Hizuki
2016-07-23 11:35:04
1314文字
Public FF14
 

紅桜

【FF14】エス光というよりはエス+光。竜騎士の桜の話。3.0の時間軸、クルザス西部高地にて。竜騎士ヒカセンです。捏造あります。


ひらり、ひらり。
花弁が雪原に舞う。
蒼の竜騎士のエーテルによって形作られたそれは、風に煽られてふわりと私の手の中に収まった。
彼の戦いぶりを側で見て、彼と同じように竜騎士として槍を振るう身として、その花弁は珍しいものではない。
ただ、一つの点を除いては。

エスティニアンの桜は赤いんだね」

手の中の花弁を見て、率直な言葉が零れる。

「桜?」
「これ」

私が手の中のものを示すと、魔物を屠ったエスティニアンがそれを覗き込んだ。
エーテルで作られたそれは、程なくして大気に溶ける。

「赤いっていうのは何だ」
「人によって花びらの色が違うの。ほとんど白に近い人もいれば、はっきりと色を持つ人もいる」

元は東方の国で春先に咲く薄桃色の花。
自分自身も詳しくは知らなかったけれど、ドマの人達の話を聞いたり、本を読んだり、ウルダハで催されていたお祭りでこの桜という花を知った。
それがどういう経緯で槍術に取り入れられることになったのかまでは知らない。

「この花には噂があってね」

あまり彼には興味のないことだろうというのは察しがついていた。
けれど気にすることなく話を続ける。

「普通は桃色の花をつけるんだけど、ごく一部赤い花をつけるものがあるんだって」

ポケットから小さな巾着袋を取り出し、封をしている紐を解くと桃色の花弁が宙を舞った。

「何で赤くなるんだと思う?」

槍を振り、刃先に付いた魔物の血を払う。
真白の雪原に赤い飛沫が散った。

「血か」

雪を染めたそれを見て、エスティニアンが呟く。

「そう、桜の木は血を吸うと花びらが赤くなるんだって」
つまり、根元に埋まっていた死体の血を吸って赤くなったってことか」
「そういうこと」

槍術士の桜と関係があるのかと聞かれればそうではない。
これはあくまで東方の噂でしかない話。

「だとすれば、俺の場合は竜共の血だな」

彼が竜を狩る理由は知っている。
家族と故郷の仇。

「奴に復讐を果たすまで血は止まらんさ」

竜騎士の兜に覆われていて、表情を窺い知ることはできない。
エスティニアンの言葉通り、その時が来るまで花弁の色を濃くし続けるのだろう。

「そっか」
「お前はどうなんだ」
「え?」

まさか聞き返されるとは思わず、言葉に詰まった。
彼ほどではないけれど、今この場所に辿りつくまでに歩んできた道を考えれば、流れた血は少なくない。
そして、これから進んでいく道にも血は切っても切り離せないもの。
他の誰かの血も、自分自身の血も。

私も、赤いんだと思うよ。きっとね」
「そうかさて、お喋りはここまでだ」

もう一度エスティニアンが槍を構える。
血の臭いを嗅ぎ付けたのか、魔物の唸り声が聞こえてきた。
突然増えたクルザス西部高地の魔物を排除して欲しいとのアイメリク卿の依頼でここにいる。
二人を取り囲むように近付いてくる敵に私も同じように槍を手に取る。
彼とは反対の方向を向き、敵の姿を一通り眺めた。

「そっち側は任せたぞ」
「大丈夫、任せといて」

ウルフの遠吠えを合図に、一斉に動き出す。
再び、紅い桜が雪原に舞った。