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とはり
2024-10-18 23:33:08
2327文字
Public
ひめこは
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寒夜に綻ぶ
寒空のしたでいちゃいちゃするひめこは
2021年にひらいて🟥ブータグをつけて投稿したもの
なつかしい
翌年にオンリーが開かれて嬉しかったね
「寒うなってきたなぁ」
はあっと空に息を吐き出された吐息は白く色づいて跡形もなく消える。
「そうですね、本当に」
溜め息まじりに答えた言葉も同じように白く浮かんで夜空に溶ける。
「HiMERUはんもわしも、お揃いの白やね」
もう一度息を吐いて舞い上がった白い吐息を目で追って、こはくは声を弾ませる。
寒空では誰も彼も吐く息が白く変わるのに、こんな些細な自然現象にすら愛しそうに目を細めてHiMERUを見つめる。眩しいほどのこはくの視線と顔の表面をなぶる冷気に耐えられず、身につけているマフラーに鼻先を埋めた。
寒夜の繁華街はあちらこちらから鈴の音が聞こえ、暖かな色とりどりの光を灯している。近づいてくるクリスマスの気配に浮き足だつ空気とは対照的に、街は鋭い冷気を纏っていた。少し風が吹くだけで期間限定スイーツを収めたばかりの胃がきゅっと縮こまる。
コートにマフラーに手袋にとすっかり真冬の装いのHiMERUに対して、こはくが身に付けている防寒具はダウンジャケットくらいだ。
隣を歩くこはくをちらりと盗み見る。風が吹く度小さく呻きながら忙しなく両の手を擦り合わせているが、自分の体温では大したぬくもりを得られそうもないようで、色を失った剥き出しの肌が透けるように白く見える。
手を握って暖めてやりたいのは山々だが、人通りの少なくないこの街中で触れ合うのはあまり好ましくない。
「HiMERUはん」
凍える恋人をどう暖めるべきか思考に耽っていると不意に名前を呼ばれる。顔を向けるとこちらに両手を伸ばすこはくの姿が目に入る。同時に両頬にひやっとした鋭い刺激が走り、咄嗟のことに噛み殺しきれなかった声が漏れる。
凍えた両手でHiMERUの頬を包み込んでぬくもりを吸いとっていくこはくは、ほうっと表情を緩める。
「あったかぁ
……
「HiMERUで暖をとらないでください」
不意打ちに対応できなかった悔しさと照れくささに眉を潜めて抗議の言葉を口にする。
マフラーを隔てて放たれた言葉がくぐもって弱々しく聞こえるのが面白いのか、こはくからくつくつと噛み殺した笑みがこぼれる。
そうしている間にも大きく差のあった互いの体温は溶けるように徐々に馴染んでいく。
「手袋なんて持ってへんもん。HiMERUはんばっかりあったかい格好してずるいやん」
「
……
いい度胸ですね」
唇を尖らせて揶揄するように言葉を返され、片方の手袋を脱ぐ。そちらがその気なら、と外気に晒された手をこはくの柔らかな頬にあてがった。
ひゃっ、と薄桃の唇からひきつった声が白い息と共に吐き出され、HiMERUより一回り小さな背が跳ねる。
「つ、めたぁ
……
っふふ」
一瞬強く目を瞑ったこはくだが、再びそのすみれ色の瞳にHiMERUを映すと、ころころと笑い出す。仕返しのつもりでやったとはいえ、てっきり恨み言のひとつやふたつ返されるかと思っていたので、予想外のこはくの反応に呆気にとられる。
面食らったまま瞬きを繰り返す間も、嬉しそうに笑うこはくがもたらす振動が手のひらに伝わり続ける。
「こうやって体温を分け合って、冬は楽しいなあ」
うっとりとした表情で噛み締めるように呟くこはくに目を見張る。
いじらしい言葉を紡ぐ唇に吸い寄せられるように体を屈めるが、ここが街中であることを思い出してぴたりと静止する。
他者の肌で暖をとるなんて冬にありがちな戯れですら、新鮮に楽しめてしまう彼の境遇が切なくて、その分目の前の反応が愛しくて。今すぐ抱きしめて口づけて、その体を熱で満たしてやりたい衝動に駆られる。手の中の愛しい存在をたっぷりの愛情で甘く溶かすように暖めてやりたい。
体を巡る欲望をやり過ごすために深く息を吸い込む。取り込んだ外気の冷たさに助けられて思考が冷静さを取り戻していく。
それでも完全には鎮めきれない欲望を紛らわせるために、桜色のふっくらとした唇に親指を埋めてふにふにと弄ると、くすぐったそうに吐き出される白い吐息が温くHiMERUの指の縁を滑っていく。
HiMERUの葛藤にこはくは気づく様子もないが、そんな鈍感なところすら愛しいと思えてしまう。
幾分か温度を取り戻した手のひらで頬を撫でると、あったかい? と無垢な唇がHiMERUに問いかける。瞳を細めて肯定を返すとこはくは満足そうに笑んだ。
温もりを孕んだ手のひらをこはくの手に重ねると、再びひやりとした感覚が伝わる。こはくの手のひらはHiMERUの頬で温もっても、裏側は外気に晒されたままでひどく冷たい。こはくから奪った体温をそのまま返すようにそっと撫でると、心地良さそうにすみれ色の瞳が蕩ける。
ふたつの体温に挟まれたこはくの手が温もりを取り戻す頃、ひゅうと寒風が通り過ぎ、二人同時に体を縮こませる。
「そろそろ帰りましょうか」
HiMERUの声を合図に手のひらが離れるが、色を取り戻しかけたこはくの指が名残惜しそうに絡まる。じっと物言いたげなすみれ色に見上げられると、そのいじらしい態度につい望むまま甘やかしたくなってしまう。
「ここからだとHiMERUの家が近いのですが、来ますか?」
巻いていたマフラーを与えながらこはくの望みを叶える言葉で誘うと、桜が花を開くように嬉しそうに顔を綻ばせて肯定の言葉を口にする。
イルミネーションが彩る街へ再び歩き出すと、桜色の髪とマフラーを揺らしながらこはくが小走りで追ってくる。
「今度、桜河の手袋とマフラーを買いに行きましょう」
「HiMERUはんが見繕ってくれるん? 嬉しいわぁ」
光る街の傍らでふたつ並んだ春の花が密やかに綻ぶ。
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