達成不可能と言われた任務後、マーヴェリックはトップガンでの教授だけでなく、ほかのベストオブベスト達からも請われ、教官職としての立場が広がった。苦み走った顔でサイクロンが采配するのをウォーロックは達観し、あれほどの神業を見せつけられて、若き訓練生達が魅了されないはずもなく、マーヴェリックの講習は引きも切らぬ人気ぶりだ。
マーヴェリック本人は現場第一主義であることも変わらず、授業がもぬけの殻となることもしばしば。一昔前のハイスクールドラマのような熱量のそれを嗤う者は無く、師事を請う若い訓練生の羨望の眼差しの先、実績と人柄によるものだと苦々しくも理解しているサイクロンも結局は黙認している。
ブラッドリーをはじめとする任務にあたったトップガンのメンバーは、マーヴェリックとの距離の近さと親しみから、愛弟子たる地位であることを自負している。
任務完遂後、作戦に参加したメンバーとマーヴェリックで、新たな戦技マニュアルを策定するためのミーティングが定例となり、今回で4回目となる。
基地に直接参集できる者、オンラインで参加する者、任命された職務により欠席する者など、全員が揃うことはなかなかない。けれど、メンバーはマーヴェリックとの意見交換を兼ねたミーティングを心待ちにしていた。
今日もその親愛なる教官殿が馳せ参じるのを今かと待ち侘びていた、基地に参集できたメンバーの間を闊歩し、教壇に立ったのはサイクロンだった。すでに額に筋が2、3本入った怒髪天の表情で。
「ミッチェル大佐は遅刻だあんの」
野郎しめ殺してやると続く言葉が聞こえそうなほど、怒り心頭だ。同じく教室後方、ウォーロックが、苦笑しながらフォローを入れる。
「寝坊したからちょっと遅刻する、と連絡があった」
無邪気、無鉄砲、そして、大空に愛された初老が遅刻。
〝いい年して何してんの〟、と呆れる者、その言い訳に笑う者と、メンバーの反応もそれぞれだ。馬鹿正直に『寝坊』だなどと連絡してくるマーヴェリックにも呆れる。
代わりを務めるとサイクロンが宣言した途端、メンバーの背筋も伸びる。ある意味特別公演ともなるそれは、マーヴェリックの実地とは異なるものの、実直でありながらその裏熱意を秘めたサイクロンを知る若いメンバーからはマーヴェリックの授業とは異なる熱心さで持って歓迎された。
サイクロンの特別講義が始まって数十分後のことだ。
室外をばたばたと走る音が部屋の手前で止まり、静かな足音へと変幻し、後方のドアが静かに開いた。マーヴェリックだ。ウォーロックが一瞬目を見開いて、すぐに顔を逸らした。わずかその口角が、耐えきれずと言った感で笑っていたことに気付いた者はいない。
数名が振り返った先、遅刻してきたレジェンドは、何故かフライトジャケットを着込んだまま。
「遅くなってすまない。中将、代理をどうも」
皆の視線は一様にフライトジャケットの腹部に注がれている。それを見たハングマンは堪えきれず、デスクに突っ伏して肩を震わせ笑っている。備え付けのデスクの端を握るサイクロンの手の甲に血管が浮き上がり、デスクはみしりと音を立てた。サイクロンの暗雲を背負った背景をさして気にも止めず、ゆうゆうと教室の真ん中を進むマーヴェリックは威風堂々としていてまるで初日の登場のごとくだった。
しかし、誰が最初にその違和感に対して声をかけるか。無言の圧力が室内からも、モニタ越しからもブラッドリーに飛ぶ。
ーーやっぱ俺かよ。
ため息をついたブラッドリーは、真横を通ったマーヴェリックに向けて疑問を呈する。
「マー……じゃねぇ、ミッチェル大佐、あの、その、腹。どうしたんすか」
よくぞ聞いてくれましたとばかりにマーヴェリックがブラッドリーを振り返る。
「た、たべすぎた!」
「ぶっは」
遂に耐えきれずハングマンが吹き出す。それをひと睨みして、サイクロンはマーヴェリックを指差した。主にその、大きく膨らんだ腹部を。
「ミッチェル大佐、遅刻の理由は寝坊ではなく食べすぎか?」
「えー、あーなんていうかその「わぅん!」」
メンバーからは、教師に叱られる生徒のような様相のマーヴェリックの後ろ姿が見えているだけだ。そのマーヴェリックの声にかぶさるように、鳴いた声の主は。
サイクロンがマーヴェリックの一点を見つめて固まった。
それぞれのデスクやモニタから成り行きを見守っていたメンバーに向かって、マーヴェリックが振り返る。その、フライトジャケットの腹部がもぞもぞと動き出し、ジジ、と音を立てて、マーヴェリックが首元まで上げていたジップアップが勝手に下がる。
「ゎふ」
マーヴェリックの懐から顔を出したのは、可愛らしい一匹の子犬だった。
+++
「ここに来る途中で見つけたんだ」
授業は中断、マーヴェリックの周囲にはブラッドリーをはじめとしたメンバーが集まり、モニタ越しにの参加メンバーは、身を乗り出すような仕草をする。皆が皆、マーヴェリックの腕の中の可愛らしい子犬に夢中だ。
『……捨てられてたんですか?』
オンラインで参加していたファンボーイが、モニタ越しに不安げな言葉を投げかける。メンバーが一様に思っていたことだ。
「……僕の住処から続く、長い道路を単独冒険中だった。勇敢だね。目的地がどこか分からないけれど、流石に遠いだろうからタンデムに誘ってみた」
つとめて明るくマーヴェリックが宣言するも、オブラートに包んだ言葉とて、おそらくは捨てられていたのだろう子犬だ。長い道路の途中で非情にも捨てていかれたのだろうと、皆が察する。しんみりとした雰囲気の中、フェニックスが子犬を覗き込んだ。
「ハイ、ハニー。長旅にも関わらず元気そう。会えて嬉しい。私はフェニックス」
怯える様子もなく、フェニックスの言葉に丸い目を開いて舌を出し、子犬は興味深げにメンバーを窺っている。
「大佐、お腹空いてません?」
「!、あぁ、すごく空いてる!そういえば朝食を食べていなかった!」
フェニックスの声がけに、マーヴェリックが大袈裟な演技で頷く。
ちらりとその場にいる全員がサイクロンをふり仰いだ。
「空腹なミッチェル大佐のための時間が必要だよね」
『今の時間帯、そっちの食堂開いてるかな?』
「ミルクくらい分けてもらえんだろ」
『ビーグルって何食うんだ?』
「犬種に詳しいね」
『知り合いの家で飼ってて』
講義どころではなく、マーヴェリックと子犬に夢中なメンバーを、少し引いたところで傍観しながら、いつサイクロンの雷が落ちるかとブラッドリーは距離を測りかねる。
「名前!名前はどうしようか!」
ボブの言葉に、子犬の瞳の色や毛色から候補が上がる。
「名前など付けるもんじゃない。飼うと心を決めて、最後まで責任を負えるのか?できないのならば愛着が湧く前に手放さねば」
発言の主を皆が振り返る。サイクロンだった。ウォーロックのモバイルを覗き込んで、諭す。
「アニマル・シェルターに知り合いがいる。すぐに連絡を取ろう」
以外にも穏やかな声で告げたサイクロンが、メンバーの間を通り、マーヴェリックが抱く子犬を覗き込む。
「……賢そうないいい顔をしている。元気そうでよかった。人間の身勝手に付き合わされて拾われた先がまさかこの男とは」
「意外と犬好きですか?中将」
「やかましい。〝彼女〟と遅刻の件は別だからな」
ひと目で雌雄を見極めたサイクロンはやはり犬好きのようだ。てっきりお咎めありきと思っていたマーヴェリックは、心底意外そうにサイクロンに余計な一言を含んで聞き返してしまう。
「そういう時は謝意のみでいい」
後方からため息と共にウォーロックのフォローが入る。
「イエス、サー。でもその辺、彼らも興味津々みたいですけど」
サイクロンの救いの手と、意外な面を見たメンバー達の目に晒されながら、サイクロンはアニマル・シェルターについての特別講演を、ほんの数十分だけ行わざるを得なかった。
+++
「それで俺んち?」
「すまないブラッドリー、流石に僕の住むところまで彼女を連れて帰るのは酷だし、中将の連絡があるまで君のところで預かってもらえないだろうか」
先方からの連絡は早くて1週間はかかるとサイクロンが言っていた。運が良ければ早々に飼い主が見つかる、とも。
飼育のための用品を全て揃える時間もなく、マーヴェリックのトレーラーハウスなどもってのほかだった。
マーヴェリックはペニーの家も考えたが、飲食の商いをする彼女の家は衛生面からも避けたい。また、アメリアが子犬を手放しがたく思うようになっても困る。
引き取り手なく保護が長引いたならその時はその時だ。ただ、現状の保護先として最適なのは、庭付き一軒家であるブラッドショーハウスが第一候補となる。
正直なところ、ブラッドリーは子犬を預かること自体には、なんら不満はなかった。不満があるとすれば、マーヴェリックが未だ遠慮し、子犬を預けて自分が帰ろうとすることだ。
そもそも、懐に子犬を抱いたまま、無意識に上目で強請られたのなら、ブラッドリーは断れるわけがない。子犬のつぶらな瞳と稀有なグリーンアイズの相乗効果たるや。
ーーかわいいがダブル。
若干お花畑寄りな思考回路から我を取り戻し、空咳をしてブラッドリーはマーヴェリックに向き直った。
「預かる条件。あんたが泊まって世話して」
「……ブラッドリー、それは」
「今夜と明日くらいいいでしょ。拾ったのはマーヴなんだし、夜中に子犬に何かあっても二人いた方が安心だろ?」
ブラッドリーは正論をぶつけて逃げ道を塞いだ。逃げ腰のマーヴェリックは、ブラッドリーを警戒しているというよりも、どう返答すべきかという思案顔だ。
ブラッドリーからのボディタッチに色がついたことに、眼前のレジェンドは気づいている。そもそも色恋の噂の絶えない美丈夫だ。ブラッドリーは敢えてわかるような触れ方をしているのだから、気づいて当然だ。マーヴェリックは流してばかりだが。
だから、マーヴェリックは二人きりになることを避けていたし、明確な言葉を告げられることを警戒している。マッハで距離を縮めてしまった自覚がブラッドリーにもマーヴェリックにもある。恐らく世界で一番甘く接した少年に憎まれ、衝突し、命を救い救われ、和解後気付けばやたらといやらしい触れ方をされるなど。
マーヴェリックの美貌は年経ても健在で、燻されたセクシーさとキュートさを備え持つ初老だなんてとんでもない、とブラッドリーはつくづくに思う。命懸けで自分を庇う愛情の深さを知ってしまったし、ブラッドリーが同じく命をかけて敵陣に戻ったのも、翻ってつまりはそういうことだ。
マーヴェリックは下世話な意味でのあからさまな視線を受けたことは、過去多々あっただろう。昔の写真をひとめ見ればわかる。華やかな容姿に加え、負けん気強く生意気で、それでいて女性にめっぽう弱い。同性からの誘いだって引きも切らずあっただろう。
マーヴェリックの表面的な健やかさの内にある深層は、長く喪に服したままで、ふとした瞬間に翳りを見せる。魅せられて引き寄せられるものは、灯りに群がる羽虫の如く、身を焦がして散っていくだけだ。
マーヴェリックの真の心の内側を知る者はほとんどいない。いなくなってしまった。
その、一見朗らかに見えるマーヴェリックの複雑な内面までも、今のブラッドリーは理解できる。
ーーすごく器用で不器用な人だ。
そんな複雑怪奇なマーヴェリックにとって、ブラッドリーはスペシャルなのだ。そのはずだ。
「とにかく入って。レディだってお腹空いてるだろうし」
「よかったな、マイガール。ステイ先の家主は紳士だ」
戯言で交わす距離感の会話も、結局どこか緊張感を伴っているのだ。マーヴェリックは子犬がいてよかった、などと思っているだろう。
ブラッドリーはマーヴェリックが購入してきたドッグフードの準備と、自分達の簡単な食事を作る。マーヴェリックは子犬のための快適な住まいを作ろうとするも、どうも彼女は拾い主に似て自由気ままらしい。囲いを作ってもそれを破壊し易々と飛び出してマーヴェリックに飛びついてくる。なんとも微笑ましく、マーヴェリック自身もその健気さに根負けしているようだった。
「マーヴ、そんなかわいがって大丈夫?すぐに彼女とお別れなんだよ?」
「わかってる、大丈夫さ。別れには慣れてる。おっとこれは失言か」
「あんたが失言だと思えるだけマシだよ」
マーヴェリックは愛情の出し惜しみをしない。そのくせ簡単に手放してしまう。自らの生い立ちと重なる部分を、ブラッドリーは鍋をぐるぐるとかき混ぜるのと同じくらいにぐるぐると考えた。皮肉に皮肉で返す軽妙さに、真実マーヴェリックは子犬をすぐに手放すのだろう。あれだけ可愛がっておきながら、明確に線引きをするのだ。
それでいて、鍋をかき回すブラッドリーの真横に、片手に子犬を抱いて、片手でセルフォンをいじりながらマーヴェリックが並び立つ。
ーー距離が近いんだよ。そういうとこだよ。
ブラッドリーは意識せずとも産毛が総毛立ち、ちりちりとそこがひりつくような心地を味わった。少し腕を動かすだけで触れそうな距離に、マーヴェリックは平気で近づいてくる。メッセージ送り返したらしいマーヴェリックは、セルフォンをポケットに仕舞うと、のんびりと鍋の中を覗き込んできた。
ブラッドリーは不意に思い立って、鍋をかき回す木べらを左手に持ちかえ、空いた右手で隣に立ったマーヴェリックの腰を抱いた。マーヴェリックの体が、面白いほどに跳ねた。それに、ブラッドリーはいささか胸のすく思いがするのだ。
マーヴェリックは腕に子犬を抱いたまま、ブラッドリーの腕を振り払うことができないからこそ、仕掛けた行為。
「……ブラッド、この、腰の、君の手、必要か?」
「マーヴの腰がちょうどいい位置にあるから」
「……君、なんていうか……あのな、ブラッドリー」
「〝僕はもういい年したおじさんで〟、〝君にはもっといい相手が〟だろ?それ何回言うの?言わないで」
「むりだ、だって」
「だってじゃなくてさ。まず俺の話しを聞いてくれよ」
ブラッドリーは、火を止めてマーヴェリックの腰を抱いたまま向き直った。
「作戦時マーヴは俺を庇ったろ。それは父さんの死に係る後悔?俺の願書を捨てたことへの懺悔?ブラッドショーファミリーへの罪悪感なの?」
「ちがう、ぼくはただ、お前を守りたくて」
「だろ?わかってるよ。でもさ、マーヴがあの時死んでたら、俺もずっとマーヴと同じ思いを抱えながら生きていくことになるって理解してた?してないだろ?」
「君だって僕を助けにきたくせに……」
「だからウィンウィンだろ」
「足りない。僕の方が全然足りない。その上君の心までもらうのは割に合わない」
「この演算脳め……じゃあ罪悪感が薄くなるくらい俺といたらいいじゃん」
「……背徳感で僕が死ぬ」
「おじさんは面倒臭ぇな」
「君だって充分おじさんだろ!」
「そうだよ、おじさんだ。かわいいブラッドリーはもういないよ、マーヴ」
「ぶら、」
ブラッドリーはそのままマーヴェリックの唇に、自らの唇を近づけた。
寸前で止める。
視線を合わせた。
マーヴェリックも同じく、さまざまな感情を含んだ瞳で見つめ返してきた。
そうして抵抗しないのだから。
ーーほら。俺に対しての距離がゼロなんだよ。
目も閉じずに、ブラッドリーは押しつけるように唇を合わせた。下から掬い上げるように口付ければ、マーヴェリックは先に目を閉じてしまう。
ーーあ。隠しやがった。
その瞳に、多少の動揺を見てやろうと目を凝らしてキスをしたまま、マーヴェリックの瞳の奥を覗き込もうとしたブラッドリーの思惑は外れた。そうしてやわらかい感触に浸る前に、ぬろ、とマーヴェリックが舌をねじ込んできて、ブラッドリーは眉を顰めた。
息が続かず、身勝手にも一旦離れたくせに、再び唇を押し付けてきたのはマーヴェリックの方だった。
幼少期に交わしたキスとは全く異なるそれなのに、色気もクソもない、けれどとてつもなく気持ちのいいキスを、ブラッドリーはなおも堪能しようと決めた。マーヴェリックの腰に回した手を尻に滑らせ、そこを撫でる。と。
「ぅわん!」
「っ、まずは、ここまで!」
完全に忘れ去っていた二人の間に挟まれる形となった子犬が吠えた。と同時、マーヴェリックは唇の交合を解いて、大きくのけぞってブラッドリーから離れた。
「まずはここまで?なんっだよそれ。ティーンの初恋?そのくせキスの仕方がいやらしいんだよ!」
結局ブラッドリーはマーヴェリックの尻に置いた手を退けた。
「だから。今日はここまで。レディのお腹も減っちゃうだろ」
「〝今日は〟?〝ここまで〟?ねぇマーヴ、生殺しって言葉知ってる?あぁもう、早くアニマル・シェルターから連絡来ねぇかな」
「レディ、君優秀だな。空気が読める。僕の僚機になる?」
ふざけた戯れを尚も言い募るマーヴェリックの真意が測れないまま、仕方なし、ブラッドリーは人肌程度に冷めた湯で、ドッグフードをふやかした。かき回していた鍋からは、シチューの香りが漂う。マーヴェリックはその香りに満足げに笑う。
「君のシチューは本当にうまい」
「あー、はい、そりゃどうも」
「キャロルの味に似てる」
ブラッドリーは無言でふやかしたドッグフードを皿に盛り付けた。子犬用の皿まで購入してきたマーヴェリックは、短い〝彼女〟の滞在も、抜け目なく手厚いのだ。
ブラッドリーは言葉を発することなく、マーヴェリックを振り返った。マーヴェリックは腕の中の子犬の顎をくすぐりながら、静かに口を開く。
「レディの飼い主が見つかったら、かな」
「……そしたらいいの?」
「よくないけど……いい」
「どっちだよ」
「君にならいいよ、構わない。ブラッド」
「……そういう言い方はずるい。それ、マーヴん中じゃ、坊やの子育ての延長だろ。坊やのわがまま聞いてあげてる、って、」
「でも君だけだ」
いつの間にか、ブラッドリーはいじけたように視線を逸らしていて、マーヴェリックは苦笑してその頬の傷を愛おしげに撫でるのだ。
マーヴェリックが膝を折り、子犬を床に下ろす。ブラッドリーはドッグフードの皿をマーヴェリックに渡した。
勢いよくドッグフードに飛びつく子犬を見守ってから、マーヴェリックが立ち上がる。
「ブラッド、君、まだ見てないのか?」
「?何が?」
マーヴェリックの前後の会話につながらない言葉にブラッドリーは困惑する。マーヴェリックは自らのセルフォンを取り出し、画面を裏返してブラッドリーに見せてくる。ブラッドリーはそれを読み進め、目を見開いた。
メッセージは数十分前に受信していて、メンバーのグループチャットに流れていた。当然、ブラッドリーのセルフォンにも届いているだろう。
『飼い主希望者あり、明日午前』
「中将本当に仕事早いな」
とうに届いていたメッセージを前に、マーヴェリックは綺麗に笑った。
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