ミイ
2024-10-23 21:13:24
2257文字
Public 静なつ 誕生祭
 

玖我なつき 誕生祭2024

玖我なつきさん、誕生日おめでとうございます。あなたがあなたの大切な人のそばで笑顔を浮かべることのできる日々が訪れますように。

「なつき、誕生日おめでとうさん」
「ありがとう、静留」

 出会った頃はむすっとした顔ばかりしていたなつきが、花のように柔らかい笑顔を見せてくれるようになったのは、いつからやったやろうか。照れ隠しに仏頂面をして見せるところもかいらしかったけど……素直な顔も、ほんに、かいらしなぁって思います。

 かいらしいところも、かっこええとこも、女子はんらしいとこも、時々ちょっとヘタレなとこも。どんなとこも好きで、かいらしくて。あばたもえくぼ、言うんは、本当に惚れた弱みかもしれんね、なんて。

 うちからのプレゼントを両手で受け取って、だらしなく緩めてはるほっぺたにキスを落とせば、なつきはまた、ふにゃっと頬を緩めた。……もう。そんなにゆるゆるやったら、ほっぺた落ちてしまいますえ?

 むい、となつきのほっぺたさんを掴んでぐにぐに引っ張っていれば、なつきはふくふくとまた笑い出す。

 こんなに素直なのは珍しおすなぁ。お酒飲んでる言うても……そんなたくさんは飲ませてませんし……

「静留。これ、開けてもいいか?」
「ええ。どうぞ、なつき」

 なつきはまるで子供みたいにきらきらした瞳で、紙袋の中からプレゼントを取り出した。普段はそこまできっちりせえへんのに包装紙も破らへんようにゆっくり優しく開けて。……そんなんまで大事にしてくれるんやなぁって、嬉しくなってしまう。

……指輪?」
「ええ。なつきが誰のもんか、すぐ思い出せるように。……なつきはみぃんなに人気やさかい」

 少し冗談めかして言ってみれば、なつきはふぅん、って呟いて「なぁ、静留がつけてくれないか?」ってうちの手のひらに指輪を乗せてくる。さっきの、いつもやったら突っ込んでくれるんやけど……そないに酔っ払ってしまわはったんやろうか。明日に残らんとええんやけど。

 …………なんや、今日はうちの方がなつきにペース崩されとるような気がします。

「なつき。手ぇ、出して?」
「ん」

 当然のように出された左手。どの指にするか少しの間迷うとったら。

「ここ、だろ?」

 違うのか? なんてニッと笑みを浮かべながらなつきは薬指を差し出してきた。

 ………………なつき。……そんなことされたらうちの理性が持たへんって、なんでわからんのやろ。

……なつき、あんまりかいらしことされたら、うち、我慢できひんよ」
「でも、この指だろ?」
「そう、やけど」

 ああもう。ほんに、この子は。

……やったら、そのまま」

 柄にもなく、手が震えた。だけどなつきの手があったかくて、そのぬくもりで緊張が溶かされ、ほっと息を吐き出す。そっと指に通して奥まで入れて……止まった。

「サイズはよかったみたいやね」
「静留が間違うわけがないだろう」
「あら、信頼されとるんやねぇ」

 きらきらと光るそれを、なつきは灯りに照らして、眩しさに目を細める。きっと尻尾があったら、ぶんぶん振ってはるんやろうね、なんて思うくらい、なつきの機嫌は最高潮だった。

「あれ?」
「どうしたん? なつき」

 不思議そうな顔してはるけど……ああもう、かいらし。

「静留のは?」
「うちの?」
「え、だって……

 これペアじゃないのか? なんて。

…………っ、なつき、わざと言うたはるん?」
「だって……こういうのってほら、お互いがつけるもんだろう」
…………ごちゃごちゃ考えてたんがアホらしなってきましたわ」

 本当はうちだってペアリング贈ろ思てましたけど……あまりにもわかりやすすぎるとなつきが嫌がるかもって思て。やのになつきは……

「静留? ……っ!」

 愛らしい唇に、噛み付くようにキスをする。舌でつん、と唇を突けば、おずおずと開かれるそこに自分のを滑り込ませて。なつきの味も、鼻にかかったような甘い声も全部全部堪能する。…………ああ、かいらし。

「あんたは全部、うちのもんやってわかってます?」
……っ、し、静留だって、私のだ!」
「へ?」

 息を荒げたなつきが、うちのことキッて睨みつけてきはって。……そんな顔も愛らしけど。

……お前だっていっつも、知らない女を侍らせて……私の気持ちも知らないで」
「や、あれはあの子たちが勝手に」
「で、でも……断るくらいできるだろ。この前もお前の腕に、その……
「なつき、不安になってくれたん?」
「なんでおまえ、そんなに嬉しそうなんだ」
「やぁん、堅物な恋人が妬いてくらはったんやから、嬉しないわけないやろ?」
…………もういい」

 ぷいっとそっぽを向いてしまったなつきのほっぺたを人差し指で突けば、かぷり、と甘噛みされてしまって。ぞく、と背筋に甘い痺れが走るけれど、耳まで赤くなってはるのがほんに、愛らしくて……うち、頭おかしなりそう。

「やったらなつき、お願いがあるんやけど」
……なんだ」
「うちの誕生日にこれ、欲しいわぁ」
…………っ! か、考えとく」
「おおきに、なつき」

 うちのとは真逆の、まっすぐで滑らかな髪をそっと撫でる。だいぶ酔いが回ってきはったんやろうね。うとうとと船を漕ぎ始めたなつきは、うちの肩に頭を乗せて、すやすやと寝息を立て始めた。好いた人の恋人になれて、大切な日に、隣にいられて。

 ……うち、こんな幸せでええんやろか。

「生まれてきてくれておおきにな、なつき」

 あんたに出会えたからうちは、この世界このことが好きになれたんえ。