しらかば
2024-10-21 18:59:05
7980文字
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追想「望月大和・水無月舜」〜正義執行〜

望月大和、水無月舜の警察官時代の話。
世界観が本編以前で割と残酷なのでご注意。

世界観が本編以前の魔物に荒らされた時代のため割と残虐です。
苦手な方はご注意下さい。







「炎能力者?どうして騎士団じゃなくてここに?」
「市民を守りたいんだとよ」
「なんだよそれ!こんな世じゃそんな綺麗事は意味をなさないだろ!あはは!!」
 新人が能力者で、それも炎使いだとあざ笑うように広まったのは彼が入ったその日すぐの事だった。
「市民をより近くで守りたい」
 そんな綺麗事を真面目な顔で言う勇敢な彼の事を俺は気になっていた。
「誰かを、市民を守りたい」
 そう思ってもこんなクソみたいな世界で、俺には力はなかった。唯一与えられた能力は他者の心の声が聞こえるという、人間関係に罅がいくような迷惑な力。
 だから、力のない人間はそれを果たすために魔物を倒す騎士団ではなく市民に寄り添う警察官になる道を選んだ。
 故に力がありながら、俺と同じ道を選んだその後輩が気になった。


泡沫夢幻 追想「望月大和・水無月舜」
〜正義執行〜


「初めまして、本日より配属されました水無月舜です」
 噂の新人は同じ部署に配属された。
「じゃあ新人くんの教育は望月さんが適任かな」
 そして偶然にも彼の教育係は俺に回ってきた。
 暗めの青い髪を切りそろえ、エメラルドグリーンの瞳は純粋に俺を見ている。
「望月大和。宜しく」
「はい、宜しくお願いします」
 舜は俺と目を合わせた瞬間にはっとした顔を見せ、そして何もないように微笑む。
……ちょっと出てくる」
 気まずい空気から逃げるように俺は顔を反らし、外に出た。ああ、多分バレたな。俺が能力者だと。
……で、なんで着いてきた?」
「ご迷惑でしたか?皆さんが先輩に着いていくようにと仰っていまして」
 数分後。
 逃げるように外のベンチに座る俺の隣にはあいつがいた。
……まあ、いいか」
 絶対に対応がめんどくさくて俺に投げただろあいつら。俺はため息をつき、煙草を口に咥え火を着けようとして隣にいる舜を思い出す。
「平気か?」 
「あ、はい。お気遣いありがとうございます」
 許可は降りた。
 ようやく火を付け、煙草を吸いながら空を見る。綺麗な青空だ。
「望月さん、喫煙者なんですね」
「まあな」
 いつ俺の能力を問われるかと思うと恐怖しかないが、舜は俺に気をつかうのかあまり話しかけては来ない。ただ、隣にいて同じように空を見上げる。
……お前は、何故警察官に?」
 沈黙に耐えかね思わず聞かれ飽きたであろう問を投げかけたのは俺だった。
「俺は人を守りたいです。だから、魔物を倒す騎士団ではなく、市民により近い警察官になったんです」
 あいつは迷うことなく、真剣な顔ではっきりと告げる。
 本当に凄い奴だ。こんな、今にも滅びそうな魔物に壊された国で人を守りたいなんて言えるのは。
「そうか、お前は立派だな」
 俺は本心からそう言えるお前が羨ましかったのかもしれない。力がありながらそう選び、躊躇いなく宣言したお前が。
 舜は驚いたようにこちらを見ていた。
……何か?」
「い、いえ!その……望月さんは、馬鹿にしないんですね。俺の事」
「お前は馬鹿にされるような事を言ったのか?」
 馬鹿にされる?何を言っているんだ?むしろ俺はお前がすごいと感心していたところだが?
……フフッ」
 今度は笑い出す始末。よく分からないな、この男は。
「俺、良かったです。望月さんの部下になれて」
【この人も俺と同じか。能力者でありながら……市民を守りたいって心の底から思って、この道を選んだ人】 
「ーーッ!?」
 思わず俺は飛び起きた。
「あの、望月さん?」
「い、いや、なんでもない!」
 まさか、こんな時にあいつの心の声が聞こえてくるとは。どう見ても不審者だな、俺。
 


 それから、舜はしばらく俺に着いて回った。まあ俺が仕事を教える立場だし当然だが。
 この国は決して平和にはならない。魔物がいる限り、なる訳がない。
……酷いですね」 
 あいつは毎回、その喰い荒らされた街に声を失う。すっかり慣れてしまった俺達にはない感覚だった。それもすぐに消えてしまうのかもしれない、俺達と同じように。
 この国は魔物の恐怖に怯え、荒れ果てている。時には魔物の被害から奇跡的に生き残った人間と出会う事もある。そうした魔物案件は警察の管轄外、故に騎士団へと取りつなぎ、適切な対応を促す。まあ親が殺された子供を施設に送るとか、そんなところか。
 当然、そういった弱みにつけ込み火事場泥棒などといった卑劣な行為を働く犯罪者もおり、俺達はそういった悪事を取り締まる。こんな世で警察官にできることなど限られている。
 それに、全ての能力者が騎士団として魔物と戦う訳でもなく、こういう悪に手を染めていることだってある。故に、能力者とは市民にとっては恐怖の対象。決して能力を扱うなとは舜には伝えてある。
「あ、望月さん。お隣は新しい子?良かったらみかん貰って帰ってよ」
「ああ、ありがとう。みんなで分けて食べるよ」
 そしてこれも日常だ。
 街のパトロールをしている時に、人々から声をかけられる事も。
……守りたくなりますね」
「ああ、いい人たちばかりだよ。こんないい人たちが、魔物に襲われ明日にはいなくなるかもしれない……本当に、くそったれな世界だよ。それでも、俺には何も出来ない」
 思わず本音を漏らしてしまった。
「っ……
 あいつは驚いたように足を止めた。
「ああ、いや、すまない。次に行こう」
 俺は誤魔化すように足早に歩みを進めた。
 そしてしばらくして。
……って、望月さん。これは貰いすぎでは?」
 俺達の両手にはフルーツ、野菜、お菓子にジュース。
「お前は市民のあの顔を見て断れるのか?」
「いや……無理、です」
「なら諦めて持て、次に行くぞ」 
 いい荷物持ちが出来て助かったよ。
 毎回同じように困惑する舜を見ているとおかしくなってくる。ほんとに心の底からのいい奴だよ、こいつは。
「次が最後のエリアですね。とりあえずこの荷物だけ置いてきます?」
「いや、このまま終わらせてーー」
 その時だった。
 俺達の前を横切った、怪しい黒ずくめの男と、それを追う町の人。
「助けてくれ!強盗だ!」
 これが日常。
 恐らくは強盗か。盗んだのであろう大量の貴金属を入れたバッグを握り走り抜ける。仲間とでも合流するのであろうか。
「ちょっと預かってくれるか?」
 たまたま居合わせた街人に大量の荷物を預け、俺は飛ぶように走る。
「チッ、警官か!」
 そいつは何処かで拾ったのか、拳銃を突きつけた。
「それで脅しのつもりか?」
 放たれた銃弾を避け、間合いを詰める。再び放たれた銃弾より先に拳銃を抜き、その腕を撃ち抜けばその距離はゼロになる。こいつは戦いに慣れていないようだ。
【ああ、うざってえーー】 
 取り押さえるよう地に投げ飛ばし、抑え込むと男は不敵に笑う。
【まあいいや。死ねよ】 
「望月さん!!」 
 舜の声に後ろを振り向けば俺の背後には同じ身なりの男がナイフを振りかざしていた。
 
……望月さんをここで失いたくない。しかしこの距離では間に合わない。言いつけを破るようだが、やむを得まい】

 聞こえたのは低く響く、馴染みのある声。
「ーー燃えつきろ」
 男の身体は炎に包まれる。
「っ……あぁあああ!!」
 俺にナイフを振るう男は悲鳴を上げ、のたうち回る。すぐに炎は消え、その背後から舜が入れた手刀により男はその場に倒れた。
「どうして……警察官に能力者がいるんだよ!?」
 俺が取り押さえた男は震えた声で舜を見る。
「全ては正義の為、悪は許さん。それだけだ」 
 冷めた瞳を見せながら舜は俺から手錠を受け取り、その男に手錠をかける。俺はその場から離れ、入れ替わるように舜が男に手をかける。そこにいる男が俺の知らない存在に見えた。
「ああ、そうだ……他に仲間は?」
 舜は男に手を突きつけながら告げる。
「焼けて死ぬのが望みか?」
……殺さないでくれ!仲間ならいる!場所はーー」
 俺はその行動を止めることが出来なくて、思わずその場に立ち尽くしていた。
「さてと、どうやら組織的なものらしいですね。潰してきましょうか?」
 その一瞬が気の所為であったようにいつも通りの舜がそこにいた。
「いや、それに関しては上の指示を待とう。俺達の今すべきことでは無いだろう」 
 やはり戦闘能力者は戦闘になった際の安定感が違う。力とはあって損はない。それにこいつ、警察官とかもったいないだろ。騎士団の輩ほどの戦闘スキルがある訳ではない、警察官としての護身術程度しかないが能力が強すぎて魔物とか余裕で倒せそうなんだが?
 市民の味方であるはずの警察官でありながら脅して吐かせる、などと似つかわしくない行為をしたのは敢えて触れないでいてやることにした。
「望月さん、お怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ。ありがとう」 
 自由のきかない犯人から盗んだものを奪い返し、護送用のパトカーが来たところで俺はようやく一息をつく。
「あ、この荷物も一緒に頼む」
「我々はタクシーじゃないんですが?」 
 大量の土産を俺から預かった同僚に小言を言われながらもそれを見送り、再びパトロールへと戻る。
……あの、望月さんは怖くないんですか?俺は炎を使ったんですよ?」
「ああ、能力の使用についてなら黙っておくが。俺が助けて貰ったしな」
「そうじゃないです!」
 舜はなにかに怯えたように俺を見ていた。
「望月さんは戦えるような能力者じゃないんですよね。この世には能力者がいて、今の俺みたいな奴が貴方に襲いかかるかもしれない……それでも、自分を顧みずに、どうして人を助けるんですか?怖くないんですか?」
【能力者は……俺は、簡単に人を傷つけられる化け物なのに】
 能力者。
 他者とは異なる異能力の持ち主。
 それは魔物を倒すための刃であり、力のない人間から蔑まれる存在。
 俺も幾度となく当たってきた壁に、この男も当たって生きてきたのだろう。 
「ハハッ、何を今更?」
 だから俺には彼のその恐怖に手を伸ばすことが出来よう。
 それは偽善ではなく、心のどこかで彼に憧れるから立ち止まって欲しくないだけかもしれない。本心から人を救いたくて、この道を選んだ彼が。
「能力者だって俺とお前は、そして俺達と市民は皆同じ人間だろう?何を怖がる必要がある?俺達が怖がっては市民を守るなど出来ないさ」 
 もちろん、市民にとっては必ずしもそうではないだろうが。
「ほら、能力者だって感謝されて悪い気はしないだろう?みんな同じ人間だよ、舜」
 振り返れば、ありがとうございますと頭を下げる沢山の市民がいた。
……やはり貴方は凄いですね」
「いや、彼らを助けたのはお前だろう?」
「そういう意味ではないんですが……まあいいです」 
【市民に慕われ、自らを顧みずただ人を助ける為に動く人。本当に……憧れるなあ】
 そんな声が聞こえ、俺は赤くなった顔を隠すように踵を返した。
「全ては正義の為、ね……なんとなく、お前が騎士団に行かない理由が分かった気がしたよ」
 お前は、魔物から国を守るのではなく。
 この国を悪の手から守り、そこに住まう人々を守りたかったんだろうな。
 やっぱり、羨ましい。
 目の前で誰かを守る、それを叶える力があり選択を出来るお前が。 
 さてと、俺も先輩らしく一仕事しようか。煙草を吸いながら歩くとあいつは俺の隣に歩み寄る。
「で、望月さんの事ですし行くんでしょう?奴らのアジト」
 舜が脅した結果得られた、敵に吐かせた情報は上には敢えて上げていない。
「いや、俺は別に……パトロールに……
「まだお会いして日が浅い俺でも分かりますよ。俺も行きますからね、単独行動をして先輩だけが処罰されるなんて嫌ですよ」
 どうしてバレたんだ。
 市民の為に、仕事が終わった後に勝手に乗り込んでやろうと思っていたのに。 
「はあ……じゃあ今から行くか、パトロールの続きで」  
 果たして、残りの銃弾で足りるのか。
 俺はリボルバー式の己の拳銃に銃弾を詰めた。



「警察だ、抵抗は止め手を上げろ」
 そこは魔物に荒らされた場所にある倉庫だった。確かに、既に魔物に荒らされた後ならば警察官もあまり出向くまい。
 人数は……5人か。驚く事なくこちらを認識し、奴らは各々が武器を持つ。
「市民の味方がこんな所になんの用です?」
「悪いが、お前らの仲間が吐いたんでな。強盗致傷の罪で逮捕させて貰うよ」
 市民の為に引けまい。敵に対するは二人。
【どうせ彼がいれば負けねえよ】
【俺達には能力者がいる】
【ああ、今回も彼がぶっ飛ばしてくれるさ】
 なるほど、奥に控えるスキンヘッドのひときわ大きな男が彼、であろうか。
「舜、あの大男には気をつけろ。能力者だ」
 自身の能力を隠している場合でもあるまい。
「どうしてそれを……いや、了解です。万が一の時は黙秘してくれますか?」
「ああ、共犯になってやる」
 俺も、相棒を信じてやる事にする。
 抜いた武器は俺は拳銃、舜は警棒。
 襲いかかる敵に銃弾を放ち、足を撃ち抜いたところで警棒の殴打。あくまでも殺しはしない。殺人犯にはなりたくないしな。
 どうやら大男以外はそこまで戦闘に長けていないらしい。俺でもなんとか対応できる。
「さすが警官だな」
 大男が口を開く。
 それだけで背筋が凍るような、命の危険を感じるような感覚を覚えた。
「お前がボスか?」
 引いてはならない。それだけで拳銃を突きつけ、俺は口を開く。
「それが何か?」
 一瞬にして俺の身体は地に叩きつけられた。
「ーーッ!」
 痛い。
 大男の身体の筋肉が盛り上がるように膨らみ、俺の身体を押さえつける。
 舜が回り込み、死角から一撃を入れるがまるで効いていないようにぴくりともしない。ただ大男は手を軽く振るだけで彼の身体がふわりと宙に舞う。
「舜!」
 舜の攻撃のおかげで拘束の手が離れた。逃げるようにその場から離れ、あいつの元へ。牽制の為に銃弾を数発放つがまるで効いていないらしい。
「ゲホッゲホッ……!」
 口から血が出ている。
 この程度で済んで良かったと思うべきか。
【ああ、弱い奴を握り潰す感覚は堪らなくいいよな。警官を殺すってのも悪くはないなァ?】
 大男は他者を屠る感覚に昂っている。まずい、このままだと俺達は仲良くあの世行きか。
「まさか能力者が相手とは……
 どうするべきか。
 ここで捕らえる為に。  
……能力無しでやれるのもここまでか】
「望月さん」
 あいつが立ち上がり、何かを決めたように前を見据える。
「通用するか分かりませんが……いいですよね?」
 今がその万が一、と言うことか。共倒れするよりはいいだろう。
……無理はするなよ、舜」
「了解」
【正義を、執行する】 
 タン、と地を蹴る音が響いた。
「ハッ、雑魚が!お前らに何が出来る!?」
「悪を裁く事は出来る」
 男は即座に舜を捕えるべく拳を振るう。しかし伸ばした手を反射で引っ込め、顔を歪めていた。
「この、野郎が!!!!」
「ああ……言葉を取り消す事を勧めるよ。雑魚は俺達ではない。貴様の事だろう?」
 大ぶりの拳をひらりと躱し、警棒で突く。
「本来なら殺したいが、望月さんの頼みだ。火傷で済むことを喜べよ、屑が」
 その瞬間。
 一瞬にして炎は瞬き、男の身体を包んだ。
「さて。お前には多くの罪があるが……大人しく投降するなら処刑はしないでやる。どうする?」
 力の差は歴然。
 一瞬にして大男は諦め、震えた声で降参を告げた。

 
 翌日。
……本来ならうちの専門外なんですが?ああいうのは騎士団の管轄かと?」
「いや、それは、その……
「望月さん、新人に入口で待機って言ったんですよね!?仕事じゃないこと教えると困るんですよ!」
 その後。
 俺はしっかり怒られた。
 どうやら強盗犯のボスは指名手配の能力者だったらしく、どうして一介の警察官が突っ込んだのかとひどく怒られた。俺だってまさかそんな奴がいるとは思わないと言い訳をしたら余計怒られた。
「まあ、望月さんがバカみたいに市民思いなのは今に始まったことではないですけど……
 はあ、と大きなため息をつかれようやく開放された俺は煙草を吸いに外に出た。 
「望月さん」
 いつぞやのように隣に座ったのは舜。
「お怪我は?」
「ああ、大したこと無かったよ。まあそれよりお説教のがきつかったが……
「結局、望月さんが一人で怒られましたもんね。すいません」
 舜は俺に甘いコーヒーを手渡し、言葉を続けた。
「どうして俺があそこにいて、能力を使って倒したんだと言わなかったんですか?少なくとも望月さんが必要以上に怒られはしないはずですが」
 あのボスは全身軽い火傷をしている。それを俺が勝てないからヤケクソでライターで火を付けただの適当な口裏を合わせて舜のせいだと報告しなかったのは単に俺が監督不行き届きで怒られるのが面倒だからである。後にどういう調書が上がるのかは知らないが恐らくあの様子では舜の能力の話など出まい。あの時のあいつが恐ろしすぎて。
 まあ……巻き込んだのは俺だし。それくらい先輩らしいことをしただけだ。
「お前と怒られるのがめんどくさいから、以上だ」 
 そんな事はとても言えない。恥ずかしいから、適当な嘘をついた。
……ほんと、根っからのいい人ですよね望月さんって。強面な見た目と違って」
「強面って失礼だな!?」
……あの」
 舜は改まり、俺をまっすぐに見据える。
「あの時、なんで望月さんは奴が能力者と分かったのか。それって望月さんの能力が関係してますよね。誰にも言わないので俺にも教えて下さい。俺達、共犯ですよね?」 
 ああ、やっぱりバレてしまうか。
 あいつの事ばかり俺が知るのも公平ではない。諦めて言うとするか。
……あの時、奴らの心の声が聞こえたんだ。俺の能力は所謂読心って奴。市民を守りたいけど俺には魔物を倒す力がない。だからこの道を選んだ」
 バレてると知っていても、やっぱり口に出すと恥ずかしいな。
「誰にも言うなよ。俺が能力者って知ってる奴はそんなにいないから」
「了解です。俺達やっぱ、似た者同士ですね」
「ははっ、それはどうだか?」
 お前みたいにまっすぐに誰かを守れたら。
 お前の存在はほんとに心強くて、俺がいなくても市民は幸せに暮らせるんだろうなって思う。お前にはその力があるからな。
……望月さんは沢山の人を守っています。何も出来ないなんて、そんなことはありません」
 そしてその優しさは俺にも分け与えてくれるんだな。
 お前みたいな奴がいるなら、この世界もまだ捨てたもんじゃないなと思うよ。
「そうか。お前と出会えて良かったよ、舜」
「俺もです。望月さんと逢えて良かった」
 風が強く吹き抜けていく。天高く、理想を追う俺達を攫うように。

「やっぱ、俺はお前が羨ましいよ。舜」
「俺は貴方が羨ましいですよ、望月さん」
 
 自らの抱えるものすら利用して市民の為にと行動できる優しいお前が。
 誰よりも、自らを顧みず市民を守ろうと行動する貴方が。

……何か言ったか?」
「望月さんこそ。何か言いました?」
 空は今日も晴天。
「まあいいか。行くぞ、舜」
 今日も、市民を守る日常が始まる。