えぬを
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やさしいおばけ

rsm_20221031公開

rsmv結婚した二人+αのハロウィン小話し。
二人に男女双子の養子がいるネタも盛り込んだアース。結婚して数年、毎年ハロウィンに起こるミラクル。ダッド=ルス、ダディ=マヴ

キャンディコーンを瓶に詰め、蓋をする。派手なハロウィンキャンディが溢れたバスケットにはもう収めきれず、ブラッドリーは同じく後方でスイーツを選別しているマーヴェリックを振り返った。
「マーヴ、バスケットまだある?」
「もうないぞ。この際テーブルクロスの左右縛って袋に見立てるか」
「それサンタじゃん。ていうか、うちにテーブルクロスなんて小洒落たもんあったっけ?」
「うちのハリケーンズがあちらへこちらへ引っ張ってテーブルクロスを敷いた意味を成さないからクローゼットの奥に突っ込んだ。取ってくる」
そう言ってマーヴェリックが階段を駆け上がっていく。ブラッドリーはその間に、バスケットいっぱいに溢れ出たスイーツの数々に加え、尚もチョコレートとマシュマロを追加した。
ハロウィン。毎年10月31日に催されるケルト人起源の祭りだ。
この日は死後の世界の扉が開き、死者が戻ってくると古来より信じられていた。けれどハロウィンには、死者と共に悪魔や魔女もやって来て、作物に悪い影響を与えたり、子どもを浚ったりするとも信じられている。そこで人々は、悪霊から身を守るために仮面を被り、仲間の振りをして身を守ったと伝えられて来た。最近では宗教的な意味合いが大分薄れて、大々的に仮装を楽しめるイベントになり果ててはいるが。
ブラッドリーとマーヴェリックの住む住宅街には子供が多い。街全体がハロウィンフェスタで盛り上がり、子供も大人も祭りを楽しんでいる。窓越し、大分薄暗くなった街に、それぞれの家が灯すLEDライトがぼんやりと浮かび幻想的だ。
庭から賑やかな声が響く。勢いよくドアが開き、少年少女が飛び込んでくる。
「ダッド、さっきね、」
「外におばけいたの!」
「ばっかね、仮装に決まってんでしょ!」
「違うよあれほんもののおばけだったもん!」
「そんなわけないでしょ、あれは」
「ストップハリケーンズ!お菓子の準備手伝ってくれ」
双子の姦しい声を遮り、ブラッドリーは抱えたバスケットいっぱいのハロウィンキャンディを双子に見せる。途端、歓喜の悲鳴をあげて、双子はブラッドリーに駆け寄った。正しくは菓子に飛びついたのだが。
「お菓子くれたからダッドにはいたずらしないでおいてあげる」
「ちょっとまって、じゃあダディからはお菓子もらってないからいたずらしてもいいってこと?」
頬いっぱいにマシュマロとチョコレートを詰め込んだ双子は顔を見合わせ笑う。
「こらこら二人とも、聞こえてるぞ」
「「ダディ!」」
テーブルクロスを腕に抱いてマーヴェリックが階段を降りてくる。
「「ダディ、トリック・オア・トリート!」」
双子がおばけのマントを被り直して、マーヴェリックに向かっていく。
「おっと!」
二人はマーヴェリックの腰に抱きついて、腰をくすぐり始める。
「わ!こら!僕はそこ、よわ、わはは」
「俺も参戦しよ!」
ひとしきり戯れるパートナーと子供たちを見守り、やがてブラッドリーは、コケー!と気の抜けた鳴き声をあげて全員を抱き込むように後ろから襲い掛かった。
「ほら、二人とも!ビッグモンスターのルーだ!」
きゃあきゃあともみくちゃになりながら、ファミリー全員でハロウィンの空気を楽しむ。
やがて一息つくと、ブラッドリーがドアの向こう、庭を指差した。
「マーヴ、今年も来たみたい」
「そうか。双子の前にだけか?」
「後で俺らのとこにも来ると思うけど」
「ダッド、ダディ、なんの話し?」
「二人とも、おばけの格好した人たちのこと知ってるの?」
双子がきょとりと両親を見上げる。
「よく知ってるよ。あの人たちは、毎年ハロウィンにだけ遊びに来るおばけなんだ」
「そのうちの一人はダッドに似ていなかったかい?」
マーヴェリックが双子を覗き込んでやさしく問う。
「そういえばおひげ!そっくりね!」
「キレイな女のひとは、すごくいい匂いした!やさしそうなひと!」
「あとねぇ、すっごくハンサムなおじさんもいたのよ!」
ブラッドリーとマーヴェリックは双子の言葉に顔を見合わせた。
「今年はアイスも来たのか」
「来年はサラおばさん呼ぼう、マーヴ」
「あのね、おばけなのに、あの人たちぼくらにお菓子たくさんくれたの!」
「ダッド、ダディ、あの人たちだぁれ?」
ブラッドリーとマーヴェリックはそれぞれの腕に双子を抱き上げた。
「あれは、ダディとダッドの大切な人たち」
「目立ちたがり屋の、やさしいいとしい僕らのおばけだよ」