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2024-10-14 09:47:33
7552文字
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兄の献身

妹の妊娠の続き。
カブミスの他ライシルもあります。
いつも以上に細かいこと気にしない人向け

 物心ついた時にはもう兄は兄だったように思う。

 いつだっただろうか。
 迷宮調査隊に入る前のことだったことは確かだ。初夏の風を受けて青々と色づく新緑が窓の外で揺れていたのを覚えている。親戚の子どもらが先ほどまで遊んでいた、小さな動物のオブジェが絨毯の上へ並べられている。
 キリンに豚にクジラ。ワニにリスザルに山羊にクジャクにとかく雑多な動物が部屋の中央を横切り、窓の外に向かって行進するように置かれていた。先頭を歩く獅子の視線を追ってなんとなしにその先に目を向ければ、ふと窓枠に蠢く影を見つける。
 円筒型の柔らかい体をうねらせながら、白い壁を上る草木の色をした背。眉をひそめて使用人を呼ぼうとしたミスルンの横へ「ああ」と言いながら並んだ兄は、もの言いたげなミスルンを制し不自由な脚を引きずりながら窓枠に近づくと、躊躇なくその虫の体の前に指を置いてみせた。
 思わず「兄上」と声を掛けたミスルンの声に「うん」と返事を返しつつ、兄はその青虫に自身の指を上らせていた。腹部の小さな脚が蠢いて、彼の乾燥ぎみの皮膚を緩慢に歩き、人差し指の背へ上る。その動きを興味深そうに眺めた後、黙ったままのミスルンを振り返って「外に戻ってもらおう」と言った。
 確か、ミスルンはそれにぎこちなく口端を持ち上げて「はい」と答えたはずだ。

 兄が庭へ戻した虫は一日二日と立たない内に死んだ。呆気ない最後だ。蟻に集られた姿を見下ろして、ミスルンは背後に響く蝉の鳴く声を聞いていた。
 羽化することなく、その命を他の生き物に食われた幼虫は果たしてどんな羽を持った蝶になったのだろうか。それも死んでしまえば分からなかった。

 あの時は体の弱い自身を、そのか弱い存在に重ねていたのかもしれないと思っていた。瞬きの間に死んでしまうような生き物に心を寄せる姿を、あの頃は愚かだと自身は内心で嘲けていたはずだ。

 ―――体の弱い兄。生まれた時から長くは生きられはしないと言われていた。そして少年の時分には大人には成れないと言われて、成人を迎えた年には何かあれば体が耐えられないだろうと下された診断結果に周囲を気もみさせていた兄。
 そんなもはや占いじみた予想を跳ねのけて、すっかりこの齢までしぶとく生きながらえている。あの青虫を思い出しても、兄ともはや重なることはない。

 ミスルンが迷宮に欲望を食われて廃人同然の生活を送っている間、話の進んでいたという自身の婚約話を彼が全て跳ねのけてしまっていたのには驚いた。両親特に父はさぞ戸惑い怒り狂ったに違いない。それをこの兄がどう始末をつけたのか。結局、親戚から引き取った養子を次の家の後継者に。と据えることに落ち着いたらしいが、聞いても兄は「あの人たちもそう悪い人たちじゃないんだよ」と応えるばかりで具体的な答えは得られなかった。
 その頃には迷宮調査隊の隊長として現場へ復帰していたミスルンが「私のせいですか」と聞くのに、兄はただしっかりとした口調で「違う」と答えたのが記憶に残っている。

 迷宮の主となり、仲間を殺した。迷宮への侵入者も沢山殺した。直接手は下していないにしろ極刑に値する罪科だ。今こうして耳に切り込みを入れられることもなく(といっても耳の半分はないのだが)、駐在員として他国に自由な身で存在を許されているのは特例中の特例であることは確かだった。

 当時のことを想像するのは容易い。婚姻を進めるに当たって妹との縁を切れと言われたことは間違いない。罪人に等しい人間が近しい距離にいることを許すようなお人よしの貴族など兄以外にいるはずがなかった。きっと兄は自分を嫌っていた薄情で愚かな妹を取ったのだ。
 それらしい理由として、自身の体の弱さが子に遺伝する可能性がある。だから子どもは作る気がないと言った兄に、ミスルンが「独身貴族でも貫くつもりか」と聞けば、彼は今更ながらに気づいたとでもいうように顎に手をやって「それもいいかもね」と鷹揚に答えた。
 西の土地に遠戚の持つ土地がある。年中穏やかな気候で過ごしやすいのだというその土地へ行くのもいい。そう語る横顔を見てミスルンは溜息を吐き、部屋を出た。確かメリニの巨大迷宮へ向かう直前のことだったように思う。

 兄の部屋から玄関へと向かう短い廊下の途中、牛飼いのように牧草の生い茂るどこまでも草と土の匂いに溢れた場所に立つ兄の姿を想像していた。頬を泥で汚し、コリーの毛のように長く伸びた草が足元で風に揺れている。彼が目を細めた途端草の色は瞬く間に色を変え、彼の髪や瞳の色に似た稲穂となる。
 それは兄に似合う気もしたし、到底似合わない気もした。



 目を覚ませば、まだ夜は明けていなかった。
 隣の部屋からちいさな鳴き声がする。横の男を起こさぬようそっとベッドを出て、カーディガンを羽織り、隣の部屋のドアを開けた。
 揺り籠の中、ふぎゃあと泣くのを抱き上げて、背中を叩く。乳母も起きて一緒にあやしていればカブルーも目を覚ましたらしい。浅い睡眠の彼にしては珍しく、深く寝入っていたのかもしれない。いつもであればミスルンよりも早く赤子の声に気づくことも多かった。
「寝ていてください。俺が見てますよ」
 起きたての浮腫んだ瞼で言うカブルーに、赤子を揺すりながら眉を寄せる。
「昨日も遅かっただろう」
「俺は大丈夫です。午前はライオスの後ろで真剣な顔をして立つくらいの予定しかないので」
 お腹が空いたのかな、とミスルンの抱く赤ん坊に顔を近づけて眉を上げたカブルーに、「ミルクを温めてきましょう」と乳母が言う。
 明日は西方から来た学者たちにメリニの故迷宮を案内する予定だった。魔物などはこの国の王へ与えられた『祝福』により基本的に遠くの土地へ住処を移している。それでもチェンジリングやテンタクルスなどの足を持たない種は、迷宮内に取り残されひっそりと自生していることが多かった。学者たちも魔術師の端くれであることは間違いないが、その好奇心を制し、彼らの護衛として付く必要があったのだ。
「ミルクはお前がやるのか」
「?ええ、そうですね」
「じゃあ、お前がやるのをみている。そうしたら、寝る」
……なんか恥ずかしいな」
「乳母から聞いた。もう完璧なんだろう」
 眉が下がる。情けない顔だ。自分の世話すらおぼつかない所がある彼である(これはもちろん自分も言えた口ではないが)。最初に赤子を抱いたときなど、こちらへ助けを求め縋るような目をしていた。
「ちょっと笑わないで」というカブルーの声に更に肩が揺れた。

#

「かわいい」
「かわいいねえ」
「ねえこっちを向いて」

 がらがらを鳴らしながらベビーベッドをのぞき込んでいる兄は、ミスルンの冷ややかな視線にも構わず子どもに声をかけ続けている。

 子どもが生まれてからというもの、兄はこうして定期的にこのメリニを訪れるようになってしまった。ここへ別宅でも作ろうかな、という本気とも冗談とも取れない言葉にはミスルンも「やめろ」とはっきり兄を制した。勝手にすればいいなどと口を滑らせたが最後、本当にやりかねない雰囲気だったのである。

 メリニとの航路が正式に開かれ、西方との行き来は以前よりも安定したものとなった。そして最近になって開発された新型船のおかげで、天候によっては一か月ほど掛かることもあった航海日数が各段に短くなっていた。
 後尾にスクリュー・プロペラを付け魔力を動力源に海を進むその船は、ドワーフの職人とエルフの魔術師が設計に携わったと聞く。大陸の移動手段として迷宮調査隊も使用していた帆船は、ゆくゆくは長距離の移動には使用されなくなっていくのだろう。

 しかし、トールマンであるカブルーも来訪の頻度に驚くほどである。溺愛にも程があるだろう、と思うのと同時に来訪のたびに持ち込まれる贈り物にもミスルンは辟易としていた。

「兄さん、服が多すぎる」
「遊んでいたりすると汚れるだろう?いいじゃないか、一日に何度も着替えても」
 ね、と腕の中の子どもにガラガラを振りながら話しかける兄から子どもを取り返すと、「あ」と声が上がる。
「クローゼットに入りきらなくなる」
 きっと聞いてくれはしないと分かりつつも釘を差す。
 クローゼットに仕舞われた服はすっかり兄が購入したものばかりとなった。同じような服もあれば(兄に言わせればまったく違うと言うが)、一体何年後に着ることになるのか分からないサイズの服もある。
「でも」
「でもじゃない」
 子どもをベビーベッドに寝かせると、不思議そうな丸い目がこちらを見上げる。その表情に頬を撫で、机の上に広げられた色とりどりの小さな子ども服を腕に乗せる。不満げな顔をしている兄を背に、メイドに服を渡せば心得たように頷いて一着一着をハンガーラックに掛けると、からからとキャスターを鳴らして部屋を出ていった。
 別室のウォークインクローゼットへ服や靴、バッグなどのプレゼントを仕舞うのだ。
「こんなにあっても選べない」
 欲望を失って以来、知識として衣装の合わせ方はしっていても、他者への贈り物となると途端に頭の中がからっぽになったような感覚に陥っていた。
 欲望は悪魔の胃袋で消化され消えてしまった。だが、時々分からなくなることがある。食われたから消えたのか。それとも元々沸きもしない欲望なのか。
 少し疲れた気がして息を吐くと、背後で兄があ、と声を上げた。
「お前に選んでもらいたいものがあるんだ」
私に?」
「うん」
 そういって兄は鞄をごそごそと漁りだす。まだあったのか、と思いつつ、ミスルンは喉の裏側から戸惑いとも恐れとも呼べる感情が鈍く湧きだつのを感じていた。
「無理だ。選べない」
 そう首を振るミスルンに兄は構わず「選べるよ」と両手を差し出した。

 そのかさついた手のひらには、それぞれ異なる色をしたベルベットのリボンが置かれている。

#

「少し大きくなったかな」
「ああ、一キロほど増えた」
「早いねえ、前に来たのはいつだっけ?」

 宮殿に来るとき、出来れば子どもを連れてきてくれないか、と最初に言ったのはライオスだったはずだ。マルシルが喜ぶから、と頬を掻きこちらから視線を逸らした彼にミスルンはああ、と頷いたあと「祝いの品を送ったほうが?」と首を横に倒した。
 それにライオスが顔を赤くして「いや、早い!まだ、その」と必死に大きな体の前で両手を必死に振るので、ミスルンはそれに「分かった」と答えたが、その「まだ」の意味はよく分かっていない。
 いずれ分かるだろう、と赤ん坊を抱いたミスルンの前にいるマルシルにちらりと視線を移す。
「ふふ、小さい」
 そう言って赤子の手に人差し指を握られたマルシルが笑う。彼女の姿は最初に会ったときと変わらない。少女の姿でそこにいる。
 エルフで言えば姿こそ成人そこそこだったが、まだ子どもとも呼べる年齢だったはずだ。ハーフエルフの成長速度は不規則だ。トールマンのように年数をかけずに成人になるものもいれば、エルフのように時間を掛けて成長をしたり、突然成長が止まりそのまま何百年もそのままの姿の者もいたりする。ハーフエルフに関する文献は少ない。西方では混血種の存在はタブーとされてきた。彼らに関する本の発行を禁じたこともあったようだ。
 赤ん坊は今のところ一般的なエルフと変わらない速度で成長している。ただこれから先成長が遅れたり、逆に同世代の者よりも発育が良くなることもあるのだろう。

「いつもかわいい服着てるなあ
「兄がやまほど持ってくる。一度しか着ていないものも沢山ある」
 そう言えば「へえ」とマルシルがそわそわした様子でこちらを伺うような顔つきになる。
いいな、見てみたいかも」
「屋敷にくればいい」
「ほ、本当?」
「問題ない。ただ、兄もいるかもしれない」

 もはや西方にて過ごす時間のほうが少ないのではないかと思われるほどに、兄がメリニへ訪れる頻度は高い。カブルーは気にしていないと言っているが、世間一般的に考えて家に身内の出入りが多いのはどうなのだろう。
「私はどちらでも構わない」
「俺も大丈夫ですよ。せっかく贈ってもらった服が仕舞われっぱなしなのももったいないですし。全部を着せるのは難しいかもしれないですが、よかったら来てください」
「ありがとう!そしたら今度お邪魔させてください。あ、お兄さんのほうは大丈夫かな、私がいても
「気にする必要はない。目的を言えばあの人も嬉々として服を見せたがるだろう」
「それなら良かった」
 お兄さん、もし会えたら嬉しいな、と呟くように言うマルシルに、ミスルンは頭を傾げた。彼女と兄はあいさつ程度の面識しかなかったはずだった。
「どこかで兄と会ったのか?」
 問いかけにマルシルはハっとした様子で「違う、違う」と首を振る。
「なんだかお兄さんってファリンに似てる気がするから」
 そう言って横に立ったファリンを笑い見るマルシルに、ファリンがそう?と首を傾げる。
「うん、ちょっとね。似てる」
 確かにその鷹揚な仕草は兄に似かよっているところがあるかもしれない。
 「なるほど」と言いながらミスルンも背の高い彼女の顔をマルシルと二人でのぞき込めば、ファリンは両手を張って自分たちを遠ざけながら「そんなにじっと見なくても」と白い頬を染めた。


 部屋を出て、廊下を二人で歩く。
「いつもすみません。長く引き留めてしまって」
「特に気にしていない。『これ』も出来るだけ人に会ったほうがいいだろう」
 腕の中のまろい存在に目を向ける。小さな手がミスルンの頬に伸びて唇を掴むのに好きにさせてやる。
 それに、とミスルンは意識的に口の片端を持ち上げてカブルーを見上げる。
「私もお前が働いている姿が見られるのは嬉しい」
そうですか」
 キュ、と口を引き結んだカブルーがミスルンの腰を引き寄せる。
 一緒に帰りたいな、と言いながら頭に唇が押し当てられる。
「明日は三人で過ごしましょう」
 うん。と返し、男の胸にこめかみを当てる。温かい心臓の音。ミスルンの気に入っている音の一つだ。
 ミスルンが欲しいと思うものを与えてくれる存在。空洞にぴたりと嵌る形の温度。
 この男が大事にしたいと言うものであれば大事にしたかった。場所も、人も。そしてきっと自分自身も。

#

 最近、子供の頃の夢を見る。
 今では信じられないが、自身は兄に懐いていた。あまりよい顔をしない周囲の表情の理由が理解出来ず、よく邪気なくその理由を尋ねていたと思う。
 「ミスルン、外にいこう」
 そして、どちらかといえば子どもの頃、体調を崩しやすかったのは自分のほうだった。その頃の兄の脚はまだ軽やかに地面を蹴っていたはずだ。
 兄の脚が今のように不自由になったのはいつのことだったろう。確か生まれながらのものではなかった。夢の中の自我は曖昧で答えにたどり着くことは出来ない。
 白いシーツで寝そべる自分の額に手の甲をあてて「熱はないね」と言う兄に、うん、と目を細める。窓の外から差し込む太陽の陽光が兄の髪と重なって白く瞬く。
 一族のなか、誰よりも美しい銀色だと褒めそやされたミスルンの髪や瞳とは対象的な、金色の色彩。一族の証を持たないことが一体何を意味するのか、何一つ理解していなかった幼いミスルンは、兄のその色がひどく羨ましかった。
 どこか冷えた屋敷の空気の中、暖かな色彩を持つ兄の存在は、暗闇の中の蝋燭の炎のように自身にとって特別なものだったのだ。


 意識が浮上する。
 目の節を撫でる指に気づいて瞼を開ければ、ベッドの端に座ったカブルーが静かにこちらをみていた。
「何か夢をみましたか」
「うん」
 顔に掛かった髪をよけてこめかみに唇が落とされる。眉間に皺が寄ってました、という微笑む彼に、ミスルンは「そうか」と答える。
 額から頭へ。繰り返し手のひらを滑らせる男の手はいつも優しい温度をしている。低いミスルンの体温に寄り添うような心地よさに静かに息をつく。
兄が言っていたことを思い出した」
「はい」
 突然話し始めた自分の言葉にも、カブルーは戸惑うことなく相槌を打つ。
「ハーフエルフに子どもが出来ないというのは西方の流した噂で、本当は子どもを作る機能は備わっていると」
……………
「ひどく低い確率らしいが」
 視線を上げて部屋の壁を見る。その先で寝ている小さな子どもは穏やかに寝息を立てているのだろう。
「私は夢物語のような話だと思った」
 おとぎ話のように現実の問題がめでたしめでたし、で締めくくられるものばかりであれば。と願う人間の心理はかつて迷宮の主として君臨していたことのある自分にはよく理解出来る話だった。だが都合の良い話はきっと物語の中にしかない。
 しかし。だけれども。
「だけれども、すこしだけ本当になる気がしてしまった。私は愚かだろうか?」
 そう言えばカブルーはこちらを青い目でじっと見た後、いいえ、と言ってミスルンの手を握る。
「俺もそうだったらいいなと思います」 
 それは祈りのように静かな声で、ミスルンの心を撫でた。

#

 子どもが生まれる前、ミスルンには伝えもせず兄が屋敷へカブルーを呼び出した。
 扉の前へ立ったカブルーを見て、兄へ掴みかかる勢いで声を荒げたミスルンを抱きこむようにカブルーが止めた。
 腹をいたわるように肩を抱く腕が暖かくて体が固まった。
 そして「あなたに会いたかった」という言葉が耳へ届いた瞬間、ぴったりと何かが心にはまり込むように感じて、ミスルンはやっとボロリと涙を零したのだ。

 幸せな家族の形というのは分からない。果たして今の「これ」が正しいのかも。ただミスルンはその時、「これ」が欲しかったのだとようやく分かった気がしていた。


 生まれた子はどこか兄に似ている。転んでもあまり泣かない。笑ってばかりいる。
 絵が上手で、呼びかけると眉をあげてこちらを不思議そうに見上げる。

 胸の中で頬に手を伸ばす子の額にミスルンは口づけを落とす。
 ちいさなリボンが彼女の癖のある髪に結ばれている。兄に差し出され、自身が選んだその草木色の生地は彼女の髪によく似合っていた。













 ―――宮廷魔術師が王との間に子どもをもうけたという話が国中を駆け巡ったのは、それからしばらく後のことだ。