とはり
2024-10-18 02:28:19
776文字
Public いろいろ
 

まことのかがやき【要+ジュン】

昏睡状態の要ちゃんが夢の中でジュンくんを感じる話。
Twitter(現:X)からの再掲

──波の音がきこえる
──さざなみの音が

 夏の果実のように爽やかに弾けるメロディが頭の中で鳴り響く。懐かしい声がメロディに乗って聞こえてくる。
 ずっとぼくの傍にいて、時々少し意地悪だった声。
 誰だっけ。
 なみのような……
 ──あぁ、
「さざなみ……
 ギラギラ光っていた金色の瞳を思い出す。たくさん聞いた声なのに、思い出すまで時間がかかってしまった。
 さざなみの声と融け合うように傍にいる甘い歌声は誰だろう。知らない声だけれど、心地よくて聞き入ってしまう。
 さざなみが楽しそうに歌っている。ぼくの知らないさざなみ。
 記憶の中のさざなみはいつも眉間に皺を寄せていて、どこか不満げで。あの環境にいれば仕方のないことだったのだろうけど。
 それでもさざなみは現状に抗い続けた。前を見つめて。
 真っ直ぐだった。何に対しても。ぼくに対しても。
 ぼくが特待生であっても、そうじゃなくなっても、さざなみの態度は変わらなかった。
 それが腹立たしいときもあれば、救われたときもあった。
 ……いや。ぼくがさざなみに救われたことなんてなかったのです。そうです。気のせいなのです。やっぱり腹が立ちます。
 けれど、今聞こえてくるさざなみの歌声は、悔しいけれど悪くないのです。さざなみはこんな風に歌う人だったのですね。
 美しい夏のハーモニーが、ぼくにも涼しい風を届けてくれる。
 夢の中を泳ぎ続けるぼくにも。
 ここは真っ暗。あの日二人出歩いた夜道よりもずっと。
 あの時、手を引いて歩くさざなみの背中が、ほんの少しだけ広く感じたのを微かに憶えている。
 聞こえてくるこの歌声もまた、夢なのでしょうか。
 ……夢じゃなければいいな。
 太陽と共に笑うさざなみが、どうかまことの輝きでありますように。
 真っ直ぐな彼にはこの祈りが似合うのです。