マイストロベリーパイ

絶対北さんは言わないであろう言葉を、普段の自己解釈になるべく寄せて言ってもらい、かつ不自然にならないように文字におこしたかった…んです…
大人、同棲してるおさきたです。

 その言葉を言われるとは思わないから、治は動揺して目を丸くした。言った本人は肩を揺すっておかしさを堪え切れていない。
「一回、言ってみたかったんや」
 北は最近、そういう遊びをどこかから覚えた。覚えた先はわかっている、海外遠征でろくでもないことを覚えた自分の片割れが、ドヤ顔で教えたことだ。おにぎり宮で楽しそうにしゃべっているとき、北は特になんの感情も湧いていない顔をしていたのに。
……らしくないと思ってるんやろ」
 ダイニングテーブルに座る北の前にあるのは、ストロベリーパイとは対極のおしるこだ。パイ生地のような固さはないし、具は温かくやわらかく、餅もよく伸びる。北がうまいな、と一言聞いたあとでの横文字の到来に、治は目をぐるぐる回す。
「言われ慣れてないですよ、んな言葉」
「慣れとったら驚きやわ」
「なんで言ってみたんですか」
 言われ慣れていないし、きっと北も言い慣れていない。いやむしろ人生で初めて言っただろう。頬を少し赤くして、北はじっと治を見る。
「かわいいと思ったからや」
 その赤みこそがいちごのようなのに、そんな人にどこをどう間違えたらこんなムサい男がかわいいと見えたのか。またしても珍し褒め言葉に、こっちも顔を赤くしてうろたえるしかない。
 そういえば、治が餅を焼きながら鼻歌をうたっていたとき、北はニコニコとやわらかく笑っていた。きっとそのときから、かわいいと思われていたかもしれない。いやそれともそのまえに、寒いからきっちり着込んでゴミ出しへ行く後ろ姿が「冬眠前の熊みたいや」と言っていたときも、笑いが混じっていた。

 もう一度北に向き合えば、幸せそうに笑っていた。だから治も負けじと、同じ横文字を告げてみる。北はびっくりして、「なんで言ったんや」と頬を染めながら聞いてきた。だから治は悩んで悩んで、こう答える。
……今、おいしそうやから?」