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とはり
2024-10-18 00:59:53
2613文字
Public
つかこは
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アメジストの涙
デート中のつかこはを通り魔が襲う......!
回し蹴り桜河(妄想)にときめいて書きました。
ESがこんな物騒でたまるか。
【pixivから移行】
SSサドンデス前に書いていたらしい。
穏やかな陽射しが降り注ぐ昼下がりに、微かに甘い香りが漂う。
「ふふっ」
司が浮かれた気持ちを隠しきれずに笑みをこぼすと、怪訝そうにこはくが首を傾げる。
「えらいご機嫌やな。そんなにスイーツ食べ放題っちいうのが楽しみなん」
「それもありますけど
……
」
あなたと一緒だからですよ、とは気恥ずかしくて言えずに口ごもる司から送られる視線に、こはくはきょとんと見つめ返す。
Sweetsの食べ放題に行きましょう、と司がこはくを誘ったのが約1か月前。お互いユニットでの仕事やソロでの仕事などで忙殺されていたがそれも落ち着き、互いのオフが重なった。ようやく訪れた待ちに待ったこの日に司は浮かれないではいられず、寝不足気味の瞼をこするこはくもまた満更でもなかった。
「何を食べましょうか。考えただけでもわくわくします」
「そんなに焦らんでも店は逃げへんで」
高まる期待に思わず早足になり先々へと進んでいく司を、欠伸をひとつ溢しながらゆったりと後ろを歩くこはくが諌める。
「案の定、信号でひっかかっとるし」
横断歩道の赤信号で足を止められた司がその場でそわそわと体を揺らしているのを少し離れたところから眺めて、くすりと苦笑する。
朝からそんな調子で浮かれきっている司に、こはくは幼い頃無邪気に遊んでいた時代を思い返しては満たされた気分になっていた。アメジストの瞳に広い世界を映して輝いて、けして綺麗ではない世界が彼の目を通すと、純粋なきらめきを放っているように思える。
陽の光を受けて佇む司の背中を見つめていると、その視界に薄いロングコートを羽織った男がポケットに手を入れたままゆらりと不審に司に近寄っていくのが映り、こはくは直感的に不気味さを感じて警戒する。眠気が飛び、神経が研ぎ澄まされていくのを自覚する。
「こはくーん、早く行きましょうー?」
信号が青になった横断歩道の前で司が振り返って無邪気に大きく手を振る。無防備な司とすれ違う振りをして手の届く距離まで近づいてきていた男の腕が大きく振り上げられ、その手元で反射する鈍い光がこはくの目に届く。その光はこはくには馴染み深い、刃物が反射させる光だ。認識し終わる前に足は地面を強く蹴り、司に向かって飛び出していた。
「坊っ!」
司と男の間に滑り込み、咄嗟に司の体を抱きしめる。
ブンと鋭いものが空を切る音が耳を掠めて、瞬間左の肩口に鋭い痛みを感じて眉間に皺が寄る。飛び込んだ勢いのまま後ろ足で暴漢の胸元を強く蹴飛ばす。間髪入れずに体を捻り、よろけた相手の顎に向かって踵で一撃をいれる。
ぐっ、と小さく呻いて男は路上に倒れて動かなくなる。暴漢が気を失っていることを確認するとこはくはひとつ息を吐いて警戒をわずかに緩める。
「いった
……
なめ腐った真似しよって」
切られた肩口を押さえてこはくは顔をしかめながら路上で伸びている暴漢に唾を吐くが、その服を染める赤の面積はじわじわと増えていく。
「桜河!!」
「坊、怪我とかしとらんか」
「私のことより桜河です!早く病院に
……
」
「どあほ、優先順位はわしよりおどれじゃ。ほんまに怪我しとらんな?」
キッと司を鋭く睨み付けるこはくは司がこくりと頷くのを確認すると、つりあがった目尻を少し緩めた。
「とりあえずこの不届きもんは警察に任すとして
……
っと」
「桜河
……
!」
ぐらりとこはくの体が揺れて慌てて司が支える。
こはくの額からは脂汗が吹き出していて、白い瞼は気だるそうに半分閉じかけている。
赤い雫が細腕を伝ってレンガ色の歩道にぽたぽたと滴る。
「救急車を呼びますから、じっとしていてください!」
「そんな大層な」
「一大事です!」
司の口から鋭い叱咤が飛び出してこはくは目を見開く。普段の小競り合いで大きな声を出すことは時折あったものの、これほど真剣な顔で声を荒げる司はこはくにとって初めて見るものだった。
焦燥の滲む指で携帯端末を操作する司の横顔を見ながらこはくは気分が沈んでいくのを感じた。
「最悪じゃ
……
坊にこんな顔させて
……
」
大事な当主すら万全に守れず、不安を抱かせてしまっている。そんな自分を責めるように傷口がジンジンと鈍痛に疼く。体が鉛のように重くなり始め、思考が徐々に鈍っていく。
(そんなに深い傷やないと思ったんやけどな
……
)
歩道の柵に体を預けて何とか地面に倒れ込むことを防ぐ。既に自分の足で体重を支えることも難しくなってきていた。自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえて、周りの喧騒が遠くに感じる。
「
……
わ!桜河!」
「ん
……
」
動揺した声で呼ばれて重たい瞼を持ち上げると、今にも泣きそうな顔で司がこはくの顔を覗き込んでいる。
「救急車は呼びましたから、もうすぐ来るはずです!死なないでくださいっ」
「あほ
……
こんなんで死なんわ
……
」
いつもよりも弱々しいこはくの声に司のアメジストの瞳がじわりと潤んでいく。溢れそうな雫を拭おうにも自由に使えるこはくの右手は自分の血で汚れていて叶わない。もどかしさに声が漏れる。
「ああ、もう
……
当主がそんな情けない顔すんなや。たかが用心棒のひとりが怪我したくらいで」
こはくの言葉に司の表情が徐々に険しくなり、涙目のまま頬を膨らませる。わなわなとその体が怒りに震える。
「───っ! ばかっ!」
勢いのある幼稚な罵倒と共に両頬をつままれて、こはくの目がまんまるに開かれる。
「あなたが私を心配してくれているのと同じくらい、私もあなたのことを心配したいです!桜河は、私の大事なっ、だいじな
……
っ」
声を詰まらせた司の昂った感情が大粒の涙へと変わって、ぽろぽろと煌めくアメジストから溢れ出し、司はついにぐずぐずと泣き出してしまう。
ぐずりながらぽこぽこと力の入らない拳でこはくの胸を叩いて何度も同じ罵倒の言葉を口にする司に、こはくの口元が緩む。
愛しい愛しい守るべき当主にこんな言動をさせて本来は許されるべきではないのに、その当主から与えられた身に余るほどの愛情にじんと胸が熱くなる。
涙を拭ってやれない代わりに頬同士をくっつけて擦り合わせる。溢れる涙で温かく濡れたその頬の感触に罪悪感は感じるものの、その涙の全てが自分を想うものであるのだと考えると愛しさと喜びがとめどなく溢れてきて、自然と声も緩んでしまう。
「おおきになぁ、兄はん」
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