余りに残虐過ぎて世に事件として知られる事もないまま、噂だけが流れていく「蒼い殺人鬼」の話。出会ったらそれまでだ、残虐なまでに殺される。その殺人鬼は不気味なまでに笑顔で笑って殺しているのだそうだ。そんな殺人鬼が遂に捕まったと言う。
俺の目の前には牢。
これくらいすぐに壊せる自信はあるが生憎今の俺は四肢を鎖に繋がれ、能力封印の術まで敷かれている。要するに囚われているのだ。
お国に捕まった俺はこのまま誰にも知られず死刑が執行されるのを待つだけの存在。そんな俺に面会したいと言う人がいるらしい。可笑しな話だ、家族は俺自身が殺した。楽しくなって村人皆殺した。
だから俺を失う事を悔やむ輩もいなければ存在を知る輩もいないはずなのだ。
目の前には他の奴らとは雰囲気も違う、神々しいまでに凛とした少女が立っていた。すぐに殺せてしまいそうな、それでいて殺す事を惜しくなりそうな美しい少女。
それが俺と皇帝と呼ばれる少女との出会いだった。
「頭を垂れよ、この殺人鬼が」
少女に着いていた無数の人の誰かが言った。それに従うつもりもなく無視していると、少女が「二人にさせてくれ」と告げた。そして俺と少女は二人きりになる。勿論牢を隔ててだが。
「お前が噂に聞く蒼い殺人鬼か」
「……御名答ですよ。それを知っていてよく一人で残りましたね」
早く消えてくれ。さもなくば殺す。俺にはそれしか考えられなかった。しかし少女が俺に向ける目は恐怖ではなかった。どちらかといえば何かを俺に縋りたい感じの表情だ。こんな表情をされたことは一度もない。
「殺しは好きか」
「ええ、大好きですよ。今すぐ貴女を殺したいくらいに」
皇帝ともあらば沢山の守り人が集まるだろう。それを殺すのもまた面白そうだ。最も、今の俺には不可能だが。
目の前の少女を殺す事を考えていると、彼女はまた口を開いた。
「不老不死を殺してみたいと思わないか?」
「……は?」
そりゃ殺せるなら殺してみたいが不老不死などただのお伽噺ではないか。
「何を言い出すかと思えばそんなお伽噺を間もなく死ぬ殺人鬼に話に来たのですか?」
最も、この能力者や魔物が蔓延る世界だ。不可能とは言い切れないが。
「お前に殺して欲しいんだ、不老不死を。そして私達の因果を切って欲しい。お前のように人を純粋な心で殺す者ならばきっと殺してくれると信じてる」
少女の目は、真剣だった。
ぼんやりと考える。死なないのであれば何度も殺せる。それはそれで楽しそうだなと。
わざわざ皇帝様が直々に来て冗談を言うとも思えない。
「私と共に来て欲しい。私の従者として生きて欲しい。ここで死を待つか、生きて不老不死を殺すか。お前に与えられた選択肢はそれだけだ。朝比奈蒼」
俺には選択肢は、一つしかなかった。
「っははは!はははははは!!面白い!!貴女に仕えますよ!!殺させろ!!その不老不死とやらを!!死なないなら何度でも俺が殺してやるよ!!少なくともここでこのまま死ぬより楽しそうだしなぁ!!」
思えば、あの牢獄で俺の名を呼んだのは彼女しかいなかった。
そして正真正銘、俺の皇帝に仕える日々が始まった。
不老不死は存在するのか?
その答えだけはお伝えしておこう。
「……な、に?」
彼女に連れて行かれた先に確かに存在した。
俺が刺しても、撃っても、死なない存在が。
「紅の選んだ従者と聞いたがあの噂の殺人鬼とは。面白い……紅の従者のみでは暇だろう?思う存分殺させてやる」
確かに不老不死は存在した。
殺す方法は……追々考える事にする。
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