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溶けかけ。
2024-10-14 14:44:35
2076文字
Public
ほぼ日刊
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再演
過激派テロリストの教主様に仕立て上げられたフリーナのお話。
「ナヴィア
――
……
」
フリーナがナヴィアを揺する。彼女の髪は真っ赤に染まり、固く閉じられた瞳はピクリとも動かない。フリーナはすぐさま、衆の水の歌い手を召喚するとナヴィアを守るかのように覆いかぶさった。
「なんで
……
こんなこと
……
」
「フリーナ様、行きましょう! これで、貴方様はまた神に返り咲けるのですから!」
白いローブを着た者たちがフリーナとナヴィアを取り囲む。彼らはフリーナを押さえつけると縄を取り出した。
「おい、早くしろ! 警備隊に通報されたらマズいぞ!」
「分かってる!」
抵抗するフリーナの手足を手早く縛ると、口に薬品を染み込ませた布を当てた。
「任務完了! ヅラかるぞ!」
足音が遠ざかる。意識を取り戻したナヴィアが見たのは、意識を失いぐったりとしたフリーナを担ぎ上げ、走っていく怪しい者たちだった。
「
……
今日で一週間になる。残念だが、捜索は打ち切りだ」
ヌヴィレットが告げる。机を叩く大きい音がして、全員がナヴィアの方を見た。彼女はヒールの音を響かせながら彼の前に立つと右手を振り上げてヌヴィレットの頬を張った。
「あんたはフリーナが心配じゃないの!?」
ヌヴィレットの胸元を掴み上げるナヴィアをクロリンデと旅人が引き離した。
「テロリストの活動が活発になりつつある
……
。これ以上、彼女の捜索に人員を割くわけには行かぬのだ」
ヌヴィレットは乱れた服を整えながら、冷酷に告げた。
「ああ、そう
……
あんたが少しは変わったと思ってたんだけど
……
あたしの勘違いだったみたいね」
それだけ言うとナヴィアは踵を返して去っていく。旅人とクロリンデが困惑しながら彼女の後を追った。
一人残された執務室でヌヴィレットは椅子から立ち上がるとステンドグラス越しに外を見た。フリーナが誘拐されて早一週間。
「どうか無事で居てくれ
……
」
「フリーナ様、お時間でございます」
「ああ。今行く」
白いローブを羽織った女性は恭しく頭を下げると去っていく。
「どうかしたのかい?クラバレッタさん」
クラバレッタがフリーナのローブの裾をハサミで器用に掴んで引き止める。大きな瞳は悲しそうに半月を描いていた。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
心優しいメイドの甲羅を撫でる。シュヴァルマラン夫人もジェントルマン・アッシャーもフリーナの周りに集うと同じようにフリーナの手や服の裾を引いた。
「もう
……
このままじゃ遅刻しちゃうよ」
フリーナが光を纏う。彼女の髪は以前の様に伸び、サロンメンバーたちは衆の水の歌い手へと姿を変える。
「
……
ごめんね」
フリーナは振り返り、謝罪の言葉を口にすると衆の水の歌い手の視線から逃れるかのようにヴェールを被り直して扉を閉めた。
「こっちにヒルチャールたちを誘導すれば
……
」
「いや、そこよりここの方が
……
」
「やあ、親愛なる民よ。随分と議論が白熱しているみたいだね」
フリーナが部屋へと入れば、信者たちの顔がパッと華やいだ。皆、口々にフリーナ様、と言いながらフリーナを上座へと案内する。
「それで? 今の状況は?」
「ええ。このような感じなのですが
……
」
肘掛けに肘を突きながら資料を受け取る。さっと目を通して、頭の中で計画を立てる。
「こことここ
……
それでここに爆発物を置いた方が良いんじゃないかな?」
フリーナの提案に信者たちが感心したように目を輝かせた。
「流石はフリーナ様! 早速、実行役に連絡を入れますね!」
彼らは資料に訂正を入れると各々が席を立ち退出していく。無人となった会議室でフリーナはそっと安堵の息を吐いた。
――
これで、誰かが傷つくことはないだろう、と。
「またか
……
」
マレショーセ・ファントムからの連絡にヌヴィレットは頭を抱えた。近頃、フォンテーヌを騒がせている厄介者
――
蒼翼の衆と名乗るテロリストが現れたからだ。彼らは人を傷つけるような爆発物や薬品を所持しながら、意味のない場所の破壊を繰り返している。いや、修繕費が嵩んでいるという意味ではフォンテーヌへの被害は免れないのだが。ヌヴィレットは痛む頭を押さえながらマレショーセ・ファントムのメリュジーヌに告げた。
「現場へ案内してくれ」
「酷いものだな」
現場に着いたヌヴィレットが見たものは爆発によって抉り取られた地面だった。普通ならば死人が出ていてもおかしくない規模の爆発だが、犯行が行われたのが奇跡的に夜だったこともあり、人的被害はなかった。
「マレショーセ・ファントムは現場の捜査を
……
警察隊は周囲の探索、を
……
」
ヌヴィレットの指示が途中で止まる。集められた面々は不思議に思いながら、ヌヴィレットの視線を追いかけた。
「フリーナ
……
?」
蒼翼の衆のエンブレムが付けられた船にテロリストたちが乗り込む。そんな彼らに守られるように七天神像と同じ衣装を着たフリーナが乗り込んだ。
ヌヴィレットが走り出すよりも早く、船が出る。船はスピードを上げるとぐんぐんと遠ざかって行った。
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