Hizuki
2016-04-28 21:01:39
1383文字
Public FF14
 

沈むは深淵、浮かぶは愛しき君

【FF14】エス光。3.2後で救出前、ヒカセンを待つニャンの話。


沈んでいく。
沈んでいく。
意識は常闇の中。
身体の主導権は邪竜に奪われ、辛うじて保っている意識はただ闇の中を漂うばかり。
時折灯る誘惑の灯が闇を照らしている。
性質の悪い邪竜の戯れか、それとも弱い自身の心が原因か、幻が浮かんでは消える。
手を伸ばしても届くことはない。
届いてもするりとすり抜けていく。
当然だ。
あいつがこんなところにいる訳がない。

家族と故郷を奪った奴に復讐を誓い、槍を握ったはずだった。
けれど、それももう自分の手では叶わない。
あの時、隙を作らなければ。
過ぎたことを悔やんでも仕方のないことだと分かってはいる。
そしてそのツケは恐らくあいつへと回った。
蛮神討伐の英雄で、同じ時代にもう一人存在する、蒼の竜騎士。
あいつならば、邪竜を討ち倒してくれるだろう。
その時には、きっと俺の意識も竜諸共消える。
同化している以上、逃れる術はない。

闇が濃度を増した。
竜の血が何やら騒がしい。
奴が動くのだろう。
邪竜が動けば、あいつも動く。
じわりじわりと意識が飲み込まれていく。

「         」

幾度となく呼んだ名が闇に溶ける。
呼びかければ、幻が俺の方を振り返った。

「俺を、解放してくれ」

今のたった一つの願い。
お前の槍で、俺を貫いてくれ。

幻が一歩ずつこちらに足を進める。
俺の目の前で背負っていた槍を抜いて突き付ける。
表情は闇に覆われて窺い知ることはできない。
お前はどんな顔をしているだろう。

もしも。
万が一にも、もう一度お前と言葉を交わせるのなら、伝えたい言葉がある。
先に言っておけばよかったと何度も後悔した。

「お前のことが――

その先は竜の咆哮に遮られ、音になることはなかった。
槍の切っ先が俺に届こうとした瞬間、色濃くなった闇が取り囲み、そこで意識は途切れた。




―――

――






竜の咆哮が天を揺らした。
それは邪竜との戦いの始まりを告げる音。
背後から微かに感じた蒼い気配に心がざわめく。
名前を呼ばれたような気がした。
振り返ってみても、そこにいるはずはない。
何か言っていたようだけど、気配が弱くて聞き取れなかった。
それだけ邪竜に支配されているとも言える。

言いたいことがあるなら、ちゃんと言えっての」

思わず文句が零れる。
竜騎士同士、言わずとも伝わる部分が多々あった。
互いに特別何かを口にした訳ではないものの、共にいる時間は自然と増えていった。
そして何も言わないまま、邪竜に奪われ今に至る。
口から出た言葉は自分にも言えることだった。

戻ってきたら、伝えたいことがあるんだ」

先に言っておけばよかったと何度も後悔した。
きっと討った竜と共に消えるとでも思ってるんだろう。
賢人達が見つけてくれた術があれば、そんなことにはならない。
手筈は整った。
もう一人の蒼の竜騎士を縛る邪竜の鎖はここで完全に崩壊する。

「あんたのことが――

言いかけて口を噤んだ。
まだ口には出せない。
この言葉を最初に聞くのは、あんたであって欲しい。
もう後悔はしたくない。

「だから、あんたも直接聞かせてよ」

轟音が響く。
先行している神殿騎士団の船の攻撃が始まったのだろう。
あと、もう少し。
彼を取り戻すための、時が動き出した。