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mado-ga-las1
2020-10-15 01:52:11
5174文字
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練習
ほぼ日でできたらいいなリハビリバソマンss置き場 即興なのでほぼほぼポエムになると思う
10/14
好きだとか愛してるだとか、言われることはままあった。
あいつがそれらの言葉にどのくらいの重みを持たせているのか、俺には分からない。これから先だって分かることはない。俺が受け取りたいように受け取るしかない。
ほんとうなら俺は、そいつらをいくらでも軽く、挨拶代り程度の言葉にして、貶めることができるはずだった。俺程度の奴にそんなもん向けられるはずがない、とでも言って逃げられるはずだった。
それをしないのは、できないのは、あいつ自身を貶めたくないからだ。俺は自分を卑下するためにあいつを貶めたくないと、そう思っているのだ。
「結構好きなんじゃねえか
……
」
苦々しげな呟きに、バーソロミューが顔を上げた。何も無い午後。俺の部屋。紅茶と本に貰い物の焼き菓子で過ごす午後。
「なにが?」
答えずに、甘さ控えめのジンジャークッキーを齧る。途中で飽きた本の内容はもう一片も頭に入ってこない。サクサクいう音が頭蓋で反響する。その音で頭を埋め尽くして、甘ったるい考えを追い出したいくらいには、頬が熱くなっている自覚があった。
10/15
ふーっ、ふーっ、という獣のような息遣いが聞こえて、バーソロミューは意識を取り戻した。
まず彼は、自分を抱き締めている腕に気付いた。片腕が背中に回り、胸元に抱き寄せるようにしっかりと力が籠っている。
少し身じろぐと、離れるなとでも言うように五指が肩に食い込んだ。そのあまりの必死さに、彼は驚いて目を開けた。
見上げた先には、見知った男の血走った横顔があった。真正面にいる何かを睨みつける目はどう見ても正気ではない。錯乱しているのだ、とバーソロミューは直感した。
マンドリカルドの睨めつけている先を見ると、5メートルほど離れたところに大きな影があった。人型でないシルエットに敵性体か、と身構えようとする。そこで初めて、バーソロミューは自分の左の膝から下が無くなっていたことを思い出した。またも痛いほどの力で肩の肉に指が食い込んだ。
しかしぼやけた視界のピントが合うと、バーソロミューはほっと息を吐いた。魔獣のようなシルエットの持ち主は、同じくカルデアのマスターを戴くサーヴァントであるロボ、その乗り手たるへシアンだったからである。
マンドリカルドの放つ剥き出しの警戒心に呼応するように、ロボは歯を剥いて唸った。しかし、背に乗せたへシアンは大剣を構えず、コートの裾を変化させることもない。
戦意は無かった。ただ彼らは、マンドリカルドが向ける木刀の切先を見ているしかないのだった。今ロボが背を向ければ、たちまちマンドリカルドは折り曲げていた脚をバネのように伸ばし、ガゼルのような脚力で以て、彼らに躍りかかるのだろう。そうなれば狼王は、獣の論理で以て襲い来る人間を噛み殺す。彼自身それを分かっているからこその、膠着状態であった。『仲間』であるサーヴァントは殺さない。人理を背負うマスターに召喚されたが故の、彼なりの義理立てであった。
そんなことはバーソロミューに分かるはずもなかった。しかし彼もどうにか記憶を辿ることで、状況を理解しようとしていた。
予想外に出現したゴースト系エネミーによりマスターと分断されてから数時間。ばらばらと現れる敵はとにかく数が多かった。捌ききれなかった数体から攻撃を食らった、そこまでは覚えていた。
恐らくマンドリカルドは、ゴーストから精神異常をもらったのだろう。錯乱した彼はマスターの指示で探索に来たロボを魔獣系エネミーと誤認し戦闘体勢をとった。こんなところだろうか。
(続きものになった 残りは明日)
(10/16続き分)狼王と意思の疎通を行える自信はバーソロミューには無かった。数多の英霊と渡り合ってきたカルデアのマスターでさえ、接し方に苦労したサーヴァントである。となれば頼みの綱は人型をしている乗り手しかいないが、首無し騎士は置物のように静かに状況を静観していた。
だんまりか。口も無いのだから仕方のないことだが。バーソロミューは胸中で呟いた。舌打ちしたいような気分だった。それをぐっと堪え、傷と血の跡で汚れた横顔に改めて視線を移す。左側からのアングルに、せめて反対であれば、と考えている程度には冷静な自分を認めた。
(終わらなかった)(別の書いてた)
10/16
その刹那、やっちまった、とマンドリカルドは思った。すんでのところで身を捻り、刃を躱した直後だった。跳ねて逃げ遅れた前髪が視界の端で躍る。恋人が異様な情熱と執着を持って手を伸べてくるその部位が、ばらばらの細い線となって宙を舞い消えるのを、どこか他人事のような心地で眺めていた。
そんなことに気を取られる程度の余裕が彼にはあった。己の髪と共に漂った思考を一瞬ののちに引き戻し、大振りに振り下ろされる刃を潜って懐に飛び込んだ。
そもそも、とマンドリカルドは考える。こいつと付き合わなきゃあ、俺は前髪なんぞに気を取られたりしなかった。もっと言えば、もし別に召喚されたなら、その俺は髪が切れようが無くなろうが
―
ああでも丸刈りはごめんだな、と彼は思った
―
気にも留めないのだろう。霊体化すれば元通りだし。
伏せられた長い睫毛は、闇に溶けそうな群青の髪と同じ色をしている。あの場にこいつが居合わせなくて良かった。きっと横合いから手を出してきて、面倒くさいことになった。自らを抱き締めて眠る寝顔を見つめながら、マンドリカルドは考える。
眠気がそろそろと控えめに、だが確実に襲来を始めていた。別に召喚されたら、という仮定に思考が戻る。きっと、一瞬でも前髪など気にすることはない。切り飛ばされたのが腕や脚でなければ、大きな問題ではないのだから。しかし、そこに寂しさを覚える自分にマンドリカルドは気付いていた。同時に、こんな記憶を座まで持ち込むなんて御免だ、とも思った。
時代を大きく隔てて、それも陸ではなく海を戦場と定めた、悪党の代名詞たる海賊。その中でも名の知れた、船長として大船団を率いた男。そんなのと閨を共にした記憶などが持ち越されようものなら、別に召喚される自分とやらが泡を噴いてひっくり返ってしまう。自分でした想像で少しばかりおかしくなって、マンドリカルドはひっそりと笑んだ。それから、温い体温を共有しようと体を寄せ、今度こそ睡魔に逆らうことをやめた。
10/17
夜空には星一つ見えないが、雲は出ていない。昼であれば快晴なのだろう。何万光年の彼方から届くはずの光は、生まれてたった百年ちょっとの文明の灯りに邪魔をされていた。マンドリカルドの脳裏に直流を叫ぶライオンヘッドが思い浮かび、次いで雷霆を手にした交流博士が浮かんだ。彼らはそのまま、脳裏で喧嘩を始めた。頭上では月だけが煌煌と照っている。到着直後のマスターは月が大きい、と橙の頭を揺らして感心していた。
ビル風が吹きさらしの屋上を駆け抜けて、ジャケットの中に入り込む。思わずジャケットの前を掻き合わせた時、不意に夜風の肌寒さとは別種の悪寒が背筋から右半身にかけて走った。喧嘩を続ける発明家たちには退場を願い
――
宿敵同士の間に割って入るなど彼にとっては非常な勇気を要する行為だったが、今回の舞台は彼の脳裏であったためそう難しくはなかった
――
マンドリカルドは右側に尖った視線を向けた。コートにセーター、ジーンズといった衣装を着こなしたバーソロミューが、完璧とも言える佇まいにそぐわない、妙な熱を持った視線でこちらをじっと見つめている。マンドリカルドはわざわざそちらを見てからぶるりと頭を振った。風で乱れた前髪が視界から追い出されると、「あぁ
……
」と落胆の声が聞こえた。
「ったく油断も隙もねえな」
「気を張り過ぎるのは良くない。疲れてしまうからね。もう少し気を抜いてもいいと思うよ」
「絶対思ってないっすよねそれ」
「よく分かっているじゃないか。なにより、今は任務中だ」
「じゃあ暇潰しに適当なこと言うのやめてもらっていいっすか」
「つれないことを言うね。潜入や偵察でもないんだ、一切会話が無いというのも寂しいと思わないかい」
「思わないっすね。その方が都合良いんすよ俺には」
喋ること考えるの苦労するんすから、と口の中でぼやく。視線は既に前方の、今まさにカルデアのマスターとサーヴァントが接敵しようとしているであろう場所に向いていた。ビル群に遮られて見えないその場所を、しかし二人は眺めている。何かを待つように。
「あ、来た」
ちか、と緑の光が瞬いた。普通の人間であれば視認もできない速度で、何かが近付いてくる。
「お先に失礼」
マンドリカルドの横をバーソロミューがすり抜ける。屋上を蹴って跳躍し手すりを越え、頭から空中へ飛び込み、半回転。長い手足が宙を舞う様はサーカスの曲芸師のようだった。嫌味かよ、とマンドリカルドは呟いた。
呟いた時にはもう、マンドリカルドの体は手すりの上にあった。力強く蹴られた手すりが鈍く揺れたが、もう彼には関係のないことだった。
身を躍らせた先の眼下に幅の広い道路が広がる。脇の街灯で照らし出されたそこに、信号で止められた車たちが赤い灯火を並べていた。
それを背景にして、バーソロミューは仰向けに落ちていく。人工的な赤い光を背にした男の、浅瀬の海のような瞳がまばたきを一つ。次の瞬間、彼は現代的な衣装から一転して、アスファルトにもLEDにも不釣り合いな大海賊の姿に変わっていた。
やべ、と我知らずマンドリカルドは呟いていた。慌てて頭の中に自身の武装を浮かべ、換装を行えば九偉人の鎧が体を覆った。眼下から視線を引き剥がし、近付く緑の彗星に移す。あの青に見惚れていたなどとは、絶対に気付かれたくはなかった。
自分とバーソロミューより少し低い位置目がけて、三頭立ての戦車が滑り込んでくる。受け止められる直前に、マンドリカルドはちらりとバーソロミューを盗み見た。彼は大仰で豪奢な帽子を片手で押さえていたが、ほんの一瞬、その目だけがしっかりとマンドリカルドを捉えた。見間違いでなければ、口元には微笑が浮かんでいた。為すすべなく、マンドリカルドは喉の奥で唸った。
緑の燐光は尾を引いて、誰にも知られず誰の目にも止まらず、落下する二人の体を無事回収し、そうして走り去った。行先は街の中心部。そこではきっと、人知れず世界を救うための戦いが行われている。
10/18(10/15〜の続き)
そっと腕を持ち上げる。折れているようだったが、構わずに自身の肩を抱く手に手を重ねた。
「マンドリカルド」
でき得る限り穏やかに。晴天の下の凪いだ海を脳裏に描きつつ、呼びかける。手甲から伸びる骨張った指を、宥めるようにゆっくりと撫でる。
「マンドリカルド、落ち着くんだ。大丈夫だから」
肩に埋まった指のこわばりが少し緩んだ、ような気がした。上手くいっているのかどうか、自信はなかったが思い切って手をその顔へと伸べた。
こちらから見えるのと反対側の頬に手を当てる。手のひらにべとりと付着したのは血液だろう。
「もうすぐマスターが来る。みんな無事だ」
端的に言い切ると、『マスター』という単語に反応があった。真っ直ぐ前方だけに向いていた灰色の瞳が、初めてバーソロミューを見た。
「マスターは無事だ。だから安心して」
ふ、と灰色の水面が揺らいだ。針鼠のような警戒が解けるのが、肌で分かった。
木刀が地面に落ちる。全身の緊張が緩み、バーソロミューを抱えていた腕から力が抜けた。
「おっ
……
と」
極度の緊張が解けて、マンドリカルドはそのまま気を失った。倒れる体をバーソロミューが咄嗟に支えようとしたが、満身創痍はお互い様だった。二人は折り重なるように地面に倒れ込んだ。
ふん、と獣が鼻を鳴らす音。見えていなくても、四足の狼が踵を返しのしのしと遠ざかっていくのが分かった。
「なるべく早く、頼むよ
……
」
その後姿へと叫んだつもりだったが、声は思っていたよりずっと弱々しかった。
ほう、と息をついた途端に感じたのは眠気だった。意識が遠くなる感覚に、バーソロミューは小さく笑い声をこぼした。自分で思っていた以上に、マンドリカルドの緊張にあてられていたらしい。
全身が痛かった。けれど何より、マンドリカルドに掴まれていた肩の痛みが特別強く頭に響いていた。そこだけが、じんと熱を持っているような感覚があった。
自分の胸の上に、黒い頭が乗っている。バーソロミューはそこに手を乗せ、労うように撫でた。ちょうど、手負いの獣がつがいを守るような姿勢だった、などと考えながら。
人の声、足音、四足で走る音。それらが近付いてくるのを感じながら、バーソロミューはまどろみに身を任せた。
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