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頻子
2024-10-16 12:02:23
1767文字
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KODR二次
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ウィンチのぬいぐるみ♪(KODR)
日常ぎすぎす
二人連れの魔女がくすくすと笑いながら、ウィンチの背後を歩き去っていった。
ウィンチは手に持ったぬいぐるみを握りしめる。
ぬいぐるみと会話するのが馬鹿げているというなら、鍋に向かってブツブツと呪文を唱えるのだって滑稽のはずだ。
魔女一族はウィンチに期待していない。たとえ同じ年のどの魔女よりも上手に魔術が使えたってウィンチは相手にされない。
魔法使いに生まれるとは、そういうことだ。
***
「ない、ない
……
」
ある日、ウィンチはぬいぐるみを書庫に置き忘れたことに気が付いた。
ぬいぐるみは見当たらない。誰かに持っていかれてしまったのか。それとも、まさか捨てられてしまったのか
……
。
ウィンチは積み重ねてある本を崩し、半ば半狂乱になりながらも、大切なぬいぐるみを探した。 タオル地のウサギのぬいぐるみ。端切れで作られたぬいぐるみ。
……
立派なものではないけれど、それでもそれは、ウィンチのものだ。一族の魔女が、気まぐれにウィンチに与えたものだった。
ない、ない。どこにもない。
「散らかすのはいいが。元に戻せよ。まあ、いっても無理か。ふああ
……
」
ベーケス2世を無視して、ウィンチは本の山にまみれた。
「おい、ニュート。なんでも口に入れるな」
無邪気に赤子が笑う声がして、ウィンチはハッとして顔を上げる。吸血鬼に抱き上げられた赤子は、見覚えのあるぬいぐるみを持っていた。
「返せっ、返せっ!」
ニュートのこぶしは、ぬいぐるみの耳をぎゅっとつかんで離さない。
ぬいぐるみはくたっていて、よだれまみれになっている。
ウィンチがニュートの手の甲をひっ叩くと、ニュートは今起こったことが理解できないというようにぽかんとした。それから、火のついたように泣き出した。
無能のくせに。
その辺に放っておいたら3秒で魔物の餌食になるだろう、無能のくせに。
こうやってぎゃあぎゃあわめくしか能のないない無能。けれども、こいつに限っては、わめいていれば何とかしてくれる
……
。
「おお、どうしたんだ。ニュート。またウィンチにいじわるされたのか?」
ベーケス2世が、なんでもなかったことのようにニュートをあやしはじめる。
「そいつが私のぬいぐるみをとった!」
「ぬいぐるみ? ああ、こいつか。ぼろきれかと思った。ふうん。確かにウィンチって書いてあるな」
「だから
……
」
「でも、ニュートがほしいと思ったら、ニュートのものだ。ニュートは次期魔界王だから。ほら、ニュート。よかったな、ニュート。落ち着いたら礼を言ってやれ」
「ふざけるな
……
」
騒ぎを聞きつけた魔物たちが次々と集まってくる。その視線は冷たくウィンチを見ていた。お前が泣かせたのか、と。突き刺さるような目線。
ウィンチは唇をきっと噛みしめた、ウィンチだって泣いている。泣いてやるものかと思いながらも、目の奥は熱く、涙がにじんでいた。
「ニュートはウィンチが好きなのに。ウィンチはニュートが嫌いなんだとさ」
***
ぐつぐつと煮立った鍋にぬいぐるみを入れて煮沸している。
ウィンチの大切なぬいぐるみにも、ニュートはすぐに飽きてしまった。
机に突っ伏して泣く代わりに呪詛を唱えている。そのやり方を知っている。もう片手には髪の毛を握りしめていた。
ニュートのところには、山のように贈り物が届けられる。ウィンチにとっては一つしかない大切な大切なぬいぐるみも、ニュートにとってはたくさんあるうちの一つでしかない。
薬庫に戻ってくると、机の上にはウィンチのぬいぐるみがあった。人影はさっと扉の後ろに隠れてしまう。
「スケルナイト?」
「ああ、うん。ニュート様が飽きたようだったから
……
置きに来たんだ。直そうとしたんだが、俺は戦い以外は
……
」
ウィンチは回り込んで、去っていくスケルナイトの手を捕まえた。
「力になりたいわ。できることがあったら、何でも言って」
「ウィンチ。俺は、
……
俺は、変わりたいんだ」
ウィンチの願い事は、生まれてからすべてかなわないようになっている。どれもこれも、みんなあいつにとられてしまう。
「
……
いいわ」
誰かから与えられるまで待ったりはしない。自分の手で、なにもかも手に入れる。
確かな殺意が実を結び始めていた。
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