けがわ。
2024-10-17 00:32:08
1506文字
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忠誠の証

ドラコレ冬の893パロ

虎於と百のちょっとしたお話です。
カプなしのつもり……

※🍑の流血表現あるので苦手な方は注意してください。

「あんた、どこに行ってたんだ?」
「別に……ただの野暮用だよ」
 そう言って懐から煙草を取り出した百さんは、ライターをカチカチと鳴らしている。
 ホテルの屋上に夜風が吹き抜けて、どこからか鉄の臭いを運んでくる。
 嗅ぎなれた、血の臭い。
 だけど、ここにいるのは俺と百さんしかいない。なら、この臭いはどこから——
「っ! ——百さん!」
 ライターを持つ百さんの手首を掴み上げると、ガチャンと音を立ててライターが手から滑り落ちた。
……おい、何してんだ」
「それはこっちのセリフだ! アンタ、怪我してるだろ……!」
 俺の言葉を聞くなり面倒くさそうに息を吐いて。
「怪我なんかしてねぇよ」
 吐き捨てるように言い放った。
 この人はいつもそうだ。気の向くまま勝手に行動して、人を傷つけることも、傷つけられることも厭わない。
「見せろ」
「は?」
 丸いサングラスから覗く大きな瞳が見開かれる。まさか俺に剥かれるなんて思っていなかったって顔だ。
「おい、何して……!」
 声を張り上げた拍子に咥えていたタバコも口からポロッと落ちて、地面に灰を散らす。
 俺は構わずに、派手な柄のシャツと中に着ている黒いハイネックをまとめて裾から捲り上げた。そこには適当に巻かれた包帯に赤黒いシミが広がっていて——
……いつからこんな怪我してたんだ」
……お前には関係ないだろ。……放せ」
 俺を睨み付けて、有無を言わせぬ圧で牽制してくる。
「っ、」
 駄目だ。ここで手を離した駄目な気がする。俺はもう、この人を一人で闘わせたりしない。
 捲っていた裾から手を放して、もう片手は百さんの手首を掴んだまま引っ張るようにして歩き出した。
「おい、虎於!」
「うるさい! いいから黙ってついて来い!!」
「っ!」
 俺が百さんに怒鳴ったのは、これが初めてかもしれない。従順な犬に吠えられた時のように瞳を見開いて驚いた表情を浮かべている。
 俺から視線を逸らすとバツが悪そうな表情をして、そのまま大人しくついて来てくれるようだ。


 百さんを連れてきたのは、借りているホテルの一室だ。拠点を持たない俺たちは点々とホテルや廃ビルを移動している。
 たまたまホテルを借りていてよかった。
 ベッド前まで引き連れてきた百さんを振り返ると、額には大粒の汗が滲んでいて、どうやら無理やり連れてきたことで傷口が開いてしまったようだ。
「すまない。少しだけ我慢してくれ」
「な、に……
 百さんが何か言う前にベッドに押し倒して、服を脱がせていく。
 上半身だけ剥くと、先ほどよりも血が広がっていて、包帯を真っ赤に染め上げている。
「酷いな……待っててくれ」
 言い残して、非常用に持ち歩いている救急箱を持ってくると、中から包帯とガーゼを取り出した。特に誰に教わったわけでもないから、我流で止血を施して、新しい包帯を巻いていく。
 百さんは眉間に皺を寄せたまま、大人しく手当てを受けてくれている。まるで、思い通りにいかなかった子供が拗ねているみたいだ。
「よし、まあこんなもんだろ」
「ほんと、何してんだよ……
 呆れたように息を吐く百さんの足を取って靴下を脱がせていく。
 困惑する百さんを気にも留めずに足を軽く持ち上げて足の甲にキスを落とした。
「っ、」
 強く吸うと百さんが息を詰めたのが伝わってくる。ちゅっとわざとリップ音をさせてから唇を離した。
「アンタに死なれたら困るからな」
…………は? なに、言って……
 目元を細めて唇で弧を描く。
「俺はずっとアンタについて行く。だからこれは——


 ——俺からの忠誠の証だ。