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mado-ga-las1
2021-03-28 23:48:25
3460文字
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馬鹿と煙は輪になって(バソマン・しびし礼装ネタのパロ)
またセフレかよ…。受が舌ピしてます。ホストパロのつもりがただただいちゃついてるだけ。要素ゼロ。知識もゼロなのでファンタジーだと思ってください。尻切れとんぼなのは続きを書く気があったから(あったらスケベに入ってた)だけど、ネタの鮮度がもうだいぶ落ちてるのでとりあえずうp。
マンドリカルドには先輩がいる。
非行歴がバレて職場を追われ、二進も三進もいかなくなっていた彼に救いの手を伸ばしたのは知り合いの知り合いだった。仕事内容も碌に聞かないまま一も二もなく頷いて、気が付いたらきらきらしい内装に囲まれてやけに凝った衣装に袖を通していた。その店の、他店から移ってきてたった三ヶ月でランカーになったという男を、マンドリカルドは先輩と呼んでいる。
先輩は、何かが燃える匂いをずっと纏っている。炎、火薬、そういう頭が勝手に危険信号を出す類のものとは違うが、それらに限りなく近い。煙草の匂いは好きではない。昔を思い出す。彼はそこに、やけに甘く艶めかしい香水の匂いを重ねている。知っている匂いと慣れない匂い、そのどちらもマンドリカルドは苦手だった。
先輩の名前はバーソロミューという。
香水と煙草の香は、バーソロミューと同じベッドで眠る度に脳に絡み付いてくる。そうして、いつのまにか切り離せるものではなくなっていた。同衾の時だけは、聞かれればあの匂いを好きだと答えられるだろう、マンドリカルドはそう思っている。灼かれているのか融かされているのか分からなくなるあの感覚を、彼は確かに好いていた。
店仕舞いを終えて制服も脱いでロッカーに押し込み、裏口を出る。戸締りは確認した。そろそろと明けていく空に小汚いビル群の先が突き刺さっている。眠らないはずの街は馬鹿騒ぎにもいい加減疲れたらしく、夢から醒めたような雰囲気が爽やかな早朝の空気とよく合っていた。この空気の中を歩きたくて、敬遠されがちな店の戸締りをマンドリカルドは喜んで引き受けている。
街の外れ、右を見ても左を見てもテナント募集の貼り紙が目に入らないことは無かった。逢引き場所はその通りの道沿いにある。マンドリカルド自身はともかくバーソロミューには大事な姫がたくさんいた。先輩殿の顧客は特に割り切っている方が多い印象はあるが、とはいえ彼女らの目を眩ませ続けるのがプロというものである。万が一にもこんなところを見られ、醒めさせてしまっては互いに不幸になるだけだった。
教えられた部屋番号のドアを開けて、三分後にはベッドの上にいた。適当に私服を脱がし合いながらもつれ合って、体格差に苦労しつつ口をくっ付けたり離したりを繰り返す。 大きな手が手を掴み、指の隙間に節くれだった指が滑り込んでくる。中指に嵌った指輪同士が擦れた。金属の擦れ合う独特の感触が伝わって、背筋がぞくんと震えた。
験担ぎはする方だったから、教えられた意味に従って指輪を嵌める位置を決めた。出勤の電車内で手すりを掴んだら、かつっという音が指輪から指、指から骨、骨から脳に響いて、左手中指に嵌めたことを後悔した。内臓の底の方が熱くなって、煤と名も知らぬ香料の匂いが鼻先を掠めたような気がして、自身のものと同じ指輪を勧めてきた男を恨んだ。それなのに今日も同じ位置にそれを付けたまま仕事をして、今はこうして指を絡め合ったまま熱と唾液の交換をしている。
かしゅ、かしゅ、と擦れ合う音が止まない。もはや音ですらない、脳に直接響いてくる。いい加減頭がぼんやりしてきたので、もしかしたら気のせいかもしれないとマンドリカルドはふやけた脳味噌で考えた。
「せんぱい」
ふいに唇が解放された。やっとひと段落ついたので、べとべとの口元を拭ってからそう呼んだ。バーソロミューは微妙な顔になった。
「先輩はやめてくれ、言っただろう」
いつだったか、オンオフはきっちり区別したい、とバーソロミューが言った時、マンドリカルドを含めたキャスト一同は嘘つけ、という目で彼を見た。正確には、彼の私物である変に前髪の長いウィッグを見た。公私混同の権化みたいなものを手にして何を宣っているのか、という訳である。
考えてみれば、プライベートで同僚をセフレにしているのも変な話だ。しかしマンドリカルドとしては切られるまで続けたい関係なので、それについては一度も指摘していない。
「呼びにくいんで
……
」
「君には言われたくないな」
腰の上に乗られる。完全にマウントを取られ、思うように動けなくなる。顎に長い指が掛かり、唇を割って親指が入ってきた。
「はーふぉろみゅー、ふぇんはい」
「だから先輩は要らない」
「んぇ」
人差し指と親指で舌を摘まれ、引っ張り出される。今自分はなんとも間抜けな顔をしているに違いない、とマンドリカルドは思った。引き出された舌の、肉色をした表面には小さな銀色の球体がある。人差し指が細かな凹凸の上を滑り、なめらかな金属の表面を指先が二度ほど往復した。
舌を引き出されたせいで軽い嘔吐感がせり上がってきて、波のように引いてまた上がってきてを短い間隔で繰り返す。痛くはないが少しばかりつらかった。
「そういえば、マンドリカルド」
んぐんぐ言っていると、急に名前を呼ばれた。視線で聞き返すと舌から指が離れる。離れ際、綺麗に整えられた爪の先が軽く銀のボールを弾いていった。
「ここのピアス、他に知っている人は?」
「え、あー
……
えっと
……
」
両の黒目が上を見るように動く。記憶を探ろうとする様子を見て、バーソロミューは困ったように笑った。
「そこはこうだ。『これは君だけしか知らない。教えたのは君が初めてだ』」
とても自分が口にできるような台詞では無いように思えて、マンドリカルドは視線を逸らした。バーソロミューがくすくすと笑う。
「君のそういうところが魅力的なのだろうけど」
「
……
やめませんこの話。オンオフきっちりしたいんでしょ」
マンドリカルドは不機嫌に唇を尖らせてみせた。それでもバーソロミューは、やっぱり楽しそうに笑っている。
「確かに、無粋だったな。ああでも、ついでにこうするともっと魅力的だよ」
前髪に指先が伸びる。公私混同ではないので逃げなかったが、狭まった視界に対する不満は表情に表れていた。
「急にぶっ込んでくる
……
」
「うん
……
ふふ、良いね
……
」
ぼそりと呟いてもバーソロミューの耳には届かないらしい。知っている限りでは今日一番の笑みだった。キャストとしての彼が浮かべるものとは違う、湿度が高く熱っぽい笑み。うんうん頷いているが、マンドリカルドにはきっとどうやっても理解できない嗜好だった。秘匿された輝きの神秘性がどうこう、とバーソロミューは言うが、単純に勿体無いと思うのだ。
ありがちなところでは、瞳の輝きは星やら宝石やらに例えられる。或いは、陽光の下の海原の輝きを借りて賞賛することもできるだろう。なんとなく癪だし、何より気恥ずかしいので言わないしやらないけれど、そんなにも美しいものが仕舞い込まれてしまうのは惜しい、とマンドリカルドは思う。
「素晴らしい
……
」
うっとりした目で見つめられて、そのまま何もされない。ただただ色んな角度で堪能されている。マンドリカルドは軽い苛立ちを覚えた。鑑賞用の人形になりに来たのではないのだ。
「そろそろ良いっすね」
「あっ待って、んむ」
両手で襟首を掴んで引き寄せた。再び火と香水の匂いが強くなる。態勢を崩した上半身が倒れこんできて、包まれる心地がした。煤の匂いは退廃的で、甘さは重たい。
「ん、ぅ」
二度目は自分から甘えにいくことにした。はぷ、と音を立てて唇に噛み付き、擦り寄るように舌を蠢かせる。空気を含んだ唾液が音を立てた。舌の裏をピアスで擦られるのが好きらしい。
「ふ、ぅん、ん」
鼻にかかったような声が漏れ聞こえて、マンドリカルドは少しばかり気分が良くなった。もっと集中しろ、俺だって気持ち良くなりたいんだから。そんな気持ちでバーソロミューの首に両腕を巻き付けると、長い舌がぞろりと明確な意図を持って動いた。
「っ、うぁ、ん」
舌先で口蓋を撫でられて、ぞわぞわと痺れるような感覚が走る。頰に添えられた大きな手、その指先はすりすりと耳の裏辺りをさすっている。息継ぎの時間が惜しかった。伸し掛かる重みと体温、眼裏の暗闇が明滅して、水音と熱、融けるような柔らかさと息遣い、マンドリカルドに知覚できる世界はそれだけになっていた。キスの間はいつも、粘度の高い液体にどっぷりと浸かっているような感覚になる。
ちう、と最後に舌を吸われた。口と口が離れる時の感覚は水面に浮上する時と似ている。マンドリカルドは小さく声を漏らした。たった数センチ開いた距離を不自然に思ってしまうほどに、離れ難かった。
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