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シノハラ
2024-10-17 18:58:55
1506文字
Public
スクシオ
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無機生命体の感情の判定が独特だと良いなのスクシオ
原稿の息抜きでツイートネタで納めるはずが指が温まり過ぎていたせいで普通に小説の体を成してしまったスクシオ
0と1とそれから電気パルスの反応。それが自分達無機生命体の感情の正体である、とスクリューガムが告げた。
きっかけは発言を掘り起こすために表示したSNSアプリに表示されていたドラマか映画かの広告だったと思う。有機生命体の男女の内の女の方が相手の男の恋愛感情を認められずにいるシーンを見て、こういうことは無機生命体にはないのだとスクリューガムがレイシオに教えてくれる。
そう認めてしまうと貴方がたには無味乾燥なまがいもののように思える向きもあるかもしれませんが、データの一つとして取り扱えると捉えればなかなかどうして便利なのです。私達の反応は一定期間ログとして残されるので、収集した上で解析に掛けることが可能です。
故に、私達は怒りや喜び、悲しみを始めとした感情のモデルケースや派生を体系的に理解しています。その数値を自らの処理の上で展開すれば、意図的に自身の感情を操作することも可能です。
しかし、この行いは医療上効果が認められる場合でもなければ認められません。私達の歴史を知る貴方であれば、理由を説明するまでもないでしょう。
一方でデータを基に自身の状態を定義することは禁じられていません。集積され続けた感情を示すデータを照会して、今現在自分の心を知る。そういう行為を野暮なものとする意見ももちろんありますが、自身の思いを証明する上でこれほど確実な手段はないと思いませんか。
そう、つらつらと述べられたスクリューガムの言葉にレイシオは頷く他に手だてがなかった。それどころか便利そうでいいな、とすら思う。そういう自己の見つめ方があるなら、若き日のレイシオはあそこまで打ちのめされたりはしなかったかもしれないので。
「もう長らく使っていなかったのですが、この前久々に照会をしてみました」
「おや、君のようなひとにも惑う時があるとは意外だな」
皮肉でも何でもない感想だった。彼の正確な生年を知るわけではないが、自分達向けの歴史の教科書に彼の名が現れ始める時代を思えば不惑どころではない年数をスクリューガムは生きてきているはずなのだ。そんなひとが自身の感情を持て余して外部を頼ることがあるとは。
スクリューガム自身にも想定していなかった出来事だったらしく、全くだとばかりに彼はいつもと変わらない穏やかな相槌で答えた。それから彼の身分を思えば随分と丁寧にレイシオを呼んでくるのでチャットのログを遡ろうとしていた手を止めて、レイシオは視線を彼に戻す。
「解析結果は恋でした。レイシオさん、貴方への」
「は
……
?」
気がつけば指の力が緩んでいて、手元にあった端末が零れ落ちて地面に落ちてしまっていた。どんな音が響いていたかなんて、それどころではなかったレイシオには分からない。落ちたと気がつけたのも、スクリューガムが床に転がった端末を拾い上げてレイシオの手に戻してくれてようやく、くらいの有様だったのだ。
その時に触れた指先が、おそらく意図的なものだったと気がついてぶわりと顔に熱が集まるのが分かった。もしかしたら首筋まで赤らんでしまったかもしれなくて、その事実が更に熱を煽って永久機関と化したような心地になる。
「貴方の生まれに一つも不満はないつもりでしたが
……
訂正:今の貴方がどこにも残らないのが残念でなりません」
「
……
他ならぬ君が覚えているだろう」
その気になれば永続的な記憶領域に経験を残し続けられる相手だと思うと毒づきたくもなってしまうのに、自分の声には棘の一つも生えていなかった。どうかこれを答えとして許してはくれないだろうかと祈りながら、レイシオは弱り切った息を吐くしかなかった。
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