Hizuki
2016-04-17 22:38:09
1676文字
Public FF14
 

ブラザーコール

【FF14】エス光。呼び方の話。男ヒカセンですのでご注意を。


イシュガルド・ランディングからほど近い尊者の凱旋門。
そこの腰掛けに見知った人物の姿が見えた。

「どうした、珍しく考え込んで」

俺の声に気付いた相棒が勢いよく顔を上げる。
らしくない姿だが、恐らく初めて見るその様子が気になった。

これは明日槍でも降るか?」
「オレだって考え事くらいするっての!」

少しからかってやると普段の雰囲気に戻り、こいつの隣に腰を下ろした。

「で、一体どうしたんだ」
「一応エスティニアンってオレの兄弟子になる訳じゃん?」
「まぁそうだな」

俺もこいつも同じアルベリクの元で槍を習い、竜騎士となった。
そして確かに言う通り、俺から見れば弟弟子に当たる。

「そういうのってちゃんとしといた方がいいのかなーって思ってさ」

何を気にしているのかと思えば、そんなことか。

「何を今更気にすることがある?」

冒険者が蒼の竜騎士となった。
それだけで十分な実力があると示されていて、誰かと師弟関係といったことなど意味は持たない。

「いや気持ち的にさ何て呼んだらいい?」
「別に今まで通りに呼べばいいさ」

そもそもそんなことを気にしたこともないし、気にする理由もない。
むしろ急に変わろうものなら、周りの奴らの方が何かあったのかと気にするだろう。

「兄ちゃん?んー何か違うな」

今まで通りでいいと言ったにも関わらず、相棒は神妙な顔で首を捻る。
今となっては遠い昔に呼びかけられた響きに懐かしさを覚える。

「兄貴?これだと普通すぎるか」

もし故郷がなくなっていなければ、そう呼んでくれる者がいたことだろう。

エス兄?うん、エス兄だな!」

こいつの中でしっくり来たようで、スッと立ち上がって俺の方を振り返る。
初めて呼ばれたそれに心がくすぐったくなった。

こいつが特別な存在になったのはいつの頃だったか。
かつて本気で槍を交え、負けた。
そして色々あって、こいつと旅をすることになった。
同じ時代に蒼の竜騎士が2人。
惹かれあうのに理由はなかった。

こんな大きい弟は要らないな」

立ち上がって手を伸ばし、俺よりも頭一つほど小さい相棒の髪の毛をくしゃりと撫でる。
自分達の関係を何と形容したものか言葉に迷うが、形式上の兄弟よりも深い関係にあることに違いはない。
だが、『兄』と呼ばれて悪い気はしなかった。
それは相手がこいつだからだ。
他の奴がそんなことを言おうものなら、もれなく叩き伏せている。
今後この呼び方をする者は現れないだろう。

「くれぐれも外では呼ぶなよ」
「えー何でだよー」

釘を刺せばまるで子供のような不満が飛んできた。

「表で殴られたいかお前」
「それは勘弁!エス兄が殴ると痛いんだもん!」
「あれでも手加減してる」

これは先に思い知らせておいた方が早いか。
制裁を口にして拳を見せると、身体の前で大きく手を振り拒絶の意を示す。
俺が振りかぶったのを見て、奴が素早く目を瞑った。
拳を解いて腕を引き、弟との距離を詰める。
急な行動に体勢を崩した奴の身体を支えれば、すっぽりと俺の腕の中に収まった。

俺とお前だけの秘密だ」

顔を寄せ、耳元に一言。
途端に朱に染まり、弟の顔ではなくなる。
身体を離し様子を見ていると、何度も瞬きをし、カクカクとした動きでゆっくりこちらを見た。

「え、エスティニアンてめぇ!!」

我に返った奴の叫びが辺りに響く。

「兄に対して随分な口だな?」
「そういう時だけ兄貴面かよ!」

最初に言い出したのはお前だろうに。
思わず小さな笑みが漏れた。
そして、腹の虫の間抜けな音が耳に届く。
俺のものではない。

「飯、まだなんだろ。行くぞ」

若干怒った様子の相棒に声をかけて歩き出す。
飯のつもりで外に出てきた。
向かうのは下層のいつもの酒場。

「当然『兄貴』の奢りなんだよな?」
「何か言ったか」
「いーや、別にー」

追いかけてくる足音と共に聞こえてきた嫌味は聞こえなかったことにして、相棒が追いつくのを待った。