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Hizuki
2016-08-19 00:18:58
2161文字
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FF14
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帰る場所
【FF14】オル光。倒れたヒカセンとオルシュファン様の話。猫叉Masterの曲『Flowing into the darkness』から浮かんだ話。
今日も一日が終わろうとしている。
ドラゴン族に大きな動きはなく、どちらかといえば普通の日。
夜警担当の部下達に労いの声を掛け、そろそろ休息を取るべく私室に戻ろうとした時だった。
キャンプ中央のエーテライトが淡く輝いた。
特別なクルザスの素材を求めて冒険者か誰かが飛んで来たのだろうか。
光が消えたのと同時、ドサッと何かが落ちるような音が聞こえた。
どこかで積もっていた雪が落ちたかと、階段に足を掛ける。
「オルシュファン様、ちょうどいい所に!」
上から身を乗り出した部下に酷く慌てた様子で声を掛けられる。
「どうした?」
「冒険者殿が
…
!」
続いた言葉にさっと血の気が引いていくのが分かった。
急いで駆け上がると、石造りの広間に横たわる彼女の姿。
抱き起こしていたもう一人の部下と場所を代わり、怪我の具合と脈拍、呼吸を確認する。
大きく出血している様子はなく、ちゃんと息があることが分かると、自分が羽織っていた防寒用の外套で包み彼女を抱き上げた。
「すぐ医者に私の部屋に来るよう連絡を!」
「はい!」
この時間にすぐさま使えるような部屋はない。
厳密にはいつでも彼女が使えるようにしてある部屋はある。
だが今は部屋が冷え切っている。
今から火を入れて十分な暖かさになるには時間がかかる。
それならば既に暖炉に火の入っている私の部屋の方が都合はいい。
彼女に衝撃を与えないよう注意を払い部屋に戻る。
身体に障らないよう慎重に装備を外してベッドに寝かせ、布団を掛けたところで控えめなノックの音が聞こえた。
到着した医者と入れ替わりで部屋を出る。
壁に背を預けると大きく息を吐いた。
―
何もなければいいが
…
。
ただ彼女の無事を祈った。
しばらくして、部屋の扉が開いた。
医者の穏やかな表情を見てそれとなく状況を察する。
話を聞けば別段異常はなく、多少の擦り傷と疲労だろうとのことだった。
しっかりと休養を取らせて、目を覚ましたら栄養のある食事を、と。
その診断にほっと息をつく。
夜分にもかかわらず駆けつけてくれた医者に礼を告げて見送り、部屋に入ると明かりを落とす。
代わりに机の上のランプに灯を点すと、椅子に腰を下ろした。
規則的な彼女の寝息が聞こえる。
歩んできた軌跡を見て、人々は彼女を英雄と称えた。
けれど私は彼女を英雄とは呼ばない。
盟友であり、恋人。
英雄と呼ばれる彼女はどんな夢を見ているのだろう。
恋人と呼ばれる彼女はどんな夢を見ているのだろう。
目覚めたら彼女はどこへ行くのだろう。
そっと頭を撫でる。
「ん
…
」
掌の下から僅かな声がした。
「すまない、起こしてしまったか?」
「おるしゅふぁん
…
?」
呂律の回らない声が名前を呼ぶ。
ゆっくりと開かれた目は焦点が合っていないようで、ぼんやりと私の方を見ている。
「あぁ、そうだ」
安心させるように声をかけるとこくりと頷いた。
目を擦りながら起き上がろうとする彼女の背中を支える。
うつらうつらとしていて、まだ完全に覚醒したわけではなさそうだ。
「おおきなとりがいたの
…
それをたおしにいって
…
」
前のめりに布団の上に倒れ込む。
もう一度眠りに落ちて行ったようだ。
再び聞こえてきた寝息がそれを物語っている。
「話は起きてからゆっくり聞かせてもらうとしよう」
大きな鳥とは、一体何なのだろうか。
アバラシア雲海に何やら危険な鳥がいるという噂は聞いたことがある。
彼女の身体を起こしてベッドに寝かせ、布団をかけ直す。
前髪を少し払い、額に口付けを落とした。
「おやすみ」
「オルシュファンは私に甘すぎ」
身支度を整えつつ、苦笑しながら彼女が言う。
倒れた日の翌日、目を覚ましてすぐに出て行こうとする彼女を医者の言葉で留めてから3日が経っていた。
持ち前の回復力もあるのだろう、傷は癒え、体力も十分に戻ったようだ。
身体が鈍るから、と昨日は軽く兵達と手合わせをしていて、彼女が雪の家にいた頃と重なって見えた。
「自分が好きな相手に甘くない人間がいるか?」
しかもそれが普段から会える相手ではないとなれば尚更。
「うー
…
」
くるりと振り返って背を向け、照れたように唸っている。
その様子がかわいらしくて思わず笑ってしまう。
本当はもうしばらくここにいて欲しいくらいだが、そういうわけにもいかない。
彼女には彼女の都合がある。
そして、私より小さな背中を見る度に思う。
一体どれほどのものを背負っているのか、と。
人々の期待、戦いの傷、英雄という名の重み
…
。
「疲れたら、いつでも帰ってこい。このドラゴンヘッドに」
寄り添って彼女の身体に腕を回す。
僅かな間でもいい。
その背を軽くできる場所でありたい。
背負っている荷物を下ろして、ただの女性に戻れる場所でありたい。
少し力を込めると彼女の手が私の腕に添えられる。
「
…
ありがとう」
腕から解放するとこちらを向き、真っ直ぐ私を見て笑う。
愛用している武器と僅かな荷物を持ち、表に出た。
「じゃあ、行ってきます!」
出かけていく彼女の姿を見送る。
迎える準備はいつでも。
どうか、彼女が歩んでいく道が光に照らされたものでありますように。
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