三毛田
2024-10-16 22:28:01
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82 02. 目に映るもの

82日目 なるべくなら俺だけにして欲しい

 その瞳に映るものは、何なのか。
 丹恒の碧の瞳は、俺でもなのでも、姫子でもヴェルトでもない。誰でもない、どこか遠くの人を見つめている。そんな感じ。
 どうせならば、俺だけを見つめてほしいというわがまま。
……
「穹、そんなに見つめても何もしないぞ」
「今は本読んでるから、心ここにあらずってわけじゃないね」
「当たり前だ」
 俺の指摘にムスッとする。
 ああ。
 今は、今だけは俺だけが映っている。それがとてつもなく嬉しい。
……俺は、そんなに心ここにあらずなのか」
「たまーにね。でも」
「でも?」
「こうして俺を見てくれる時間があるの、すごく嬉しいなとは思うよ」
「そうか」
 少しだけ目元を和らげ、口元も緩めて。
「丹恒」
 頬に手を添え、じっと碧を見つめる。
 一度左右に動いた後、決心したように俺を見つめ返し。
「キスしたい」
「ああ」
 黒い睫毛に縁どられた瞼が、そっと碧を隠して。
 顔を近づけて、キスをする。
 チュッチュと、わざとリップ音を立ててキスをすると、わき腹をつままれ。
「丹恒先生、痛いです」
「お前がそうやって破廉恥なことをするからだ」
「キスは全然破廉恥じゃないってばぁ」
「音を立ててキスをするのが、破廉恥だ」
 むすっと唇を曲げ、睨んでくる。
「じゃあ、舌を絡めるのは?」
……破廉恥だ」
「でも、丹恒舌を絡めならキスするの好きだよね。後、耳を塞ぎながらのキス」
 ニコニコしながら告げると、顔を真っ赤に。
 いつもなら、ここで手が出てくるのだが、今日は顔を真っ赤にするだけ。
「そういうキスが好きな俺は、はしたないだろうか」
 上目遣いに、ボソボソと。
「はしたないってことはないよ! もっと積極的に、俺を求めて欲しいなとは思ったりするけど」
「穹は、積極的な方が好きなのか?」
「積極的なのが好きっていうよりは、丹恒が俺のために色々頑張ってる姿が好きってだけ」
「そう、か。努力はする」
「無理しなくていいから。ありのままの丹恒が一番好きだよ」
 耳に髪をかけつつ撫でると、嬉しそうに目を細め。
「もう一回、いい?」
「ああ。一回だけと言わず、何度でもしていい」
 目をつぶって唇を突き出し。自らキスを求める姿はいじらしく、胸をキュンキュンさせる。
 軽く、啄むようなキスを数回施し唇を舌でつつくとそっと開いて。
 招き入れてもらえたので、口の中を一通り舐め。
「今の動きは破廉恥だ」
「そう?」
「ああ」
 不満そうにはするけれど、キスし足りないのか首に腕を回してきた。
「もう一回?」
「ああ」