三毛田
2024-10-19 21:30:19
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85 05. 甘くて苦い恋レシピ

85日目 甘くて苦い。それが恋

「うへぇ。にがぁい」
「そうか。俺はこれくらいでちょうどいいが」
「なら、穹にはこっちじゃな。ミルクチョコレートを多めに溶かしてある」
「うん。こっちのほうが飲みやすくて好き!」
 普通のコーヒーは、ミルクと砂糖をたくさん入れないと飲めない。
 姫子のコーヒーは、なかったことにしておく。
 今日のおやつのお供は、ココア。じゃなくて、ホットチョコレート。
 ビターだかダークだか、ミルクチョコレートよりも色が濃いものを溶かしたらしい。
「ケーキだとそんなに苦味は感じないんだけどなぁ」
「砂糖を多めに使っているからじゃ」
「なるほど!」
 チラッと隣を見ると、表情を和らげている丹恒が映り。
 甘いものは苦手だけど、アーカイブの整理後と読書の後は適度な糖分補給が必要だと言っていたから、ちょうどいいのだろう。
 話は変わるが、俺は丹恒が好きだ。
 そんな彼と、同じものを飲んでいる。それがとてつもなく嬉しい。
 ネットや本にある〝恋〟とは、きっと似ても似つかないものだろう。
 きっかけも、理由も、簡単に説明できるようなものではないから。
「ごちそさま。パム、キッチンに片付けておけばいいか」
「いや。オレが預かる」
「だが」
「穹がまだ食べ終わっておらん。どうせ、食器を洗うのはまとめてじゃからな」
 パムと丹恒の視線がこちらへ向けられる。
「そうだな」
「もう戻るのか?」
「ああ。後少しで、整理が終わる。夕飯までに終わらせたいんだ」
「わかった。今日は、ラウンジで食べるんじゃろう?」
 パムの問いかけに、丹恒は俺を見る。食べかけのフィナンシェを咥えたままそちらを見ると、二人とも同時に呆れた視線を。
「ああ。デザートがあれば、他の人よりも少なめで頼む」
「うむ。心得た」
「穹、資料室に来るなら来てもいいが、慌てて食べることだけはよせ。俺は逃げないからな」
 優しい笑みを浮かべ、俺の頭をそっと撫でて客室車両へ。
 フィナンシェがさらに落ちる。
「ぱ、パムっ。い、今の見たっ!?」
「丹恒が珍しいのお」
 なんて、のんびりした声を出しながら顎に手を当てて。
 ちょっとだけ口の中に残っていたホットチョコレートの苦味が、一気に吹き飛んだ気がする。
「今のってさ、やっぱ丹恒、俺のこと好きなのかな?」
「それは知らん。自分で聞けばよかろう」
 今度は腰に両手を当てて、俺を見上げて。
「穹、お前が丹恒を好きなのはみんな知っておるぞ」
「え」
 危うくカップを落とすところだった。
「バレてないとでも思ったのか」
「う」