溶けかけ。
2024-10-18 22:55:59
1236文字
Public ほぼ日刊
 

争奪戦

ペンギンに嫉妬するヌヴィレットのお話です。
なんて低次元で大人げない水龍なんだ……

「見てくれ、ヌヴィレット!」
 フリーナの腕の中には円な瞳をしたペンギンが抱かれている。
「ふふっ……可愛いだろう」
 そう言って笑う君の方が可愛い、と言ったら彼女は照れてしまうだろうか、なんて思ってしまう。
「な、なんだよ……褒めたって何も出ないぞ……
 浮流ペンギンに顔を埋めて真っ赤な顔で照れる彼女は予想通り、いや、予想以上に愛らしい。
「うん? なんだい? わっ……くすぐったいよ」
 腕に抱いたペンギンはフリーナの頬に擦り寄り、キスでもするかのように軽く嘴を触れ合わせた。
「ギャッ……!?」
 ヌヴィレットの視線に気づいたペンギンは円な瞳を目一杯見開き、動きを停止させた。
「どうかしたかい?」
「ギャッ! ギャッ!」
 ヌヴィレットを羽で差し示し、声を上げたペンギンはフリーナの胸に顔を埋めた。
「おお、よしよし。何か怖いことがあったんだね」
 フリーナはペンギンの頭を撫でる。ヌヴィレットの心の中でもやもやとした雨雲が広がっていく。
「ギャッ……! ギャッ……!」
 ペンギンはヌヴィレットを盗み見てはフリーナに悲しい、悲しいと訴えかける。
「うーん……えっと、痛いの痛いの飛んでいけー……なんてね」
 チュッと軽いリップ音を響かせて、フリーナがペンギンの嘴にキスを落とす。
……
……ヌヴィレット?」
 ヌヴィレットはフリーナを抱き上げるとペンギンをその腕から取り上げ、群れの中に戻し、歩みを進める。フリーナを横取りされたことへの抗議の鳴き声を上げながら自身の足を突いてくるペンギンたちは一睨みで黙らせた。
「君は私だけを見ていればいい……
「ははっ……ヤキモチかい? 可愛いね、ヌヴィレッ……
 フリーナの唇にヌヴィレットの唇が重なる。
……
……
…………────な、ながいっ!」
 酸欠で顔を真っ赤にさせたフリーナがヌヴィレットの胸を強く押し返す。瞳に薄っすらと涙の膜を張り、荒く息継ぎをするフリーナの唇に何度も自身の唇を重ねようとするヌヴィレットの口を手で押さえる。
「この……あっ、こら! もう、油断も隙もないんだから……って、舐めるなぁ……!」
 ぺろりと手の平を舐められて思わず手を離せばここぞとばかりにヌヴィレットがフリーナにキスをした。

「君が君を安売りするからいけないのだ」
 酸欠と羞恥でぐったりとするフリーナを抱きしめて満足そうに言うヌヴィレット。
 不意にフリーナが彼のジャボを引き、自身の顔へと近づけた。引いた勢いのあまり、カチンと歯と歯がぶつかり、僅かに鉄臭い味が口内に広がった。
 突然のキスに呆然と口元を押さえるヌヴィレットにフリーナが上目遣いで告げた。
「ぼ、僕だって……別に安売りしたわけじゃないんだからな……お、お、お……大人のキスはキミにしかしないし……それで、もうお終いかい?」
 頬を赤く染め、恥ずかしそうにしながらも何処か挑発的にヌヴィレットを見上げる瞳に彼は目を細めた。