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Hizuki
2016-06-18 01:50:32
2439文字
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FF14
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その約束は、月のみぞ知る
【FF14】エス光。3.3メインクエ某所にて。ネタバレ含みますので注意。
消灯時間を過ぎた病院はとても静かだ。
もちろん面会時間もとうに過ぎている。
この場で治療師の先生と会おうものなら怒られてしまう時間。
にも関わらず、何故そんな時間に私がここにいるのか。
それは他でもない、彼に呼び出されたからだ。
皇都を襲撃した邪竜を討ち、彼は邪竜の影から解放された。
病院での治療もほぼ済み、後は退院の日を待つだけという状況だった。
彼からアルフィノが預かってきたメモを開くと、今日の夜中が指定されていた。
極力音を立てないよう、誰にも会わないよう、彼の病室に向かう。
軽くノックして、部屋の扉を開ける。
ベッドの上で身体を起こし、窓の外を見つめているエスティニアンの姿があった。
月光が差し込み、雪のように白い彼の髪を照らしている。
素顔も、髪を下ろしている姿も、幾度となく目にしているのに、幻想的なその姿に思わず目を奪われてしまった。
「
…
どうした、そんなところにボケッと突っ立って」
「な、何でもない!」
声をかけられハッと我に返る。
からかうように笑う彼を見て、本当に帰ってきたんだと改めて実感する。
ベッドの側に置かれている椅子に腰を下ろそうとするも、エスティニアンがベッドの上を軽く叩いて示した。
いいのかな、と彼に視線を送ると、首を縦に振る。
それを見てそっと示されたベッドの縁に腰掛けた。
「こんな時間に悪い」
昼間はアルフィノがくっついてるし、夕方はアイメリクが来てるし、夜中しかなかったんだ、と。
やや煩わしそうに、それでも嬉しそうにエスティニアンは言った。
「ううん、大丈夫」
エスティニアンの様子を見に私も何度も足を運んでいる。
けれど、その時に誰もいなかったことは全くと言っていいほどになかった。
二人きり、になったのはいつ振りだろうか。
もう遠い昔のことのような気さえする。
「お前だけに伝えておきたいことがあってな」
私を真っ直ぐ見てそう言うと、再び視線を窓の外に向ける。
「俺はイシュガルドを出ようと思う」
…
何となく、そんな気はしていた。
元々竜への復讐心から戦っていた人。
その相手が倒された今、留まる理由はない。
「ニーズヘッグの奴に乗っ取られていたとはいえ、ここで暮らす人々に槍を向けた
…
もうここにはいられないさ」
彼の姿でファルコンネストに現れ、人々に恐怖を与えた。
角の折れた紅の鎧の竜騎士が、エスティニアンであることを知っていた人は私達やごく一部の人間だけであり、人々はそれを知らないはず。
とはいえ、一体どこから話が洩れるとも知れない。
民衆に牙を剥いたのは、蒼の竜騎士だった、と。
「アイメリクが何やら手を回しているようだが、俺なんぞに時間を割いていられる状況じゃないだろうしな」
戦争が終わり、人と竜が手を取り合っていく世界。
何千年と続いていく世界を築くため、現イシュガルドの教皇代理として、やらなければならないことは山のようにあるだろう。
エスティニアンの言う通り、本人の意思に関わらず個人に時間を割いている時間があるとは到底思えない。
「
…
どこに、行くの?」
胸が締め付けられる。
やっと会えたと思ったら、またいなくなるなんて。
「散っていった奴らの弔いに、だな」
少しだけほっとする。
無茶をしに行くようなら、何が何でも止めなければと思っていた。
「その後は?」
「
…
さぁな。一度故郷に戻ってみてもいいし、風に聞いてみるのも悪くない」
曖昧な答えに不安が募る。
彼が選んだ道の先に何が起こるかも分からない。
握り締めた右手がベッドのシーツに皺を作った。
「それとも、お前が俺の面倒でも見るか?」
「えっ
…
?」
エスティニアンから出た言葉は予想外なものだった。
言葉通りに受け取るなら、生活基盤を整えて、イシュガルドを出ても問題がないようにするということ。
どこかに身を落ち着けられるのが理想だけど、さすがに今すぐは難しい。
彼の故郷はなくなってしまっているから、まずは三国のどこかで宿を確保しなければならない。
竜騎士団に所属していたのだから、おそらく当面の金銭の心配はしなくていいだろう。
私だってそれなりに蓄えはある。
それから仕事が何とかなれば、やっていける。
「
…
なんてな。お前にはまだやることがあるだろう」
漠然とした案を無理やり結論まで持ち込むと、エスティニアンの声が思考を断ち切った。
確かにまだやることはある。
暁、帝国、それ以外にも。
でもそれよりも大事なのは今だった。
彼のこれからの方が。
「本当に全部終わったら、迎えに行く」
「迎えに
…
?」
エスティニアンの右手がベッドに置いた私の左手を浚う。
そしてその手を少しばかり持ち上げると、薬指に口付けを落とした。
『迎えに行く』という言葉の意味を知る。
「どうやって、探すつもり
…
?」
視界が滲んで、声が震える。
触れられた場所がじわりと熱を帯びる。
「世界の問題の中心、そこにいる」
淀みなく言い切られた言葉に違いはない。
私が今の道を歩き続ける限り、問題は付いて回る。
「お前の話はどこにいたって聞こえてくるさ」
腕を引かれ、そのまま彼の腕に包まれる。
押し付けられた布越しに聞こえる鼓動が速い。
エスティニアンらしくない。
様子を窺おうとするも、左腕で強く抱き締められて知ることはできない。
「だからそれまでは死なない。
…
いや、そこから先も」
「
…
うん、待ってる」
込められていた力が緩み、エスティニアンと視線が重なった。
流れてきた髪を払って彼の頬に手を添え、私から唇を寄せる。
「
…
いってらっしゃい」
旅立つ彼に送る言葉を。
「行ってくる」
もう一度、今度はエスティニアンから口付けが落とされた。
病院を出て、空を見上げれば闇に佇む証人の姿。
左手には何もない。
けれどそこには確かな約束があった。
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その約束は、月のみぞ知る
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