三毛田
2024-10-22 21:42:22
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88 08. 鼓膜をふるわせて

88日目 俺を惑わせる

「穹……
「大丈夫。優しくするから」
「それは心配していない。が、体の構造は同じだとしても、機能や性能まで同じとは限らないから、その……
「無理しなくていい。嫌だったら声を上げてくれれば」
 ぎゅっとシーツを握る手を上から握り込む。
 ちゅっちゅと優しくキスをすると、少し安心したのか力が抜けていき。
 黒髪にもキスをして、上からゆっくりと肌に触れていく。
 行為の最中、俺を呼ぶ声が鼓膜を震わせて。
 それが心地よくてがっつきたくなったけど、我慢した。偉いと思う。
 結果的に言えば、俺だけが満足してしまった気がする。
『回数を重ねれば、快楽を感じることができると思う。だが、すまない。今まで縁がなかったのと、興味がなかったせいか、反応が難しい。それでも、穹が心地よいと感じてくれたならば』
 済まなそうに眉を下げ、最後の方なんかか細い声を出し。
 体の構造はほぼ同じだから、イケると思ったんだけどなぁ。
 まあ、失敗でも成功でもない。ならば、少しずつ二人で手探りでやっていくしかないのだろう。
「じゃあ、体を綺麗にして寝ようか」
「ああ」
 体を起こしてベッドを降りたところで、丹恒は床に座り込む。
「た、丹恒?」
「穹、腰が抜けた」
 思いも寄らない出来事に、呆然と俺を見上げて。
「おかしい。足に力が入らない」
 手を差し出しても、支えになるように体をそちらに寄せても。立つことができなくて。
「手を煩わせてすまない。抱き上げてくれ」
「初めてだから仕方ないって。無理な体勢をさせたの、俺だし」
「余裕だと思っていた自分がふがいない……
 ああ。
 初めてだからお互い至らないところだけなのに、一人でこうやって反省している姿がひどく愛しい。
 とりあえず、外に人の気配がないか確かめてからシャツとズボンだけ身に着け、丹恒には大判のタオルを巻きつけてシャワールームへ。
「頭の天辺から爪先まで全身丁寧に洗うから、覚悟してね」
「ああ。任せた」
 体への負担を考えて、風呂椅子に座らせて。バスタブにお湯を溜めつつ、全身を濡らす。
 まずは髪。丁寧に、頭皮をマッサージするように優しく。
 泡を洗い流したら、リンスをつけて。それから体を優しく洗って。
「こら、穹」
「えへへ」
 後ろから胸を揉んでいたら、怒られた。でも、戯れを叱るような声色。
 鼓膜を震わせる心地の良い声。
「エッチな気分に?」
「なってないが、それは今することじゃないだろう」
「そうですね」
 体の泡も洗い流して浴槽に俺より軽い体を沈める。