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Hizuki
2016-08-01 20:50:42
1852文字
Public
FF14
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蟹騒動
【FF14】エス光。コスタで起きた騒動の話。
暑い日射しが砂浜を照り付けていた。
打ち寄せる心地良い波の音が鼓膜を揺らす。
今頃はこんな素敵なロケーションでお酒を飲みながら、海鮮料理を食べているはずだった。
「来るぞ、相棒!」
エスティニアンの声で現実に引き戻される。
ひらりと身を翻し立っていた場所を離れると、『そいつ』の手が砂浜を叩き付けていた。
東ラノシア、ブラッドショア。
その海岸にごく稀に現れるという巨大蟹、キャンサー。
私とエスティニアン、そして近隣にいた冒険者や腕自慢、黒渦団の面々が対峙しているのは、正にその蟹だった。
「全く何でこんなことになるの
…
」
思わず恨みがましく呟く。
たまたまやっていたくじ引きでコスタ・デル・ソル1泊2日の招待券が当たり、たまたま非番だったエスティニアンを半ば強制的に連行し、目的地に着いたまではよかった。
水着に着替えてさぁ遊ぶかーと砂浜に出た途端、遠くから女性の叫び声が響いた。
同じように着替えて出てきたばかりの何か言いたげなエスティニアンと顔を見合わせて頷くと、手にしていたモーグリ族を模したビーチボールを槍に持ち替え、その声の方に向かった。
そこにいたのが、この巨大蟹。
蟹に睨まれ、すくんで動けなくなっていた女性を近くの岩陰まで避難させる。
元の場所に戻るとさっきの声を聞いた人達や、人づてに伝わった話を聞きつけてか多くの人が集まってきていて、その場で巨大蟹討伐のための作戦が組まれ、今に至る。
高かった太陽は傾き、辺りをオレンジ色に染め上げている。
散々暴れ疲れてきているのか、蟹の動きは大分緩やかになってきていた。
蟹の死角から火球が飛ぶ。
火が敵の腹部に直撃し、バランスを崩した。
続けて氷が足元に広がり、動きを止める。
それを好機と一斉に攻撃が叩き込まれる。
氷が割れ、砂浜に倒れたところにエスティニアンと私の槍が突き立てられる。
寸分の狂いもなく左右両方の鋏の根元を捉え、大地に縫い止める楔のように刺さっていた。
足の下で動こうとするも叶わず、がくりと鋏を下ろした。
こうして、ブラッドショアの巨大蟹騒動は幕を閉じた。
日が落ち、篝火が焚かれるようになった頃、私とエスティニアンはレストランのカウンター席に腰を落ち着けていた。
「本っ当にごめん!」
とりあえず、と軽いアルコールを注文し、一息ついたところで、エスティニアンに向かって頭を下げる。
折角の休みだったというのに、結局私が1日振り回しただけ。
息抜きにと連れ出したはずなのに、蓋を開けてみれば蟹退治で終わってしまったというこの有様。
「気にするな。あんな声が聞こえた時点でお人好しのお前が見捨てるとは思っちゃいない」
私のこと分かってるんだなと、口にはしないけれどしみじみ思う。
「それにいつ何時こんな場所、こんな状況で戦うことになるとも知れん。いい経験になった」
「
…
そう言ってもらえると助かる」
そんなやり取りをしていると、お待ちどうさん、とグラスとジョッキがそれぞれ置かれる。
「まぁなんだ、お疲れさん」
「お疲れ」
今日を労うように手にしたものを軽くぶつけ合う。
身体に染み込むのが分かるように喉を流れていった。
何杯かアルコールを空けほろ酔い気分になってきた頃、2つのスープが私達の前に置かれた。
「あれ、これ頼んだ覚えがないんですけど?」
訊ねると、今日の騒動を収めてくれた礼だ、と料理長が笑う。
美味しそうな香りが鼻をくすぐった。
一口飲んでみる。
「
…
うまい」
私が言うよりも早く、エスティニアンがそう口にした。
「本当おいしい
…
」
一体何のスープなんだろう。
多少なりとも調理をかじっている身として気になるところではある。
今度時間ができたらちょっと聞きに来ようかななんて考える。
料理長は口に合ったようで何よりだと満足そうに笑った。
「こんなもの拾ったんだが要るか?」
そういえば、と前置きをして、スープを平らげたエスティニアンがテーブルの上にそれを置いた。
「
…
貝?」
「なのか?蟹の側で拾った」
つんつんとつついてみると、ぴくりと動いた。
きょろきょろと辺りを見回し、カウンターの上から降りるとエサを探しているのか地面を探っては口に運んでいる。
「かわいい」
「
…
これ、またアレになったりしないよな?」
「さぁ
…
?」
…
二人揃って一抹の不安を覚える。
そんなことも露知らず、無邪気に小さな生き物は辺りをとてとてと歩いているのだった。
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