su7ga0
2024-10-17 22:31:04
2096文字
Public 則さに
 

私の知らない男

小さい頃からずっと好きだった則宗と共寝した夜が明け、朝を一緒に迎えるいかがわしい話。ぬるい事後描写があります。苦手な方はご注意ください。

小さな頃から聞いてきた声が、起き抜けは不機嫌にも思えるくらい低く掠れることを今まで知らなかった。
「おい、お前さん朝だぞ。そろそろ起きろ」
肩を揺する大きな手を無視して枕に顔を埋め、うつ伏せになったまま寝たふりを決め込んでいる。
私が知っている則宗は、どことなく軽薄な喋り方をする爺だ。こんなにあくび混じりの気怠い声を出す、なまめかしい則宗なんて知らない。
「おい」
刷毛のように柔らかな何かがぞろりと背筋をなぞって、肌が粟立った。
背中を這いずった「何か」の正体を確かめる間も無く耳たぶを食まれ、気の抜けた声が漏れてしまう。
「ひぅ」
素肌の背中を這ったのは則宗の髪だ。
私の背中に覆い被さっている則宗へ振り向くと、眦の下がった碧い瞳と視線が合った。
「はは。起きてるのは分かってるんだからな」
則宗が眠たげに瞬くたび、白金色の長い睫毛が、部屋に薄く差し込んだ陽の光を反射して煌めいていた。
「おはよう。気分はどうだ?」
厚みを持った胸板が背中に重くのしかかる。
呻き声を漏らすと、則宗は愉快そうに笑って私の足に自分の足を絡めてきた。素足のふくらはぎに、ざらりとした硬い脛の毛が当たって痛い。
……あっちに行ってよ」
「うん、そうか。一人になりたいか」
則宗は分かったような口をききながら退こうともせず、私の髪を手櫛で梳いて遊んでいる。
じぃちゃん、なんて呼んで懐いていた昔と変わらない顔と声で、則宗は昨日、私を抱いたのだ。
何度も「止めとくか?」と聞かれたけれど、ろくに頭も口も回らなかったし、則宗はわけが分からなくなって涎を垂らす私を見て、とても喜んでいるように見えた。止めてほしいと訴えても、きっと曖昧に流されて則宗の好きなようにされていたはずだ。
目を細めながら私の肌を撫でて「育ったな」と感慨深く囁いた声は、身長が伸びたことを報告する、小さな私を褒めた声と同じだった。
あの時は快活に笑いながら私の頭をぐしゃぐしゃと撫でていたのに、昨日の則宗の声は、吐息混じりで熱のこもったものだった。
「なあ。……ゆうべの『じぃちゃん、早くしてお願い』は、なかなかそそったぞ」
「言わないで!」
「あとは、何と言っていたかなぁ」
「言わないでって言ってるでしょ!」
「『また来ちゃう』って痙攣しながら僕を離そうとしなかったし、イヤイヤ言いながら、腰がへこへこ動いてたのは可愛かったなあ」
「ううう」
「本当に嫌だったのか?」
則宗は私のこめかみに頬を寄せ、微笑みながら顔を覗き込んでいる。
則宗が男の欲望を曝け出した姿を初めて目の当たりにして、それを正面からぶつけられたことが恥ずかしかったくせに、反面では思いが通じた喜びを噛み締めていた。
……嫌だったのは。
「爺」ではない則宗の顔を見た女は、きっと私だけではないのだろうと醜く嫉妬した自分のことだ。
小さな頃から今まで、則宗へずっと思いを寄せていた。その間、則宗は私ではない誰かにあの顔を見せていたのかもしれないと考え、喜びに湧いた心はすぐに萎んでしまった。
……嫌じゃないよ。ずっと側にいてよ。他の誰かのとこになんか行かないで」
涙まじりの情けない声を搾り出す。
呆れられてしまう、と思ったけれど、胸の内からどうしても込み上げてくるのは子供っぽい我儘だった。
則宗がどんな顔をするのかを見たくなくて、再び枕に顔を埋める。
短く鼻を啜って目を閉じると、腰の少し下あたりに何かを押し付けられた。
押し当てられた熱い塊は、すり、とうごめき、昨日散々泣かされた記憶が蘇る。
則宗は、私の体の奥の、拓いてはいけない部分にまで強引に入り込んできた。昂りを抑えるのに必死な様子で荒く息を吐きながら、私に少しも休むことを許してくれなかった。疲労で本当に私の体が動かなくなってからも、力の入らない足を抱えて、太いもので胎の中を勝手に捏ね回していた。
とろけるような快感が徐々に鮮烈さを増し、最後には、頭の芯が焼き切れて自我を失くしてしまいそうなものに変わったことを思い出した。
体の奥から一気に血の気が引いて、則宗から逃げようと無意識に体が動く。
しかし私の考えを見抜いていたのか、則宗は、跳ねた私の肩を瞬時に押さえつけてきた。
緩やかに動いていた熱い塊は、腰の稜線をなぞりながら静かに下がって行った。そうして、尻のあたりでひたと止まり、ぐうと柔肉を押し上げて止まる。尻の肉が、則宗のものに押されて形を変えているのが分かってしまった。
背を反らせ、「あ」と泣きそうな声を漏らすと、則宗は笑った。
「お前もこれから先、他の男をここ 、、に咥え込むことは、僕が承知しないからな」
私の口元が 戦慄 わなないたの見て、則宗は満足したようだった。
もう、爺と孫でもなんでもない。
少なくとも私は、これから先の則宗を、「じぃちゃん」だなんて呼ぶことはできない。
しかし、則宗は今までと変わらずに、私のことを庇護すべき小さなものとして扱うのだろう。……他の刀の目がある前では。
背後から聞こえた声は、今まで聞いたこともないくらい、低くて獰猛な声だった。