天(遅咲)
2020-08-29 01:38:22
1011文字
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温度(SS)

お風呂上がりの髪を拭いてあげてるなびたか

貴方は萌えが足りないと感じたら『お風呂上がりの髪を拭いてあげてるなびたか』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。
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『温度』

 お風呂を上がった時には、なびきは既にアイスを食べ終わった様子でした。テレビを見ながら、小さなあくびをしています。冷凍庫のドアを開けてアイスを取り出そうとした時には、ああもう、と呆れた声が降ってきました。
「また乾かしてない! 風邪ひくよ」
「たからは自然に任せる方が電気代の節約になると思いますが」
「へりくつ言わないの」
 洗面台からドライヤーや髪のお手入れ道具を一式持ってくるので、いつも通り手招きされたらソファに座ってアイスを食べます。隣に腰かけた彼が、タオルと一緒にドライヤーのスイッチを入れました。
「最初、少し熱いからね」
 いつも同じ忠告から始まる、彼が髪を拭いてくれるこの時間がすきです。ドライヤーは低めの温度にしてくれるし、いい匂いのするトリートメントをつけてもらうのも嫌ではなかったから。時々頬に触れる手は優しいものだし、タオルとヘアブラシはふわふわで、痛いことはしないから。それにアイスは冷たくて甘いので。
「髪伸びたねぇ。伸ばすの?」
「暑いのは嫌です」
 すぐ返事をすると、そっか、とだけ彼は言いました。長い髪はお手入れが大変だとクラスメイトは言っていましたし、夏はずっと暑くて困るのだとも。だけど、髪を伸ばせば、この時間が今より長くなるのでしょうか。それは少しだけ惹かれますが、なびきの手を煩わせるのは良くないので。
「なびきは、たからの髪は長いほうがいいですか?」
「たからちゃんは暑かったり邪魔なの嫌でしょ。長くても似合うと思うけど、短いのも可愛いよ」
 そうですか、と返して、ソーダ味を齧りました。本当は面倒でも、どちらでもいいよと、たからの意思を尊重してくれる。それならやはり、今のままがきっと良いのでしょう。たからはちゃんといい子で居たいのです、でも自分で乾かすのは億劫なので、本当はちょっとわるい子です。
「はい、おしまい」
「ありがとうございます」
 鼻歌まじりにふわふわのタオルで拭かれた髪は、お風呂上がりで水分を含んでいた時よりも、随分軽くなりました。この時間がすきだから、たからはいつまで経っても、自分で髪を拭きたくないのかもしれません。