嶋利
2024-08-10 23:49:17
1122文字
Public FE 風花雪月
 

【SS】ある日の手合わせ

「ベルナデッタの追い詰め方」と同様の作品から削除したシーンになります。フェリクスとベレスの手合わせシーンです。どうやら私は教師をしている先生が好きらしい

剣と剣が混じり合う音。模造剣でもフェリクスにとってこれほど奮い立つ音など他にはない。
ベレスと手合わせしている時は特に緊張感で血が沸き立つ。一瞬でも隙を突かれれば死が迫り来るかと思うほどの殺気と剣圧を、気に入っていた。彼女は手加減せず向かってくる。
だが今日のベレスは間合いを取るばかりでこちらに攻撃を仕掛けては来ていない。

「どうした!お前の戦意はどこへ行った!」

ベレスからはいつも通り殺気を感じる。戦意など喪失していない。なのに剣戟は躱され続けるか、剣で受け止められるばかりだ。今日のベレスは様子がおかしい――
やっとのことで間合いを詰めれば、ベレスは背後を取り、フェリクスの首筋に短剣をすんでのところまで突き立てた。

「戦場だったらどうなってたと思う?」
……死んでいたな」

短剣は模造品ではない。ベレスが常に佩刀しているものだ。
真剣の冷たさによってフェリクスの沸き立った血は一気に冷めきって冷や汗すら出ていた。短剣から解放されて、息が上がっていたことに気が付く。

「君は夢中になると間合いを詰めようと躍起になるね」
「あれはお前が避け続けるから――
「詰め過ぎてさっきみたいに隙だらけになってもいいの?」
「っ、それは……こちらも避けられるよう鍛錬あるのみだ」

負け惜しみだ。ベレスに勝てたことは一度もない。今日は特に打ち負かされた気分が強かった。
ベレスは動き回って避け続けていたというのに、息を荒らげることもなく涼しい顔で短剣を納刀していた。

「一人で戦うならそれでもいい。けれど君はここで士官になるための訓練を受けているはずだね」
「当たり前だ。将が先陣を切らなくてどうする」
「特攻するだけが戦略ではないだろう?」

その通りだ。やりようはいくらでもある。

「ベルナデッタを帯同させる目的はそれか」
「それだけじゃないけどね」
「他に何の意味がある?」
「それは君が見つけるベきことだ。今私から答えを導き出そうとしても無駄」
「一本取れたら、という条件でどうだ」
「いいよ。君が本当に一本取れたらね」

牽制の意味を持つならその騎士団を配備させればいいだけのことだ。フェリクスには後ろ盾の騎士団は配備されていない。
「貴族のお坊ちゃん」として護られていることが不服だった。己の実力を試すためにも騎士団はいらない。突っぱねれば、ベレスは大人しく了承していた。
だが前回の出陣でベレスは突然ベルナデッタをフェリクスの副官とした。その目的が軍団から孤立させないためだけではないのならば、それになんの意味がある?
再びベレスと剣を交じり合わせても、結局フェリクスは彼女から答えを得ることはできなかった。