涼華
2024-10-15 02:01:34
1393文字
Public 実装前幻覚
 

血鬼の夢

実装前の狂気その2、ダングレ、悪夢を見る血鬼おじ、短い

 ごりごり、がりがり、と硬い牙を無理矢理削られる音。削りきれなかった小さなエナメル質が口内を傷つける痛み。
 牙と一緒に削られ、折られた心はいつまで経っても痛みを忘れられず夜毎悪夢を作り出す。どこまでが現実で、どこからが俺の妄想かわからない悪夢は人間風情を恐れ、その上庇護されている屈辱を何度だって思い出させる。
 いっそ全て忘れてこの優しい人間の愛玩動物として生きられたら楽なのに、誇り高き血鬼の血はそれを許してはくれないらしい。

〈グレゴール、大丈夫?〉
………あぁ、大丈夫だよ少し夢見が悪かっただけ」
 隣で眠っていたはずの時計頭の人間が目を覚ます。あんたのせいで悪夢を見た、なんて言ったらこのひとはどんな顔をするだろう。八つ当たりにも程があるが俺を拾うようなお人好しは傷ついた顔くらい見せてくれるだろう。いや、義体の頭には表情がなかったっけ。牙を失くした俺の言葉 くちでは傷つけることは叶わないか。

〈もう少し近くにおいで。寒いと余計に良くない夢をみるから〉
………うん」
 そんな俺の醜い考えなんて知りもしない人間は無防備に腕を広げて捕食者を迎え入れる。あんたなんて簡単に殺せる俺を少しだって恐れずに。
 そう、簡単に殺せてしまう。血を吸い尽くして、あるいは有り余る膂力に物を言わせて。それをしないのは牙が折れて血が足りないってだけ。回復の為に渋々頼らなければいけないってだけ。だから牙が治ったら、血が足りたら。

 言い訳をいくつも重ねながら血鬼より暖かな体温に身を任せて目を閉じる。慣れない湯船で時折与えられるそれに似た安らぎのようなものがひたひたと俺を侵食していく。血のように硬化させていたはずの心が溶かされていく。
 嫌なはずなのに、怖いはずなのに、どこか幸福のようなものを感じている自分がいる。
〈暖かくなった?〉
「ぅん………
 甘えるな、絆されるな。相手は人間、食糧だ。それなりに平穏な関係を築こうとしていたって結局は血鬼 おれとは別のいきもの。住む世界も、寿命も違う。こんなふうに俺を甘やかして、牙を生やす気力さえ削いだとして、それでも100年もしないうちに俺を置いて死んでいく。そのあと俺がどうなるかなんて知りもしないで、無責任に死んでいく。後を追うことすら出来ず惨めに長い生を消費していく俺を嘲笑うように。
 だからこんな関係、長続きしない。だから、だから。

〈眠たくなってきたかい?〉
……う、ん」
 ぐるぐると回る思考を遮るように穏やかに背を撫でられる。胸に耳を当てればとくとくと血潮が巡る音に眠気が誘われる。弱い人間の腕の中にいるというのに母さまに抱かれていた時のような安らぎを感じてしまう。
〈おやすみ、グレゴール。今度はいい夢が見れるといいね〉
「ん……おやすみだんて、さ………
 ああ、このまま二度と目が覚めなければいいのに。この日常が俺にとっての最高の夢みたいなものなのに。なんて馬鹿なことを考えながらゆっくりと意識を闇に沈めていった。










グレゴール
牙と一緒に心も折られたよわよわ血鬼
金髪で小柄の『母さま』に抱かれるのが好きだった
お風呂トレーニング中

ダンテ
血鬼を同じベッドで寝かせる図太い一般人ンテ
蒸しタオルで全身拭かれる羞恥よりはマシだろうと宥めすかしてお風呂トレーニング中