Hizuki
2015-10-30 21:03:52
1879文字
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変身のおまじない

【FF14】オル光。2015年守護天節イベントに絡んだ話。すごく大ざっぱですが内容に触れてますのでちょっと注意。魔物になってしまったらどうする?


宙に浮く何かがドラゴンヘッドに近付いている、と夜警の部下から報告があったのがつい先刻のこと。
警戒して表に出てみれば、その『宙に浮く何か』に乗っていたのは他の誰でもない、彼女だった。
そしてその『何か』は箒という、何とも不思議なものであった。

いつもの館に招き入れ、作戦卓の上に広げられたクルザスの地図を畳んでスペースを作る。
椅子を引いて促すと、彼女はそこに腰を下ろした。
まだ時間はそんなに遅くない。
以前好きだと言ってくれた紅茶を用意すると、「ありがと」と嬉しそうに笑った。
角を挟んだ向かい側に自分も座り、彼女の話を待つ。

「今回もコンチネンタルサーカスがグリダニアに来てたよ」
「あぁ、守護天節か」

様々な話の後で、そういえば、と思い出したように言った。
カップを一口啜り、うん、と頷いた彼女の顔を見るに、何かあったのだろうというのが見てとれた。

「子供達がいなくなったって、ちょっとした騒ぎになってさ」

親の立場からすれば、それはさぞ大変なことだろう。

「お菓子で子供達を釣って変身の魔法をかけたら、もう解けない術だった、って話」
「お前のことだ、それも解決してきたのだろう?」
「まぁ、一応。さっきの空飛ぶ箒ももらえたし、結果オーライって感じかな」
「ならばよかった」

肯定の返事にほっと胸を撫で下ろした。

「しかしそのような術があるとはな

友にかけられなかったことは幸いだった。
もしも、という不安がちらりと過る。

「もし私にかかっちゃったらどうする?」

まさか本人から聞くことになるとは。
カップを持つ手がわずかに震えた。
動揺を悟られぬよう、冷静を装う。

「ふむまずはお前を見つけて、安全を確保せねばならないな。それからその魔法を解く方法を探さねばなるまい」

テーブルにカップを戻し、腕を胸の前で組んだ。
彼女を探す、これが第一だ。

「きっとオルシュファンでもわからないよ」
「大丈夫だ。たとえお前がどんな姿になったとしても、見破ってみせよう」

根拠がない、と苦笑しながら彼女が言う。
ないのならば、作ってしまえば良い。

「そしてお前はドラゴンヘッドに向かってくれ。そうすれば最悪見つけられる」

サーカスの面々がこの時期に訪れるのはグリダニア。
テレポは使えないだろうから、陸路でクルザスに向かうとなれば北部森林から来るだろう。
その道すがらで見つかればよし、見つからなくとも合流できる場所があれば。

「どうやって私だって確認するの?」
「そうだな、何か合図が必要だな」

イイ方法はないか。
魔物の姿で伝えられる合図となると、かなり限られてくる。
そうか、音だ。
音ならば、そのような状況でもどうにかできるだろう。

「普段私が座っている後ろの壁を外から叩いてくれ。そうすれば分かる」
「まぁ、それなら大丈夫だろうけど外、寒いじゃん?」
「心配しなくてイイ。冷えた身体は私がくまなく温めるからな」

席を立ち、彼女の背後に回り込む。
そして、腕を指先まで撫でそっと包めば、やはり冷え切っている。

「冷たいな」
「オルシュファンの手、温かい」

細い指の間に自らの指を滑り込ませ緩く握れば、同じように力が返ってくる。

「もう大丈夫」

しばらくして、握っている力が弱まった。
冷たいのも幾分か和らいだようだった。

「さて、そろそろ行くわ。長々とオルシュファンの仕事の邪魔するわけにもいかないし」
「気にしなくていい。本来明日片づける予定だったものだ」

中身を飲み干し、ゆっくりと彼女が椅子から立ち上がる。

「また来るね」
「あぁ、待っているぞ」

一つ、気になることがあった。

「一つだけ聞きたいことがあるのだが」
「何?」

扉に手をかけようとした彼女を呼び止めると、こちらを振り返った。
先程の話は彼女が魔物になったら、という話だった。
それならば、逆は?

「もし、私が魔物になったらどうするのだ?」

万が一にも有り得ないだろう。
だからこそ、聞いてみたくなった。

「うーん、そうだなぁ

顎に手を当て、目を閉じてうんうんと唸っている。
そして、何かを思いついたように、拳を手のひらに打ち付けた。
小走りで私の側に駆け寄ってきて、彼女の身長に合わせて屈むとそっと耳打ち。
思いがけず返ってきた答えに呆然としてしまい、その隙に彼女はするりと姿を消していた。



ドラゴンヘッドにいるみんなには悪いけど、探し出したらミニオンとして一緒に連れて歩く、かな?