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えぬを
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TENET
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あまい罠、華
中の人顔面パーフェクト世界一ネタ。ニールが同性にハニトラするシーンがあります、が、全く絡みません。
「あれがターゲット?」
「連続殺人鬼。もう14人犠牲になってる」
男の言葉にニールが眉を顰める。
二人の視線の先、背の高いブルネットの巻毛の男。いかにもな伊達男は、パーティ会場でも一際目立つ。周囲には若く華やかな若い女性たちが群がっている。一様に頬を染め、ブルネットの男を見つめる瞳は夢見るように輝いている。離れた場所にいる男性の中にもチラホラと視線を送る者もいる。
「男女問わず夢中にさせるほどのハンサムかな?」
「遠目だとわかりにくいが確かに──写真で見た限り相当な美形であることは間違いない」
「ふぅん」
毎朝寝ぼけ眼で鏡をのぞけば黄金率の顔が鎮座ましましているニールからすれば美の基準は自分自身だ。ニール自身は頓着してはいないが、その華やかなかんばせは男が出会った中でもトップクラスで美しい。
ギリシャの彫刻のようでいて、けれど慣れ親しんだものにだけ見せる破顔した無邪気な笑顔や甘い微笑みは何者にも変え難い。恋人の贔屓目だけではないが、時折あまりの美しさに見惚れることさえある。そう、今回のように、髭をあたり髪を整え、一級品の誂えを身に付けた時は特に。男の部下兼恋人は、時折途方もない美しさでこちらを灼きに来ることがある。なんとも眼福だ。
「狙われてるのは若く美しいブロンドヘアの持ち主で男女問わず。被害者の共通点だ」
「異常者め」
肩を竦め、ニールはパーティ会場のホールへと踏み出した。給仕からカクテルを受け取り、件の人物の視界に入る位置から流し目を送る。
ばち、と音がしたかのように視線が合って、巻毛の男は立ち去るニールの後ろ姿を舐めるように見つめていた。
ファーストインプレッションは成功。ターゲットは間違いなくニールに興味を持った。巻毛の男がこちらに向かって歩いてくる。ニールのツレだと気付いていたのだろう、にこやかに男に近づいてくる。
「あそこにいるキレーな人、君の恋人?」
ニールを後ろ手に指差しながら、巻毛の男が尋ねてくる。なるほど近くで見れば確かに美しい男だった。ニールとは比べものにならないほどに禍々しい雰囲気を放っている。紛い物の美。確かにこのうわべだけの美しさに惹かれるものもいるだろう。けれど男は特殊な環境に置かれているせいで、審美眼が遥かに高い。
「まさか。彼みたいな美人、俺が相手にされるわけないだろ?」
「んん、だろうね」
おっと容姿に限らず性格も極上という自負がありそうだ。
驕り高ぶった隠そうともしないマウンティングにいささか気分を害した男は、儚げな風情を醸して眉根を寄せた。
「
……
残念。あなたみたいなハンサムは、やっぱりああいうブロンドの美人が好きなんだね」
『
……
ちょ』
「君も悪くないと思うよ。でも俺は美しいものが好きなんだ」
耳裏にかけた小型のイヤホンから聞こえるニールの声に被って巻毛の男が酔ったように宣う。
男はひた、とダークブラウンの大きな瞳で巻毛の男を見つめた。その奥深さに見惚れ、巻毛の男がぴたりと動きを止める。
『ちょっと
……
!』
焦ったようなニールの声がイヤホンから聞こえる。
「そっか、残念。あなた、すごく魅力的だから
……
」
瞼を伏せて強請るように男が呟く。巻毛の男が目を見開いて見つめてくるのを確認し、男は手元のシャンパンを勢いよく煽った。唇の端からこぼれ落ちる雫。雫が垂れた先は、ぱん、と張った胸筋の上で、白いシャツが透け、やがて肌色が滲みだす。コントラストが酷く淫靡だ。
「あぁ、恥ずかしいな」
手を胸元に添えてから、口元へ。親指で垂れた雫をぬぐい、そのまま舐めた。ちゅ、とリップ音を鳴らし、蠱惑的な笑んだ瞳で巻毛の男を見つめる。
「酔ったみたい」
巻毛の男は呆然とその仕草に見入り、やがて頬を真っ赤にさせ、鼻息荒く男の両肩を掴んだ。むっちりとした感触に感激したように爛々と目を輝かせた。
「いや、綺麗なものも好きだけど、君も、まぁまぁ、魅力的、だね!」
焦ったように勢い込んで言うのに小首を傾げ、男は嬉しい、と再度笑んだ。
『ちょっとちょっとちょっと!!』
ニールの焦りを含んだ声に、肩を抱かれてホールを後にする男が振り返る。
整えられて秀でた額、惑うように寄せられた眉根、ブロンドのハンサムが呆然としている。
男は人差し指を口元に当てるジェスチャーで目くばせし、会場を後にした。
残されたニールは華やかな女性陣の秋波もなんのその、呆然と佇みイヤホンから聞こえる誘惑の声からの殴り倒す音、うめき声、倒れ伏す音までをしっかりと聞かされた。
『終わったぞ』
「いや僕何しに来たの
……
」
始まる前に終わってしまった任務に、ハンサムフェイスはそれでも黄金率が崩れることなく、ただただパーティ会場に華を添えていた。
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