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ひろか
2024-10-20 23:18:09
12746文字
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観劇録
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*観劇録*『ポエム同好会』感想と考察。
おぶちゃ7周年記念公演『ポエム同好会』感想と考察です。⚠︎内容に関するネタバレと深読みを含みます。
⚠︎内容に関するネタバレと深読みを含みます。
紡げ、オリジナル。
このキャッチコピーにピンと来たのは、5月に観た『LALL HOSTEL』(通称:エルホス)でとある登場人物が言っていたセリフと似ていたからだった。
おぶちゃのキャッチコピーはどれも秀逸で大好きなのだけど、"紡げ、オリジナル。"って絶妙。その渦中にいる人間にしかわからない熱量があるんだろうなと思わせる。
おぶちゃ7周年記念公演『ポエム同好会』、(だいぶ榎本先生贔屓の)感想と考察です。
ネタバレと深読みを含みますので、苦手な方はご注意ください。
今回、主人公を演じたのは石渡真修さんと吉田知央さん。
石渡さんは2月の『Joie!』の晃輔役で記憶に新しく、吉田さんははじめましての役者さんだった。
石渡さん演じるちょっと斜に構えたような現代っ子の関と、吉田さん演じる割と暑苦しくて特徴的な話し方の権藤は、普通に高校生活を過ごしていれば関わることのないふたりだっただろう。
関わったところで絶対に仲良くなれなさそうだが、こういう二人が出会って何かが始まるところが少年漫画の王道感があって無性にわくわくした。
高校3年生というあまりにも微妙な時期に転校してきた関は、担任・韮山先生に"騙されて"入部したポエム同好会で権藤たち風変わりなメンバーと出会う。
この同好会メンバーたちがまぁクセが強くて。
それぞれの見た目、話し方、すべてが渋滞している。そんな個性が渋滞したキャラクターが4人いて、渋滞に渋滞を重ねたような環境に身を置くことになってしまった関が「これは俺の華の高校生活が残酷なまでに終わっていく話、かもしれません」と語るのも頷けるというものだった。
そう語る関を見つめる4人の立ち姿さえだいぶ面白かったのに、彼らはふとした瞬間にポエムを紡ぎ出す。
お金の貸し借りのくだりで真野拓実さん演じるマッツーと、岡部直弥さん演じる琉輝亜が揉めるのを見ていた権藤が「とりあえずセッションやろう」と仲裁に入るのも意味がわからないし、それで一旦喧嘩が終わるのもわからないし、望月雅友さん演じる志村が「それはそう」と賛同するのもわけがわからない。
斜め一列に並んで指パッチンの体勢を取る彼らのまぁ真剣なこと。何をどうしたらそんなに純粋な眼差しで指パッチンの向こう側を見つめられるんだろうか。
観客である私でさえ置いて行かれているのに、関がこの流れについていけるはずもない。
ただ、部室の隅で居心地悪そうにしている関に対して同好会メンバーたちが「関もやろうよ」「メンバーなんだし」と友好的に声をかけているのを見て、悪いやつらじゃないんだな、と思った。
思えばこの時既に、これだけわけのわからない展開が繰り広げられているにもかかわらず、彼らの青春を見守っている自分がいた。
初日を迎えるより早い段階でいろんな役者さんが「たぶん観た人みんなこいつらを好きになる」と口々に言っていたけれど、まさにその通り。疑問符だらけなのになぜか愛着が湧いてしまう感じは私にとって初のおぶちゃ作品であった『スプリング、サプ、カム。』に通ずるものがあって、その時点で私がポエム同好会の彼らを好きになるのは決定事項だったと言える。
そんな彼らに突然の廃部が宣言される。
韮山先生から話を聞く限りでは、どうやら榎本先生という人物が自分が顧問を務める部活のために部室を空けろと言っているらしい。
「榎本って仕事に私情を持ち込みそう」
「わかる」
「ダンス部の顧問とか絶対エロいから俺信用しない」
…
と散々な言われようの榎本先生は、作品の最初から最後までポエム同好会の敵として描かれることになるのだけど
……
この話は後述。
所属している部活がいきなり廃部になるかもしれないという危機的状況は、彼らでなくとも動揺し抗おうとするだろう。
けれどポエム同好会の彼らには特に、同好会を、この部室をなくすわけにはいかない理由があった。
居場所なのだ、ポエム同好会は。
先述の通り、この同好会にはちょっと風変わりなメンバーが揃っている。
側から見てお世辞にもクラスで中心にいられるような子たちではないし、むしろその言動で笑われてしまったり、馬鹿にされてしまったりする可能性のある子たちだ。実際彼らは同じクラスの女子には認識などされていないだろうと自認していたし、"一軍"とか"あっち側"とか、学校生活を謳歌している学生たちと自分たちを別のものとして見ている言葉も目立った。そんな彼らが集まって友だちと楽しく過ごし、ポエムに熱中できる、いわば安全地帯がこの部室なのだ。彼らはたしかに風変わりだけれど、大好きなポエムに並々ならぬ情熱と誇りを持って熱中する姿はどこかきらきらしていて。甲子園やウィンターカップを目指している学生たちに負けずとも劣らずの青春を過ごしているのだ。
そんな彼らからポエム同好会という居場所を奪ってしまうことは、学校という狭い世界で生きている高校生の彼らにとって、事実上の死刑宣告と同じだ。
それでも榎本先生の指摘はもっともなんだよね。
部室の無断使用も、発足以来活動実態のない状態も、彼らを廃部にするに足る理由だった。そこにダンス部を男女で分ける件が舞い降りてきたのが榎本先生的には渡りに船だったんだろうけど、ポエム同好会の彼らからしたらこれ幸いと付け込まれたような気持ちになるのもわかる。
だからといって活動として恋愛リアリティーショー
……
通称恋リア(恋愛リアリティーショーって本当に恋リアって略すの?)に参加することになるとは、いったい誰が予想できただろうか。
関の「そんなん出たら死ぬぞ!?」は大袈裟でもなんでもない。それをわかっていながら余っているならちょうどいいと「その枠ください!!」と言った韮山先生、見方によっては「体調崩しませんか」と一応案じてくれた榎本先生よりもよっぽど鬼で笑ってしまった。小谷嘉一さん演じる韮山先生、職務や生徒に誠実かと言われるとそうでもない。でもすごく親しみやすいから生徒たちには人気そうだし、岩田ちゃんのように"韮山推し"の子がいるのも大変頷ける。あの適当さが高校生という多感な時期の生徒たちには程よくめんどくさくなくていいんだよね。逆に榎本先生の姑のような厳しさがヘイトを買うのも理解はできる。
何はともあれ、女子との会話などゼロに等しいポエム同好会の面々が恋リアに出演するのはだいぶ無理がある。メンバーたちもそれをよくわかっているはずなのに、真っ先に反対しそうな権藤だけはなぜか乗り気で
……
最初はそんな権藤に対し揃って「は???」と怪訝そうな表情を浮かべていたメンバーたちが、次第に状況を理解していく時の表情の変化がめちゃくちゃよかった。権藤が言葉を発すれば発するほど"権藤はおそらくダンス部の誰かが好き"というピースが揃っていき、すべてを悟った彼らが訳知り顔になっていくのが面白くて。いくら女子との接触が苦手でもわくわくしてしまうものなのだろう。琉輝亜の「権藤
……
お前、ダンス部に好きな子いるだろ」という問いかけはもはや確信だったし、権藤の「はぁ!?!?ちっげーし!!!!」はもうほぼ肯定なのよ。わかったわかった、と言いたげなメンバーたちのカマかけに見事に引っ掛かる様子はとても微笑ましかった。不思議とそこから恋リア参加に反対する声はなくなり、むしろ恋リアに向けて合宿まで企画するのだからすごくピュアというか。一応恋リア参加という名目はあるものの、このメンバーで何かをすることに対して、関も含めて全員がどこか浮かれているように見えた。
中高6年間がっつり女子校で揉まれた私には想像することしかできないけれど、男の子ってこんな感じなのだろうか。
その反面、あまりにリアルすぎて見ていてつらかったのが女の子たちのパート。
ダンス部所属で明るく、人生が楽しそうな彼女たちは、冒頭で関が言っていた通り紛れもなく"一軍女子"だ。仲良しが集まると声のボリュームが大きくなってしまうところも、4人揃えば何をしてても楽しそうなところも、華の女子高生そのものだった。そして、陰で話している内容はほぼいじめなのにそれに気づけない無邪気な残酷さも。
「志村くんって痔なんだよ」から始まるガールズトークがあまりに陰湿で、でもそれは紛れもなく女子のリアルで、女優さんたちの"一軍女子"の解像度が高すぎて言い知れない居心地の悪さに襲われた。たぶん私この子たちとは仲良くなれないなぁ
……
。ひとりずつ見たら篠田さんはたぶん優しいギャルだし、三浦さんは裏表がなくてさっぱりしてそうだし、明世ちゃんは誰相手でも分け隔てなく話してくれそうだし、モリコなんてあまりにかわいくて私だって降って湧いた彼女の恋を応援したいくらいなのに。集まっちゃうとどうしてもね
……
。
それもまた女子の生態をよく捉えていて苦笑いするしかなかった。
この女子たち相手にポエム同好会の彼らが対等に渡り合うのは、おそらく天地がひっくり返っても厳しかったと思う。
なぜなら彼女たちにとってこの"恋リア"はあくまでバラエティーであって、ポエム同好会の彼らほど"ガチ"ではないから。軽いノリでやってる人たちと真剣にやってる人たちって、どうしても真剣にやってる側が不利なんだよね。特に高校生という"マジ"="ダサい"みたいな文化の中ではどうしてもそうなってしまう。
それでも彼らがギリ戦えるくらいまで成長したのは絵美さんの功績が大きい。
そして、クラスでは絶を使うほどなのに咄嗟に絵美さんを追いかけて引っ張り戻した志村の功績も。
「被害者を増やしてしまうかもしれない」という志村の発言、聞いた時は思わず笑ってしまったんだけど、視点としてはすごく大事だと思っていて。
当初コーチに選ばれていた力也の解説を聞いていると、男性が思う"モテる男"と女性が思う"モテる男"にはだいぶ違いがあって(これはきっと逆も然り。女性が思う"モテる女"と男性が思う"モテる女"も違うんだと思う、たぶん)、その齟齬はあまり認識されていない。というか、受け入れられていない。世に言う"勘違い男"とか"勘違い女"とかはそこから生まれた概念なのだと思う。そしてなぜか、このことについて男女ともに認識を改める気があまりないのではないだろうか。無意識に異性がこちらに寄ることを期待しているというか
……
この話を深掘りしだすと気持ち悪くなってくるのでこのあたりでやめておく。
けれど志村は絵美さんと力也の一件で認識のすれ違いに思い至り、相手の目線に立った"モテる男"を目指してポエム同好会のために土下座までする。
志村の必死さと、言っていることの世間一般的などうでもよさのちぐはぐ感がおもしろくもあり、けれどここで必死になれる志村は間違いなくいい奴だと思った。そしてこの役を9年前に演じていたのがおぶきょさんご本人なのもひどく納得した。この作品において、あまりに"おいしい役"にして"おぶきょさんっぽい役"。
そしてそこを引き継いで全力で志村を演じた望月さん、6月に拝見した別舞台では爽やかでかっこいいお兄さん役だったので、風邪を引きそうなレベルのギャップにただひたすら感動した。役者さんってすごい。
話を戻すと、絵美さんが彼らをかわいがる気持ちがよくわかる。
弟であるマッツーとのやりとりを見ていても元々とても面倒見がよくて懐の深い人なのだと思う。同好会の彼らが真剣にやればやるほど彼女も真剣に応えてくれるし、その分絵美さんから彼らへの思い入れも強くなっていくんだよね。絵美さんを演じた宮﨑想乃さん、かわいらしくてやさしげな佇まいから繰り出される容赦のない指導が最高だった。
そりゃあ元々1泊2日予定だったのに1週間泊まり込みになるし、それだけ真剣にやったのだから成果も出る。
合宿って不思議なもので、ひとつ屋根の下同じ釜の飯を食べることで生まれる妙な連帯感と信頼関係が関と権藤の間にも芽生え始めていた。互いのことがわかってきて、息が合う瞬間も増えて、でもなんだかそれが癪で
……
そんな複雑な感情が「
……
うぇい」の掛け声と不器用すぎるグータッチに滲み出ているのがじれったい。関の表情が物語冒頭と比べてだいぶ明るくなっていて、彼もまた、この空間に自分の居場所を見出し始めているんだなと思った。
挿入歌のシーン、すごく楽しかった。
あの一曲の間にポエム同好会の彼らが、ダンス部の彼女たちが、そしてクローズアップされていないすべての高校生たちが必死になって駆け抜ける青春がぎゅっと詰まっていて。それは私もかつて通ってきた道のはずで、けれど二度と戻ることはできなくて、なんだか無性に懐かしい気持ちになった。だからこそ文化祭のステージよろしく大盛り上がりを見せる彼ら彼女らのきらめきがとてつもなく眩しく見えたんだろうなと思う。
この場面、権藤が明世ちゃんと一緒に楽しそうに歌ってるんだよね。あれは権藤の理想だったのか、それとも権藤と明世ちゃんではないどこかの高校生なのか、どういう意図での演出だったんだろう。どちらとも取れるかと思ったんだけど、後々のシーンのことを考えると権藤の理想として見るほうが微笑ましさが上がるなと思った。
「お前ら1泊2日の申請だったのに7泊しただろ」。
韮山先生の指摘を聞いて、思わず客席でずっこけそうになってしまった。いやまぁ、1泊2日の合宿が
……
と言っていたのに関のモノローグが3泊目に入った時点である程度読めてはいたけれど、申請してなかったのか
……
。
そもそも部室の無断申請がひとつの原因でこんな状況に陥っているのに、目の前のことに一生懸命すぎてつくづく学ばない彼らである。この盲目さもある意味青春の成せる技だから、呆れつつも笑ってしまった。
しかしやはりそこを榎本先生が見逃すはずもなく、案の定活動停止を言い渡されてしまうポエム同好会。「榎本潰したいっす」と息巻く権藤と関だけど、本当によく考えてほしい、榎本先生間違ったこと言ってないから。
けれどここまで彼らを真剣に導いてきた絵美さんは、彼らの努力をなんとしてでも実らせてあげたいんだよね。その気持ちもわかる。結果として、榎本先生の不倫を暴くという超リスキーな作戦が決行されることになった。
そもそも絵美さんが榎本先生の不倫を訝しんでいるのは、彼女が届け物をしにきた時の堤先生との空気感が原因だ。
あの場面は一軍女子たちとはまったく別の意味で女性の怖さが出ていたと思っていて、堤先生と絵美さんの間に流れるなんとも居心地悪い空気に客席にいても思わず退席したくなるほどだった(褒めてる)。堤先生を演じた宮越愛恵さん、それまで本当に楽しそうに榎本先生と話していたのに、絵美さんが入ってきた瞬間拗ねるようなつまらなそうな雰囲気になったその変わり身の早さがものすごく女子。
同じ女子だからこそ絵美さんはその様子に気がついてさっさと退散しようとするのに、「僕もちょうど様子を見に行こうと思っていたので」とか言うあたりやはり榎本先生、女性の空気を読むのは相当な不得手なのだろう。しかしそこから「堤先生もよければ」になった時、ん?とたしかに違和感を覚えた。可能性としては、"堤先生がポエム同好会を気にしていたから"、または"理由はわからないけれど堤先生が拗ねたのを察したから"の2択かなと思ったけれど、どちらにせよふたりの関係を疑うには充分な状況。しかも榎本先生に誘われた途端に堤先生が機嫌を直して「お留守番してます」「気をつけてね」と甘えたような声音で言うのって、側から見たらドン引き案件である。絵美さんの「うわぁ
……
」と言いたげな表情はきっと、観客の内心の総意だったんじゃないだろうか。
あれだけわかりやすい匂わせでさえ、榎本先生にとってはたいしたことないのかもしれない。けれど女子というものは総じてそういう部分に勘が鋭いもので、絵美さんはふたりになにか裏の関係があることをほとんど確信に近い形で胸に秘めていたのだと思う。
その情報をもとにポエム同好会は動き出すのだけど、岩田ちゃんを取り込む時の韮山先生の色気がとんでもなくて
……
。あれ、韮山先生は無意識なんだろうな。おそらくは小谷さんの持つ色気がふと滲み出てしまっただけのように見えたんだけど、そりゃあ岩田ちゃんはときめいちゃう。
彼女の"韮山推し"の部分に付け込んで下手したら叱られるどころじゃ済まないかもしれない計画に加担させるのは決して許されることではない。教師として本当にどうかとは思うんだけど、打算がなさそうなのがタチ悪いなぁと思った。
それはさておき、韮山先生に肩を抱かれて思わずきゅんとしてしまう岩田ちゃんはとてもかわいかった。
彼女の協力も得て、あとは証拠を得るだけ。
そんな場面で権藤がこぼす「怖い」が印象的だった。
あれだけ「榎本潰したいっす」と誰よりも前のめりになってこの計画の決行を希望していたのに、いざ動くとなるとそれができない。この場面ではそれなりに付き合ってきて権藤という男をそれなりに理解できるようになっていた関が煽ることで権藤を動かすことに成功するけれど、彼のこのヘタレさは後々いろんな場面で効いてくることになる。
そもそも、あれだけ隙のない榎本先生に気づかれずに証拠を集めようとしたことがポエム同好会側の相手分析の甘さだったのだと思う。
72時間しかない状態でそこまでやるのはもちろん難しかっただろうけれど、あんなにわかりやすく気配を消して
……
それこそ絶を使っている志村でさえちゃんと女子にバレているのに、絶も使わずに榎本先生をだし抜けるわけがない。
一度彼らの前をなんてことない様子で通り過ぎた榎本先生が戻って来た時、本当に隙がないなと思った。
いくらバレバレでも、気配を消している段階で声をかければ言い逃れの余地を与えてしまう。おそらく榎本先生は、確実に彼らの計画を潰すために一旦知らないふりで通り過ぎたのだろう。そして油断してボロが出たところで息の根を止める。なんとも榎本先生らしい、学生たちから見たら卑怯なやり方。
この場面、おぶきょさんが言っていた"榎本先生の見せ場"だと思うのだけど、想像以上にかっこよかった。
榎本先生という人物は、冒頭でも少し触れたけれど終始"ポエム同好会の敵"として描かれる。
それは間違っていなくて、クラスの喧騒からは離れた場所で彼らなりの青春を謳歌するポエム同好会のメンバーにとっては居場所を消し去ろうとする存在であり、たしかに"敵"なのだ。けれど榎本先生自身の発言を振り返った時、彼は何も不当なことは言っていない。廃部にしたって活動休止にしたって、その裏には正当な理由がある。正論は時に暴力となりうるという点から考えるとものすごく横暴に映るけれど、榎本先生は決して無法な独裁者ではないのだと思う。
盗撮がバレて榎本先生に詰められるこのシーンにおいても、自分たちの居場所を守ろうと必死に戦った関や権藤の立場に立てば彼は悪なんだけれど、そもそも盗撮という手段がよくないわけで。「いくら公務員といえどもプライバシーを守られる権利があります」というセリフには、公務員ではないけれど大きな括りで同業者の私は心の中で首がとれるほど頷いた。本当にそう。
堤先生との仲を疑っているという彼らの内心を指摘し、"犯罪""職員会議で報告"と強い言葉を使って(そして見る者すべてを竦ませそうな鋭い眼差しで)関と権藤に詰め寄る榎本先生。恐喝すれすれではあるのだけど、彼らの行為は紛れもなく法に触れるものであるし、なにより榎本先生にも守るものがある。それは家族だろうし、堤先生だろうし、きれいに解釈するのなら目の前の関と権藤でもあるのだと思う。幸いにも対象が自分であったから、自分がいまここで揉み消せばふたりは咎められないわけで。榎本先生の強固な姿勢にはそういう意図もあったんじゃないだろうか。
だからこそ、権藤のスマホに本来あるはずがないもの
……
明世ちゃんの写真を見つけて彼は盛大にため息をつく。自分の盗撮よりも生徒の盗撮の方が何倍も重大事項だ。それでも榎本先生は「悪用はするなよ」と何も咎めずスマホを返す。
もしも榎本先生が、教師としての"仕事"だけに忠実な人であったなら。
または、権藤のことを何らかの視点から"問題児"として認識していたのであれば。
この場で権藤にスマホを返さないと思うのだ。
このことが公になれば、教師の盗撮よりももっと大事になってしまう。していることは基本的にストーカーと一緒で、一歩間違えば他の生徒に危害が及ぶ可能性がある以上、権藤は何らかの咎めを受けて然るべき行為だろう。
それでも彼は権藤の人間性を信じて、自分への盗撮行為とともにこの件も一緒に握り潰すことにした。握り潰したことがバレたら彼自身に害が及ぶ可能性が充分にあったにもかかわらず、榎本先生は権藤を思って隠蔽を決めたのだ。権藤がただひっそりと楽しんでいた、隠していたかったであろうその秘密を暴いてしまったことへの決まりの悪さもあったかもしれない。
もちろんこの時の榎本先生の行動は明世ちゃんのことを考えると正しかったとはいえないけれど、それもわかった上で、榎本先生自身の一存で権藤を測った結果、「悪用するなよ」と釘を刺すに留めたのだと思う。
榎本先生は悪者だろうか。
私には、彼はただ職務に忠実で、しかし生徒のためならそれを破った行動ができる、とても信頼のおける先生だと思った。
その思いやりはびっくりするほど生徒に伝わっていないようだけど、榎本先生自身はそこが伝わることを重要視していないんだろうなと思った。ただ自分が生徒のために行動できる教師であればいいと思っていそう。
実際このあと物語のクライマックスでは、制限時間をあれほど厳しく計りながらもため息をついて腕を下ろしている。あの瞬間彼がもうけた"3分"は過ぎていたんだろうな。それでもその場を必死に繋ぐ関に免じて、時計を見るのをやめたのだと思う。そのことを、あの場にいた人は誰も知らない。
だけど!不倫は!!だめだよね!!
あのふたりの真相は結局明らかにならないので憶測にしかならないけれど、あの空気感が許されるのは実は堤先生が奥さんというパターンのみだと思う。たとえ榎本先生が言うように堤先生とは何もないのだとしても、噂がたつ時点でそれはアウトです。
そもそも最後の最後のポージングを見ているとこのふたり、やはりあやしい。
話を戻すと、おそらくそんな葛藤と配慮の上でスマホを突き返された権藤には榎本先生の考えはやっぱり伝わっていない。
「俺またみんなの笑い者になるのかな」というひと言で、彼がここまで見せてきた見栄っ張りなくせに怖がりな姿に納得がいった。
彼の身に何が起こって、どう笑い者にされたのかは一切明かされないけれど、怖がるような諦めるようなその発言にどうしようもなく悲しい気持ちになった。中学生、高校生くらいの年頃って学校の世界がすべてで、無意識に右へ倣えの価値観が根付いているからこそ、そこから外れている人は徹底的に叩かれる。たとえその人が悪いことなんてしていなくても、自分が叩かれないために指をさして笑ったりのけものにしたり、青春というのはそんな残酷な世界の中で成り立っている。ポエム同好会は風変わりな彼らの居場所だと書いたけれど、ある意味彼らにとっては、風変わりでいることを許される場所でもあったのかもしれない。
あれだけ熱意を持って取り組んでいたポエムを「好きじゃねぇよ」「好きって言ってる方が楽なんだよ」と言う、それもひとつの事実だ。誰もこれまで口にはしなかったけれど、みんな心のどこかでその思いを抱えていたのだ。
けれどポエムがあったから彼らは繋がった。
部室に集まって、なんやかんやと笑って、ポエムを紡いで
……
それは「ポエムなんか最初から好きだったわけじゃない」のと同じくらい、紛れもない事実だ。
自棄になって、そして数少ない友だちのためを思って1人で消えようとする権藤を中心にして繰り広げられる大技・クロスファイヤー。彼らの絆をしっかり感じられてとても感動的な一場面、と思ったところでふと我に帰る。
クロスファイヤー、クロスファイヤーってなに???
意味がわからなくて、くだらなくて、摩訶不思議な空間で。それでも彼らが友だちを思って紡ぐ言葉のひとつひとつがあたたかくて。
その場における理屈や世間一般における重要度なんかどうでもいいのだ、と私は思い直した。ただ彼らが彼ららしく、友だちとの絆を再確認したこの場面は、やっぱり"感動的な一場面"と言うに足る場面なのだろう。
この時関が抱いていたのも似たような感覚だったかもしれないなと思う。
クロスファイヤーを見事紡ぎ切った彼らをキモいだのなんだの言いつつもそこには関なりの彼らへの親愛があった。だからこそ彼らを繋ぐポエムの絆が「俺にはない」と呟くのがとてもせつなかった。
彼もまた、過去の経験が原因で居場所を追われ、ここに辿り着いたひとりだったのだ。何があったと明確に表現されなくても、記憶のフラッシュバックのように浮かんでは消える言葉たちは確実に関の心に深く深く傷をつけていった。その言葉を言ったのはきっと、関が仲間だと信じていたこともあったであろう人たちで。あっけなく崩れてしまった関係を苦い思い出として持ち、そこから抜け出せていないからこそ、関はポエム同好会を"彼らの居場所"だと認識できたんだなと思った。
そして目の前でクロスファイヤーを見た時に彼が感じたのは、ポエム同好会の彼らと自分の間にひっそりと、しかしたしかに存在していた大きな溝だったのだろう。その孤独はきっと誰にも埋められない。たとえそれが関にしか見えない溝だったとしても。
けれどこの溝こそ、最後の最後に関が紡いだポエムに繋がってくるのだと思う。
あれだけ練習を重ねても、実際にダンス部の女子たちを前にして恋リア本番の彼らの出来は渋かった。一度は最終兵器こと志村の乱入で持ち直すも、結局かっこよさとかきっかけとか、そんなものは生まれず。
ここの志村と女子たちのやりとりも実は見ていてかなりしんどかった。陰湿な弱いものいじめを見せられているようで本当にいたたまれなくて、恋リアがうまくいかないところとあわせてすごくリアルなんだよね。
それはこれだけ好機を与えられておきながら、椅子から立ち上がれない権藤もそう。
これまでちらほらと描かれていた彼のヘタレさが、クライマックスともいえるここで効いてきてしまうのも現実的。ここでかっこよく明世ちゃんにカードを渡せるなら、権藤はそもそもポエム同好会にはいない。
あともう少しだけ、と榎本先生に食い下がった関がはじめて紡いだポエム。
それはあの日、関が初めて見たセッションと同じ出だしだった。
"窓際の僕"
"校庭のサッカーゴール"
"ぼくの人生は未だ0得点"
「だけどいつかは1得点!」
それはあの日のポエムにはなかった、関のオリジナル。
あの日は"悲しいね"と続いたポエムは、同好会の彼らから言葉を受け取った関によって"できる""やれる"と自分も仲間も鼓舞するものに変わった。不恰好かもしれない、何を言っているのかわからなかったかもしれない。それでも関が紡いだオリジナルは、彼が奮い立たせたかった権藤に、そしてきっと自分自身にしっかり届いたのだ。
「俺のチェイスがなかったら終わってたな!」と楽しそうに吐き捨てたのは、素直になれない権藤なりの"受け取った"だったのだと思う。
かくして同好会と彼らの部室は守られ、それ以降は特になんの変哲もなく日々が過ぎ去っていったのだろう。
次の場面では卒業式のあと、彼らが部室に集まる様子が描かれる。
権藤は明世ちゃんと話せていないし、
琉輝亜はマッツーにお金を返していないし、
志村の独特な間は健在だし、
何も変わらないポエム同好会がそこにいた。
恋リアは出演者の運命を大きく変える可能性があるバラエティー番組の代表格だけれど、彼らの現実はそうそう簡単には変わらない。
変わらないけれど、彼らは彼らなりにこの部室で青春を謳歌しきったのだと思った。
その瞬間、部室のドアをノックする音が響く。
そこに立っていたのは明世ちゃんだった。
「この後の打ち上げ、ポエム部のみんなもどうかなって」
「誰に連絡とかしたらいい?」
「「「
………
こいつ。」」」
誰も何も示し合わせていないのに権藤を指差すポエム同好会、最高。
何も知らずに権藤にかわいらしい笑顔を向けて「連絡するね」と去っていく明世ちゃんは大変罪作りでかわいいし、突然の出来事に表情筋が変な動き方をしている権藤はおもしろい。
友人の恋が0.5歩くらい前進したのを見てお祭り騒ぎになってしまうポエム同好会の彼らがたまらなく愛おしくて、彼らの青春に客席から立ち会えたことがとても幸せだった。
物語中盤をなぞるようなエンディングは、彼らの現実なんだよね。
合宿中の場面では権藤と明世ちゃんは仲間に囲まれ仲良さそうに歌っているけれど、エンディングでは権藤がかちんこちんで。やはりあのシーンは権藤の理想だったのかもな、と思った。理想通りにはいかなくても、現実は現実でこんなにもきらきらしていて眩しい。
この先にまだ続いていく彼らの日々を思わせるto be continue感のあるエンディング、本当に大好き。
ポエム同好会の彼らもダンス部の女の子たちも、ここに青春を謳歌しなかった者などひとりもいない。
それは彼らを見守った大人たちもそうだ。
それぞれがそれぞれの立場から、この青春をとびっきりに謳歌したのだ。
ダサくて、かっこわるくても。
この日々のきらめきはきっと、何にも代えられない"オリジナル"だ。
〈『ポエム同好会』公演情報〉※敬称略
主催:おぶちゃ
公演期間:2024年10月9日〜10月14日
会場:中目黒キンケロ・シアター
作・演出:大部恭平
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