頻子
2024-10-22 19:04:10
3395文字
Public KODR二次
 

おかえりジャンタン(KODR)

ジャンタン×ニュートほのぼの
天界から出戻りジャンタン
(ニュートはポンコツ寄り一途)


「まあ、ジャンタン!!」
 ジャンタンは、年相応に成長していたけれど、フランコールはすぐにジャンタンのことをわかってくれた。
「ジャンタンったら、大きくなったわねぇ……
……な、泣かないでよ、このくらいでさ、もうー!」
 フランコールはスカートで目じりをぬぐった。ジャンタンが大きくなっても、フランコールはまだ大きい。それでも、ジャンタンの背が伸びたから、表情がよく見えるようになった。
「もう天界の住人でしょう? 体調は悪くないかしら? おなかは空いてない? お昼の、パイの残りがありますわ」
「だ、大丈夫だってば。もう子どもじゃないんだから。それと、なんていうか、一応、一応……念のために? もとのままっていうか……。まだ正式には、天界の仲間に入れてもらってなくって……
「あら、ニュート様ね?」
「知らないよ、あんな優柔不断バカ魔界王」
「あら……
 フランコールはふふっと笑って、ジャンタンの帽子をとりあげた。
 ジャンタンは、魔界にいたころ、ニュートとお付き合いしていたのだ。
(僕が子供だったから、ほっぺにチューしたりとか、そのくらいだったけど。けど!)
 ジャンタンが天界に帰るとなると、ニュートは引き止めもせず、ジャンタンを見送ったのだった。
 父親との再会はジャンタンの悲願だった。それはわかるけど……けど。
「どうか、ニュート様を責めないで差し上げてね。ニュート様は、ジャンタンがいなくなって、すっかり意気消沈しているんですよ。食欲をなくして、大好きなおやつも半分は残すし、お昼寝だっていらないって言って……
「変わらないじゃん」
「ええ、変わってませんのよ。魔界王になっても、ずっと、もとのままのニュート様ですわ」
……もうっ」
 ニュートは魔界王になっても、ぬるま湯魔界王なのだ。
 ジャンタンも、心配になって、わざわざ天界から降りてきてしまった。
「ニュート様なら、この時間、魔物との謁見をしていますわよ」
「石炭は増やしてないの?」
「魔物たちが放っておきませんのよ」
……たいへんそうだ。
 煌々とした明かりがお城のあちこちにくっついていて、そのどれもでオーの炎が揺れている。あれはニュート様が増やしたものだろうか。
 あたりには不気味な気配が満ちていて、ほんのりとうすら寒かった……
(あっ!)
 人目につかないところにつられているランタンが傷んでいる。ワタの抜き方が甘いからだ。かぼちゃの種が目から零れ落ちているのが涙のようだ。
 痛みかけている。
(ほんとにもう、しっかりしてほしいよね!)
 お城の地下工房でランタンを作ってきたときは、もう二度とこんなことするものか、と思ってきたけど、お仕事として、それなりにしっかりやってきていたので、ノウハウが引き継がれていないのは遺憾である。こんな仕事をする魔物は、破門だ、破門。トップも、ろくな魔界王さまじゃないに違いない。
 ……ほんとはちゃんと知ってるけど。ニュートがやさしいのは知っているけど。ニュートのことだから、魔物たちにいいようにされてるに違いなかった。それが戻ってきた理由でもある。嵌め殺しの窓ガラスを見て、映った自分の顔つきをみて、ちゃんと大人になったのを確認する。
 もし、ちゃんと、自分が誰なのか当てられたら、優柔不断を許してあげてもいい。
(ザル警備だし……

 謁見の間にはずらりとあふれんばかりの贈り物と書状が並んでいた。
 魔界王の周りを、魔物が取り囲んでいる。
「ニュート様のために、お肉とってきたんですー」
 ウルハムはニュートの周りをまわって、口からぼとっと首無し牛の死体を落とした。
(まーたあいつ……
「ニュート様。ごはん、あまり食べてないから、みな、心配してるんですよ……
 ニュートはめそめそと泣いていた。幸い、あまり相手にしていない。
 カボチャが食べたい……
 ジャンタンが大好きだったカボチャのパイが食べたい。
「カボチャか……
 うーんと、家臣たちが唸った。
(好きじゃないし! 食べ飽きてたし!)
 ジャンタンが好きなのはアップルパイだ。このあたり、気が利かないというか、テキトーである。
「ニュート、せめて何か食べたほうがいいぞ……。お見合いの話が来てるだろ? 前魔界王だって、消えてしまう前に伴侶をとってくれと言っているし……俺もニュートの晴れ姿がみたいなーっ」
 吸血鬼はなんかおっかないからヤダ。
 ベーケス2世はむっとして黙り込んだ。
(えらい。でも、吸血鬼の前でそれを言うところが0点……
 ニュートのことだから、ジャンタンがいなくなってもころっと好きな子を作って、可愛い魔物とお付き合いしているんじゃないかとも思っていたけれど。割と一途らしい。
「ニュートちゃま、元気出してくださいな♪ はい、ジュースっ」
 ゾービナスが持ってきたジュースをごくごく飲んでいる。
(うわぁ……
 すごい色のジュースだ。
 あれ、たぶん、すごくいろいろ入っている。
 このままでは、魔界王の脳みそがお砂糖漬けにされてしまう……
「まあ、ニュート様。見てくださいな。あの子ったら、ジャンタンにそっくりですよ」
(フランコールったら!)
「なんだ? 人間か?」
 ニュートはじっとジャンタンを見たが、ふるふると首を横に振った。
 ジャンタンが良い。ジャンタンが生まれ変わったら、結婚するんだ。
 ……
 魔物たちは顔を見合わせる。
(嬉しいけど! 気が長すぎるよ!)
「おい、ニュート。転生してからだと3年くらいはかかるだろ。3年も跡継ぎがいないのは困るだろ? さすがに魔物から選んだほうが……
 3年は、さすがに変態すぎる。
 そういえば、ニュート様ったら、ちっちゃいジャンタンを好きで恋人にするくらいだった。本質的に変態なのだ……
 でも、全然嫌いになれない。
 いよいよ、あの変態の相手が務まるのは自分くらいじゃないだろうか、と、また妙な方向に話を転がしていると、「転生してきたらさらってくればいいよね」と、なんか怖いこと言ってる。早めに挨拶して、結婚相手だよって言うのだ。
 ニュートの思考回路が魔物になっている。
(さすがにそれは引くし……
 ニュートは言い張る。この子がジャンタンだっていうのは、見たらすぐわかると思う。
(全然わかってないくせに……
「ダメって言われたら、どうするんですの?」
 ニュートはじわーっと目に涙をためて袖でぬぐった。
 とってもつらいけど、我慢する。
(なんでさ。なんでそこで我慢するのさ)
 やっぱり中途半端だ。人間としても魔物としても。
 新魔界なんて倒さなきゃよかった……
 ニュートの失言で、魔物たちはどよめいた。
 頑張って新魔界を倒さなかったら、ここにジャンタンがいてくれたんだ……
「失言王っ」
 ジャンタンはニュートに歩み寄っていくと、おでこをべしっとはじいた。
「こんだけ魔物がいて、誰もあんたにモノ言えてないじゃん。圧政ですよ、圧制」
 ニュートは自分のおでこを押さえて、おそるおそるとジャンタンを見上げた。
 ジャンタン……
「そうだよ。しょーがないですね!」
 ジャンタン!
 と、ニュートは歓喜すると、ジャンタンにぎゅっと抱き着いた。

***

 こうして、お城にジャンタンが戻ってきた。ニュートは喜び勇んで魔界王のお仕事にとりかかり、ジャンタンもそれを手伝っている。とりあえずは、生活がだらしなくなっていたニュートを指導し、おやつを制限し、きちんと仕事をするようにした。
 魔物たちは、最初、ジャンタンを追い出そうと躍起になっていたが、なんとなく暮らし向きがよくなったことに気が付くと、少し風当たりがよくなった。まあ、いざとなれば、噛んでしまえばいいか、という目論見を感じないでも、……ない。
 水道管がどうとかで、ピクシーに頼もうか、と言うので、ジャンタンは止めに入って、パイプの継ぎ目を修理していた。
「カボチャが終わったと思ったのに、また魔界をどうこうしなきゃいけないとか、サイアク、ほんとサイアク」
 じゃあどうして帰ってきてくれたの、とニュートがほっぺをつつきながら言った。
「だって……ニュート様が……ニュートが大好きだから!」