Hizuki
2016-08-28 12:05:26
2291文字
Public FF14
 

一人で海か、二人で山か

【FF14】エス光。二人で花火をする話。


「やっぱり間に合わなかったぁ

ドラヴァニアからの帰り道、クルザス西部高地に入り、一夜を明かせそうな洞穴を見つけ、今日の野営の準備を終えたところで相棒がそう漏らした。
月はもう高くまで昇っている。

「だから断ってもいいと言っただろう」

事の発端は5日前のイシュガルド。
神殿騎士団本部の総長室に俺と相棒の二人が呼び出されたことだった。
急遽ドラヴァニア雲海に駐在する騎士団の兵に届けて欲しいものがある、と。
基本的に頼まれごとを断らない相棒が珍しく二つ返事をしなかった。
というのも、ラノシアのコスタ・デル・ソルで花火大会があるだとかで2週間ほど前から自分自身も相棒から誘いを受けていた。
理由を知っていたからこそ、『俺が行くから断ってもいい』と先に助け舟を出しておいたのだが、少し考えた後に首を縦に振り二人でドラヴァニアに向かうことになったのだった。
アイメリクから預かった書類の他に、ファルコンネスト、テイルフェザーの各地で商人と合流し、荷物を受け取っていくという手筈になっていた。
二人でなら依頼を終わらせてテレポの魔法で現地に飛べば、何とか間に合うだろうという算段だったらしい。

「だってエスティニアンがアイメリク卿の依頼受けたら一人で花火行くことになってたじゃん
「そもそも俺は何も返事をしていなかったと思うが?」

行くとも行かないとも返事はしていなかったが、その日に何か用事があるというわけではなかった。
とても楽しみにしているようだったし、こいつの性格上連れて行かれていたのは間違いない。

「むー

不満げな声を出しながら、慣れた手つきで食事の準備を整えていく。
冷えた身体に温かいスープが染み渡った。
食事を済ませて片付けを終えると、何やら相棒が自分の荷物の中をごそごそと探り始めた。

あった!」

取り出したのは色とりどりの紙に包まれた細長い何かと、土台のしっかりとした太めの蝋燭。
暗かった相棒の表情はやや晴れている。

「何だそれは」
「花火!一緒にやろう!」

洞穴の入口側に俺が返事をするより早くそれらを広げていく。
暖を取るための焚き火から蝋燭に火を取り、岩の上に少し蝋を垂らしてその上に置いた。
蝋燭を固定するためのものだろう。

「もしもに備えて準備しておいてよかったー」

出発前に『少しだけ時間が欲しい』と言ってどこかに行っていたのは、これらを用意するためだったのかと悟った。
間に合わないことを見据えた上で。
一本手に取り先端のひらひらとした部分を蝋燭にかざすと、じわりと炎が移る。
程なくして火は本体の方へ広がり、鮮やかな赤色の光が噴き出した。

「ほら、エスティニアンも」

後ろに立っていると、そう言って相棒からいくつかまとめて手渡される。
退きそうにない様子に同じように一本手に取って火を点ければ、先程とは違う青色の光。
澄んだクルザスの夜の空気に花火の光はとても映えた。





「本当はさぁ浴衣着てさぁ花火見たかったなぁ

蝋燭の火が本体の蝋を半分ほど溶かした頃、手に持っている光に目を落としながら残念そうに相棒が呟いた。

「大きな音がしてドーンって空に花が咲くの
「とはいえ今回で最後って言うわけじゃないんだろ」
「まぁね

繰り返し行われてきた催しであるというのは、こいつが持ってきたチラシで知っている。
そんなものが事前通知なしになくなるなんてことは早々ないだろう。
もしあるとすれば恐らく運営母体に何か問題が起きたか、あるいは霊災のような自然災害が原因かのどちらかだ。
新しい花火を取り、火を点ける。

「でも次の時にエスティニアンと行けるかどうかは分からないし
なら次こそ一人で行くか?」
「むー

緑色の光が散った。
誰かと、でなければ自然と一人だ。

「じゃあ次は約束だからね?ちゃんと約束したからね!」

念を押すように背伸びをして俺に詰め寄る。
左手には火の点いた花火を持ったまま。

「分かった分かった」

宥めるように了承の返事をすれば、その顔が途端に笑顔になった。
手にしていた花火が燃え尽きると、また荷物の中を漁り始める。
お目当てのものはすぐ見つかったらしく今度は何やら小さな箱をいくつか持っていた。

「よし、これもやっちゃおう!」

中には紐の付いた筒が入っていた。
蝋燭を手に洞穴の外に出てそれらを並べて置き、俺に手招きしてみせる。

「エスティニアン、こっち!」

外に顔を出すと順番に相棒が紐の端に火を点ける。
筒に火が到達するのと同時、何かが空へ飛び出した。
赤、青、黄色、緑。
立て続けに様々な光の花が空に咲く。
遅れて光が弾けた音が響いた。

「あそこの花火はこんなもんじゃないんだから!」

夜空を彩った光に目を奪われていると、相棒が横から力説を始める。
あそこの出店の料理がうまいだの、どこから見るのが一番いいだの、もう次のことしか考えていないらしい。

「ちょっとエスティニアンちゃんと聞いてる!?」
「あぁ聞いてる」

ついさっきまでしょぼくれてたのはどこに行ったのやら。
とはいえこいつはこれくらい騒がしい方が似合っている。

「俺はもう寝るぞ。見張りの交代の時間になったら起こしてくれ」
「もうっ!エスティニアンってば!」

こいつに飲まれそうになっていたが、まだ依頼の途中だ。
話は帰ってから聞いてやるとして、まずは仕事を終わらせなければ。
相棒の抗議の声を聞きながら、交代までの眠りに就いたのだった。