女を守れるのだろうか。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内